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公爵令嬢は悪役になってでも自由になりたい。  作者: 黒い猫
第1章 公爵令嬢、嵌める!?
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第3話


 この日を境にリリーに対する境遇はガラッと変わった。


 家での立ち位置もそうだが、両親の関心や使用人たちの態度の何から何まですべてが大きく変わってしまったのだ。


「……」


 家には弟に関する物で溢れかえり、リリーの関する事は後回しにされ、優先順位は完全に弟が一番になっていた。


 でも、そうなってしまったのは何も全て両親が悪いという訳ではない。


 それはこの国の貴族社会では「男に生まれた時点で勝ち組」とすら言われる程の顕著な「男尊女卑」の風習がだったからである。


 しかし、そこには「家を継げる者は男のみ」という貴族社会ならではの慣例が存在していたからこその風習で、男児が生まれなかった家は何としても跡継ぎが欲しい為に養子を迎え入れる程だ。


 それはリリーの両親も同じで、そもそも子供が出来にくかった事も含めてもし、リリーが学校に通うくらいの年になっても男児が生まれなければ、男児を養子に迎えようとしていたくらいだった。


 つまり、この状況はリリーの両親はその風習に倣っただけの事。ひいては、この国置いては何もおかしい話ではなかった。


 ただ、当のリリー本人はあまりにも自分の取り巻く環境が多く変わった事にたただ困惑するしかなかった。


 もちろん、突然変わった訳ではない。徐々に徐々に真綿で首を絞められるかの様に自分の取り巻く世界が変わっていったのだ。


 そして、ついに「ああ、変わったんだな」と分かる出来事が発生した。それは、ある日の夕食時の事である。


「あの、お父様」

「なんだ?」


「今度お茶会があるのですが、新しいお洋服が欲しいと思いまして……」


 このお願い自体は何もおかしくない。貴族のお茶会において毎回新しい洋服で行くのは一種のステイタスだ。むしろ、ここで古い物を着ていると「新しい服を着る余裕もない家」と見なされてしまう。


 位の低い貴族であれば特に気にしない点だが、リリーの家は公爵家だ。この辺りは本来「貴族としは常識」だったはずなのだが……。


「はぁ……リリー。まだ着ていない服はたくさんあるだろう? それを着て行きなさい」

「……え?」


 父親のこの反応はリリーも予想していなかったもので、思わず反応してしまった。なぜなら、この時にはもう既に持っていた服は全て一度は袖に通してしまっており、着ていない服など一着もなかったからである。


 この辺りは当時既にリリーの身の回りのお世話はアンナが担当しており、アンナから少なくとも母親には伝わっていたはずだ。


「そうよ。あまりワガママを言ってはいけないわ」

「……」


 しかし、当の母親もこの反応で、この事により幼いリリーでも理解してしまった「もうこの家での優先順位の一番はもう、自分ではない……」と。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「……見て、リリー様のドレス」

「え? あれって少し前に流行った型よね?」


「まさか公爵家ともあろうお方が? どうしたのかしら?」

「もしかして節約のつもりかしら?」


「ええ? まさか!」

「違うわよ。グランツ家はこの間男児がお生まれになったでしょう?」


「ああ、それで」

「でも、まさか公爵家ともあろうお方が……」


 結局。その会話はリリーの謝罪によりなかった事になったが、招待されたお茶会に行く度にリリーは肩身の狭い思いをしていた。


 ただ、結局は「弟が生まれたから」と知ると、表立って言われはしなかったが、最終的に同情の目で見られ、むしろそれが惨めだった。


 しかし、両親はその事に気づいていたかは知らないが、その間も弟を寵愛し、あっという間に月日は流れ――。


 リリーはある日突然父親に連れられて行った王宮にてエミル殿下と婚約する事を知らされるのだった。


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