暴走と無意識
突然、身体が黒く変貌した香宇。それと同時に頭痛に苛まれ、謎の能力を発動した彩夏。
「っく……!! 柑崎……っ」
頭痛で上手く動けないながらも、香宇の“暴走(?)”を止めようとする彩夏。
しかし、香宇は……
「……どけ…」
と、冷静かつ冷酷に彩夏に軽く触れ、吹き飛ばし、壁に叩きつけた。
「あがっ!」
彩夏は簡単に意識を失い、壁に寄り掛かった状態で座り込む。
麻井に向かって歩き出す香宇。
「くっ…! まさか、そんな“人格”が眠っているなんて……!!」
必死に抵抗しながら、麻井が言う。
そして麻井は、動けない中で無理やり能力を使い、地面を壊し、大きな穴を空け、それを利用して立ち上がる。
…立ち上がった直後、香宇の姿を見失う麻井。
「え…?」
後ろを振り向く。
「後ろにもいない……」
上を見上げる。
「上からでもない…」
左右を見る。
「横でもない…?」
そうして全体を見渡していた時だった。
なんと、香宇が下から現れ、麻井の足を地面にめり込ませる。
「下から!?」
と、下を見下ろしたが、香宇の姿は無い。
……この直後、麻井は大ダメージを受け、いつの間にか倒れ伏していた。
「うっ!!?」
その大ダメージの訳は、真里だけにしか見えなかった。
「香宇って……」
今の状況を全て把握した真里だけが、全てを理解していた。
柑崎 香宇の“正体”が、―――――だということ。
…彩夏は、麻井が倒れ伏したと同時に“立ち上がった”。
「よかった…! 気を取り戻し……」
真里はそこまで言ったが、彩夏に少し違和感を抱いていた。
「……? 彩夏…??」
そう問いかけるも、彩夏から返事は返ってこない。
…と、その直後、香宇めがけて歩み寄っていく彩夏。
だが、ただ歩み寄っていっただけにも関わらず、香宇が大ダメージを負っていた。
「うぐ……!?」
見る見るうちに香宇が元の姿に戻り、そして倒れる。
「…………………」
香宇は意識を失っていた。
そして、それと同時に彩夏も意識を失う。
――――――………
彩夏は、目を覚ます。
「ここ……どこだ…?」
白い天井、白いカーテン……更には、白い布団を掛けられていた。
「気が付いたみたいね、清海彩夏さん」
そこには、見知らぬ女性が居座っていた。
クリーム色セミロングで、少し横にハネてるような髪型で、いつも目を瞑っているように見える。
そして体は細く、か弱そうな体つきだが…威圧感があった。
「私は結原 千紗。よろしくね」
大人しげに彩夏に語りかけ、名前を紹介した。
彼女は「結原 千紗」。
出身は不明だが、育ちは隔世境界。 超能力者である。
能力は“万能治癒”と“幻影瞬動”を持ち合わせている。
「あ、そうそう。柑崎香宇さんも一緒に連れてきたんだけど…」
今彩夏がいる場所は、結原の自宅だった。
「でも、いつの間にか居なくなってた…」
そう。
偶然あの戦場に立ち合わせた結原は、倒れ伏していた香宇と彩夏を、幻影瞬動で運び、万能治癒で治癒していたのである。
しかし、香宇だけは、結原と彩夏が寝ている間に消えていたのだ。
「……ありがとう、結原さん」
そう感謝し、彩夏は問う。
「……あれ? 真里と、高波木さんは?」
その時一緒に居た仲間なので、彩夏は心配した。
彩夏のその質問に対する解答は、意外な答えだった。
「…え? あなたたち2人以外、誰も見かけなかったわよ? あの場所では」
美穂は大ダメージで倒れ伏していたし、瓦礫に埋もれていたから見つからないのも当然である。
しかし、真里は…………
「うそぉ!? 4人で一緒に歩いてて、麻井に出くわして…」
彩夏は記憶を辿り、それが間違いでないことを確認した。
と、その時。
結原は、思いがけない言葉を口にする!
「本当に居たとしたら、清海さんのせいね」
「私の……って、えぇっ!!?」
いったいなぜ結原は『彩夏のせい』だと言ったのか……―――――――
その場に2人しかいなかったのが『彩夏のせい』であると言い放った結原。 その訳とは……―――――




