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母親
私は自らの母であり、祖母であった。
子供が産まれて、気づくと風のように時間は過ぎ去っていく。誰の記憶にも記録にも残らないそんな日々が過ぎていく。
子供が初めて寝返りをした日、初めて手を振った日、私の中にしか残らない記憶がひとつひとつ増えていく。
祖母は言った。
「気づくと年寄りになっていた。何をしていたか、思い出せない。」
父親が外で稼ぐことが当たり前だった時代、祖母は孤独であっただろう。否、それに気づく暇もないほどに日々は目まぐるしく過ぎていく。
母は言った。
「これからは私の時間を過ごしたい。」
私と過ごした時間は母にとってどんな時間だったのか考える。
祖母も母も私も社会に出たことのない人間だ。仮に社会に出て一体何が出来るというのだろうか。大きな人間社会から断絶され、小さな社会しか見たことがない我々は果たして寂しく悲しい人間なのだろうか。