ドラゴニック・ヘブン攻略3
布陣を整えて捲土重来!
さて、ブレス対策と回復アイテムの補給は終わった。攻撃力のかさ上げが喫緊の課題になる。特に物理攻撃力。武器屋に相談してみるか。
「いらっしゃいませ。武器屋モデスト王都店へようこそ。」
「うちのパーティの物理攻撃要員の4人なんだが、どうも火力が足りない。こちらで買い求めた片手剣、双剣、片手斧、槍なんだが。」
「はい、覚えておりますよ。あのJK隊ですね。」
「あれが最高の武器だということで買い求めたのだが。」
「武器は最高でも、筋力がそれに伴わなければ大きな攻撃力は発揮できません。」
「筋力を上げるには?」
「筋トレしかありませんな。」
「JKが筋トレなんかするだろうか。」
「やりそうもありませんね。」
「ではどうしよう?」
「屈強の男たちではなくてJKに前衛を任せたのですからどうにもなりません。」
「うちはコンカフェだから仕方がなかった。しかもあいつらは人間じゃない。」
「人間じゃなかったのですか?ゴーレムとか?」
「いや、魔王が作ったJKという名前の魔物。」
「何て返事して良いかわからなくなりました。ただ、筋力を一時的に上げたいだけならドーピングに頼るしかないでしょう。」
「ドーピング?」
「はい、薬剤で筋力のパフォーマンスを上げるのです。」
「そんな便利なもの、どこで売っている?」
「薬剤ですからもちろん薬屋です。ご存じなかったので?」
「薬屋の存在を知らなかった。教えてくれ、どこにある?」
武器屋の主人が描いた簡単な地図を手がかりに俺は薬屋へ出かけた。
「いらっしゃいませ。薬屋ベッセルング王都店へようこそ。」白衣の女店長が出迎えた。
「ここはどんなものを置いているんだ?」
「ポーション、ハイポーション、キュアポーション、筋肉増強薬、魔力増強薬、防御力増加薬、魔法防衛力増加薬、風邪薬、胃腸薬、目薬、日焼け止め...まだまだもっとありますが、ご自分で店内をご覧になればよろしいかと。」
こんな店があるならもっと前から知っておけば良かった。ただ、ここで爆買いすると、さっきの途中離脱のクエストで稼いだ金が消えてしまいそうだ。必要最小限にとどめよう。
買い物を済ませて店に戻ると、今回の金欠の張本人たちがいた。エミリーとミナルナである。
「おいエミリー、ちょっと。」
「なんだい、誠意と甲斐性のプリモ。」
ダメだ。イメチェンしたエミリーの圧がすごい。とても文句が言える雰囲気ではない。
「俺の誠意は足りているか?」
「もちろんだ、誠意大将軍と呼んでやろう。」
「そうか。ところで American way of life のことなんだが...」
「うむ、あれは良いものだ。世界の標準だからな。そしておまえの誠意が遺憾なく発揮される環境になる。おまえは良きアメリカ人になれる。おめでとう、プリモ。」
エミリーは握手のために手を差し出した。俺は手を取った。ぐぬぬ。
「あ、お兄ちゃん!」
モフ子とファザリアがやってきた。
「ねえ、見て見て、お兄ちゃんのツケで買ったんだよ。かわいいでしょ。」
「ああ、すごくかわいいよ。いくらでも買って良いからな。」
「魔法屋で測定してもらって、火、水、光、治癒の適性があったんだ。全部お兄ちゃんのツケで習得してきたよ。」
「私も土と治癒の適性があったので習得した。恩に着る。」ファザリアは頭を下げた。
「良かったな、おまえたち。これからの人生に活かすんだぞ。」俺はモフ子の頭を撫でファザリアの手を取った。
「こんな誠意と甲斐性のあるお兄ちゃんがいてモフ子は鼻高々だよ!」
ダメだ。すべてエミリーの思い通りに世界が回っている。偽物のアメリカ式だ。これが本物のアメリカなら、アメリカ女は誰も苦労なんかしない。
俺はその日の営業の後で、コンカフェのバックヤードに張り紙で布告した。
「各自、アイスアンダーウェアを配給するのでその棚からお取りください。これを着用したら全員でドラゴニック・ヘブンを攻略します。万全の態勢で挑むので、できるだけ全員の参加をお待ちしています。作戦開始は朝の07:00です。店の前にお集まりください。」
「集まったね、みんな。これからドラゴニック・ヘブンという危険なエリアを攻略します。敵のブレス対策として、昨夜アイスアンダーウェアを配給しました。装備していただいたでしょうか。これからぶつかる敵はすべてドラゴンです。それらを倒した後で、われわれはドラゴン・クイーンを討伐することになります。俺たち1人1人の力は弱いけれど、これだけの数が揃えばドラゴン・クイーンも討伐することができるでしょう。報酬は莫大です。みんな心してかかるように。」
少しだけ拍手があった。今回の参加者は、前回に加えてエミリー、ミナルナ、エルフ、そしてモフ子とファザリアだ。天使と翡翠さんは自分たちの金策に邁進するようだ。
前回より人手が増えて、ドーピングも可能になった。もう勝てる、勝てるはずだ。




