悪魔ダンジョン攻略4
いよいよ第3層、強い敵が出てきそうです。
いよいよ悪魔ダンジョンの深層の攻略だ。十分な休息を取ったのでみんなの士気も高い。俺たちは第3階層に降りる階段のある部屋に入った。ここに来るまで悪魔の姿は見られなかったが、第1階層には少し魔物が復活していた。第3階層に降りると廊下を巡回する兵卒がすべてグレーターデーモンになっていた。かつての俺たちなら緊張するところだが、今は薬剤でバフも入っているので、紙くずのように倒して進む。
「あの先にセーフルームとして使える部屋があります。」翡翠さんが指差した。
「良し、いったんあそこに陣を敷いて階層のマッピングを完成させよう。」
「頼んだわよ、月煌。」翡翠は式神を放ってマッピングを開始した。
この部屋は兵士の休憩所に使われていたらしく、さまざまな物品が置かれていた。たいていはがらくただったが、町の復興に役立つかも知れないのですべて回収した。
式神が戻ってきてミミちゃん経由でこの階層のマップが表示された。
この部屋を出て次の部屋に強敵がいて、それを倒すと宝箱がある。強敵に挑めば被害も出るかもしれないが、こちらには治癒要員が俺を含めて5人以上いる。復活要員も3人いる。強気で当たろう。
「ふふふ、良く来たね。」
「デーモンロードです。気をつけてください。」セレスが警告した。
「ヴァイタルアブソーブ!」「あぶそ~ぶ!」エラとメロが精気を吸った途端に顔を上気させてあえぎ始めた。
「みんなぼくの虜になったのかな?」デーモンロードは舌なめずりをした。
「あいつの女性に対する魅了スキルはとても高いのです。私たち天使は大丈夫ですが。」
「私たちも平気みたい。」
JK隊は不思議そうに顔を見合わせた。なるほど、どうやらJK隊は天水美夜に作られたとき、自分の恋敵にならないよう異性との接続回路を無効化されているようだ。友人に彼氏を寝取られた彼女のトラウマが無意識に作用したのだろう。
「ふ、穢れし凡夫ごときが!」誇り高いアマゾネスの女王に悪魔の魅了は通じないようだ。
「くノ一を甘く見ないことね。」
ミナとルナは、「惚れさせても惚れるな」というくノ一の鉄の掟の訓練を積んできたので魅了には耐性がある。しかしエミリーは弱い。鉄火肌の姉御を気取っているが中身は田舎のおぼこ娘だ。簡単にコロリと魅了されてしまう。
「I belong to you, my Lord!」抱いてくださいとばかりに身もだえしている。
「お兄ちゃん。なんか変な雰囲気のメンバーがいるよ。」
「どうやら魅了されているようだ。」ファザリナが警戒している。
獣人は悪魔の魅了に耐性があるようだ。いや、そもそもモフ子が男に魅了なんかされるわけがない。されるわけがないに決まっている。そう信じたい。
「危険ですね。魅了されているメンバーを無効化しましょうか?」
巫女である翡翠さんも魅了はされない。翡翠さんを性的な目で見るな。
「できるのか?」
「はい。術式を構築する前に結界を作って周囲から隔絶する必要があります。」
「やってくれ。」
翡翠は印を切るとエラとメロ、そしてエミリーを結界内に閉じ込めた。
「五十四の星辰、疾く集まりて結びつき、虚ろなる魂、霧に沈み、眠り誘え。
縛せし鎖、解き放たれ、安らぎの内に、意識よ翳れ!急々如律令!」
キセノンガスが魅了されたメンバーの意識を奪い昏睡させた。これで味方からの攻撃は封じた。だがデーモンロードの手の内が読めない。
「死ねっ!」
斬りかかったペンテシレイアの前に何かが飛び出した。女の悪魔が身を挺してデーモンロードを守って死んだのだ。デーモンロードの背後から10体ほどの女の悪魔が湧いて出た。無限に湧いて出てくるはずもないだろう。圧倒的な火力で殲滅しよう。そう思ったら、女悪魔たちは属性魔法の呪文を詠唱し始めた。俺が指示を出す前にシューターたちが半分を倒し、ペンテシレイアとJK隊が3体を切り伏せた。だが残りの2体の属性魔法が前衛に炸裂し、JK2名が倒れた。倒れたJKの身体をデーモンロードが蹂躙しようとしたのを見て、満身創痍のペンテシレイアが剣を振るってそれを阻止した。
「汚い手で触れるな!」
デーモンロードは右手を切り落とされた。天使たちが倒れたJKをリヴァイヴで復活させ、俺とモフ子とファザリアは前衛のHPをヒールで満タンにした。デーモンロードは切り落とされた腕を拾って後ろに下がり、新たに召喚した女悪魔たちの肉の壁の背後に隠れた。何ということだ、無限に召喚できるのか?
「ミナ、ルナ、エルフィーナ、フェリシア!矢や弾丸ではなく属性魔法で複数を巻き込んで倒してくれ!こちらで援護するので前衛は少しでも親玉のHPを削れ!」
魅了されたメンバーが3人いるのでこちらの火力は落ちたが、女悪魔のHPは低く、次々と倒されて魔法を詠唱する暇がない。肉の壁が薄くなったところから容赦なく物理攻撃がデーモンロードのHPを削る。
「くっ、これまでですか...」デーモンロードは崩れ落ちると見せかけて転移魔法で離脱した。
「みなさん、下がってください。」
翡翠はみんなを安全な場所まで下がらせてから、魅了されたメンバーの結界を解いて目覚めさせた。
「かっこ悪いところを見られちまったなあ。」エミリーが気まずそうに頭を掻いた。
「本来なら魅了する側の私たちが魅了されてしまうなんて...」エラは顔を赤くして俯いている。
「今のは仕方なかったのです。エラさんたちは種族として悪魔と非常に近いので、同族反応で魅了されやすいのです。」悪魔学者セレスが解説した。
「さっきの敵、魅了だけでなく、無限に女悪魔を召喚できる厄介な敵です。倒しきれなかったのでまた戦うことになるでしょう。何か策を練っておかないと危険です。」
翡翠が言うとおり、このまま進んでまたデーモンロードと会敵して、もし他の悪魔の支援があったりすると、かなり分の悪い戦いになる。せめて魅了対策だけでもできないだろうか?
「翡翠さん、魅了対策って何かできるかな?」
「魅了ですか。魅了の根底にあるのは生物の繁殖行動で、それほど特殊なものではありません。クジャクや蛾の例を出してもあまり意味がないので、人間の例を挙げると、視覚情報を出発点としてさまざまな刺激信号が性行動を誘発します。これを俗にフェロモン効果と言ったりします。ただ人間の場合、動物の場合のように実際に化学物質としてのフェロモンが分泌されているかどうかは解明されていません。化学物質としてのフェロモンが解析されたら大変なことになるでしょう。古代の叙事詩に何度も描かれたアフロディジアクム、つまり媚薬が作れるようになります。サキュバスやデーモンロードの魅了は、魔力で疑似フェロモンを形成しているものと考えられます。これに対する対策としては、アンチアフロディジアクムによるフェロモンの遮断です。異性の魅力を感じ取る能力を一時的に封印します。少し性格が変わってしまいますが、戦いを終えて術を解けば元に戻ります。天使とJKは生物ではない...というか、私たちの生物概念で捉えられない存在なので魅了にはかかりません。ペンテシレイアさんとミナルナさんは強い意志で魅了に抵抗しているのですが、かからないという保証はないので対策をしておきましょう。エルフの2人は、哺乳動物とは異なった繁殖方法で生まれてくるので大丈夫です。獣人のお二人は、一応念のため対策対象に含めます。私は、そもそもこの術式が常時かかっている状態なので問題はありません。」
「それは良い。ぜひやってくれ。」
「術式は男性用と女性用で異なっております。まず女性用を展開します。対象者は集まってください。感情鎮静の霊香を作ります。千載の夢幻、疾く集まりて結びつき、誘惑の調べ、乱れず切り裂かん。甘き惑いを霧散させ、清き心、揺るがず護らん!急々如律令!」
何も起きなかったが、全体的にみんな顔から感情が消えたような気がする。
「次はプリモさん、あなたです。百八の星辰、疾く集まりて結びつき、揺らぐ魂、鎮まりて我に返らん。煩悩の炎を凍てつかせ、清き理性、堅固に護らん!急々如律令!」
これが煩悩から解脱した気分なのか。周囲のたわわがただの脂肪の塊に見える。
魅了されたエラとメロをAIに書かせるのに苦労しました。性的快感を表す顔と認定されるとNGになります。あの1枚は苦闘の末の産物です。




