イナンナのお買い物ツアー
翡翠さんも復活したようです。新品の巫女服を着て。
店に戻ると翡翠さんがいた。
「翡翠さん、もう大丈夫なの?」
「はい、ご心配おかけしました。」
「きれいになっているけど、あのボロボロになった巫女服は?」
「捨てました。これは新品です。」
「翡翠さん、そんなにいっぱい巫女服を持ってるの?」
「いいえ、これは分身の巫女服です。」
「え?」俺は混乱した。
「分身を呼び出し、裸にして収束させれば、新しい巫女服は無限に手に入ります。」
この人は...こんな顔をして裏ではものすごくえげつないことをしている。俺は頭の中でつい、分身が裸にされて収束されるシーンを繰り返し再生してしまった。
「翡翠さーん!」天使たちが駆け寄った、ではなく飛び寄った。
「新装備ですか。ご立派になられて。」
「みんなのおかげでゴールドゾンビを全滅させられて、2人で10万ゴールドも稼げたんですよ。」
「ご同慶の至りです。たしか何かの目的のために資金を蓄えていらっしゃるのですね。」
「私たち、新しい教会を建てるの。」ステラが言った。
「私たちの本当の神様をお招きするために。」
「ならば私が計画している大学の中に建てませんか?大学と教会は表裏一体です。」
「え、そうなの?」
「はい、もともと大学というものは教会の付属施設として生まれました。人間にとって必要な3つの問題、健康と財産と魂を司るためです。健康は医学部、財産は法学部、そして魂は神学部です。この3つの上位学部の下に7つの自由学科が作られました。文法、修辞、論理、数学、音楽、幾何、天文、この下位7学科は総じて哲学と呼ぶこともできるでしょう。私が専攻している哲学的自然学もここに属します。」
「じゃあ、そうする。私たちが集めた資金15万ゴールドを翡翠さんの大学設立資金に寄付します。」
「ありがとう。立派な教会を建てますね。今後は協力して資金集めに邁進しましょう。クエストとステージで。」
「目標額は?」
「1億ゴールドです。現在、3000万ゴールドまで貯まりました。」
ここに翡翠と天使の大学設立コミッティーが設立された。無限の治癒力と7体までの分身召喚能力が結合して、無敵とも言えるパーティーの誕生である。
「先日の醜態を反省した結果、私もこの世界の魔法体系を利用させていただこうと思いました。前に測定したとき、私にはすべての魔法の適性があることが判明しましたが、私は元々陰陽術を使う身なので無駄な出費を控えようと習得は選びませんでした。しかし、先日の危機的状況において、治癒もできない我が身のふがいなさを思い知らされました。なので、これからマンソンジュへ赴き、すべての魔法を習得して参ります。100万ゴールドぐらい必要となりますが、今後の作戦のための必要経費です。」
そのころイナンナは道具屋パキスタンに来ていた。
「いらっしゃいませ。きょうはどのようなご用命で?」
「うむ、私専用のアイテムボックスが欲しい。」
「サイズは?」
「プリモが持っているのと同じやつだ。」
「ならば1万ゴールドです。」
「良いだろう。これで。」イナンナはさっき手に入れたばかりの金貨で支払った。
「何にお使いになるのですか?」
「私の期限もあと2日なのでな、この世界のものを持ち帰るためじゃ。特に衣服をな。」
「こんにちは、ブット王都店へようこそ。」
「うむ、そろそろ元の世界へ戻ることになりそうじゃ。この世界の服を持ち帰りたい。」
「それは素晴らしいお考えですね。どうぞ試着してください。サイズが合わない場合はお直しもできます。」
「ふむ、これだけあれば冥界で剥ぎ取られても大丈夫だな。」
「は?」
「いや、こちらの話じゃ。」
「防具屋パシオンへようこそ。」
「ふむ、そろそろ帰還する日が近いので、こちらの防具も持ち帰ろうかと思ってな。」
「どうぞどうぞ、ご試着ください。たまにはイメチェンも楽しいですよ。」
「うむ、これを頂こう。たわわが爆盛りになるな。良い買物をした。」
「なあ、イナンナ、あと2日だな。思い残したことはないか?」
「この世界で手に入れたものはすべてこのアイテムボックスに入れたからな、元の世界に戻っても今度は負けない。無傷で勝つ。」
「まるで前は負けたみたいな言い方だが。」
「元の世界のどの時点に戻るかわからないが、私のメインイベントは冥界下りだ。姉に会うため冥界に赴くとき、私は関所を通るたびに装備と衣服を剥ぎ取られ、最後は全裸で殺された。そんな恥辱を受けるのは二度とゴメンだ。なので、有り金をはたいて服と防具を買ってきた。あのイベントをまた繰り返すことになったとしても、これだけあればいくら剥ぎ取られても大丈夫だ。」
「そうか。元の世界もなかなか大変なんだな。がんばれよ。」
「はっはっは、あの時間線でも、死んでから復活して私は勝者になったのだ。次はもっと楽をして勝たせてもらう。この世界に召喚されたおかげだ。プリモ、おまえには感謝している。」
翡翠さんと天使たちがやって来た。
「プリモさん、ご相談があります。」
「何だ?」
「王都のダンジョンにはもうめぼしいクエストがありません。ジェムドラゴンも現れなくなってしまいました。あの魔王城があった冒険者の町、あそこにはまだ強敵が残っていると思います。遠征をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「君たちだけでか?」
「はい、お店もありますので、大勢を引き連れて行くわけには参りません。」
「私もお供するぞ。消える期限が近いのでな。」イナンナが参加した。
「ちょっと待ってくれ。俺の一存では決められない。エラと相談してくる。」
イナンナはたくさん服や防具を持ち帰らないと、またストリップで冥府行きという恥辱を繰り返すことになるのですか。ブティックでイナンナのお着替え大会、おもしろかったですね。衣装が替わると顔が変わる。もっといろいろ試したくなりました。




