表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
散華  作者: 河野 美月
1/14

降り注ぐ、花びら。


 どうしても書きたくなってはじめてしまいました・・・

 このお話は中篇ぐらいの予定です。

 お楽しみいただければ幸いです。

 「残酷描写」「R15」ですので、不快な方はゴエンリョください(ぺこり)

 思い出すのは決まってこの情景だ。


 はらはらと、音をたてて散りゆく、花びら。


 私は、どうして、

 あの時、振り返ってしまったのだろう・・・







 ここは高い山に囲まれた狭隘な地にある、鄙びた村だ。

 厳しい生活環境にあったが、動物を飼い、その乳や毛から作られるものを売って、生計を立てることが出来た。


 この村に、どこから来たのか分からないが、老婆が住み始めて3年程が経つ。

 人の少ない村なので、彼女のことはすぐに話題となり、村人達がこぞって彼女の元に行くと、彼女は身寄りがなく、静かな場所で暮らしたかったため、王都での生業をたたみ、この土地までやってきた、と言った。


 彼女は薬師(くすし)であった。


 村人は彼女を歓迎し、空き家を改修して住めるようにした。

 彼女には蓄えがあるようで、改修費用をきちんと支払い、村の若い夫婦に食料の調達をお願いした。

 それから、さまざまな材料を用いて薬の調合をはじめ、月に一度、村人に、近くの街で開かれる市で、薬を売りに行ってもらっていた。


 彼女の薬は効能があると評判で、街でなじみになった店の一角に、薬を置いて売ってもらうようになっていた。


 だが、彼女は決して、村から出ることはなかった。

 家から出ることも稀で、彼女の姿を見るのは、彼女の家に食料や必要な雑貨を持っていく若夫婦の妻か、薬を売りに行ってくれる村人くらいで、彼女はいつも、深くフードをかぶり、顔を晒すこともなかった。

 ただ、彼女は決して外に出ないわけではない。薬草を摘みに行くため近くの山に登ったり、薪を集めるため近くの森の中に入ったりしていたが・・・それはいつも、誰の目にも触れない、夜更けのことであった。


 彼女には、人前に出られない理由がある。





 さらさらと、流れる水の音がする。

 家から出て、初めて入る森の中、ふと視線を上げると、何かがキラキラと光っていた。

 先程まで足元を見ながらゆっくりと歩いていたため、気づかなかった。


 彼女はこの村に住んで3年程が経つが、ここは本当に山深く、彼女が未だ足を踏み入れていない山や森がまだたくさんある。

 今入っている森もそのひとつで、村からはかなりの距離がある。彼女は食料がなくとも、山や森の恵で食べていけるので、ほんの4,5日は何も持っていなくても平気だ。そこが恵みある森や山であれば。


 彼女が今住んでいる村に定住しようと決めたのは、村が恵まれた自然に囲まれていたからだ。それに王都に住んでいては手に入りにくい薬草が、ここでは自然に手に入る。薬師として、本当に探求に値する場所なのだ。


 目の前にある光に誘われるように、彼女は早足で駆けていく。とても老婆とは思えない動きだ。


 ふぁさり、と頭にかぶっていたフードが取れる。


 フードの下にある顔は・・・若い、女の顔だった。

 黒い髪は長く、少し癖があってうねっていて、腰のところまで伸びている。

 象牙色の肌は、闇の中でほのかに白く浮かび上がり、くっきりとした眉と、つぶらな大きな瞳の色は、今は闇の色と同じように見えるが、陽の元で見たら明るい茶色の瞳が見れただろう。

 あまり高くない鼻に、薄めの唇。

 ・・・彼女は日本人だった。



 彼女は、気がつけばこの世界にいて、薬師の師匠と共に各地を放浪していた。

 それが、5年。

 彼女は25歳になっていた。


 何故、この世界に来てしまったのか。


 ・・・桜の花びらが散る、あの道で。

 誰かに呼ばれたような気がして、振り返ったら。


 師匠の前に、立っていた。


 続きます・・・

 割とすぐにUPできそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ