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巫女とサキュバスと異世界と、そして人文知は役立たず  作者: 青い水


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モフ子の覚醒、そして借金取りの嵐へ

まさかモフ子まで冒険者登録するなんて。

「このあたりからシルバー素材センターかしら?」モフ子はMP回復薬をラッパ飲みしながら言った。


「そろそろ出るんじゃないか?準備は良いか?」ファザリナは魔法で土塁と土壁を作った。


挿絵(By みてみん)


「ほうら、溶けなさい!」モフ子の覚え立ての火魔法が飛ぶ。


 シルバーゴブリンの群れは次々と溶け始めた。だが数が多い。溶けきらない固体が土壁を越えて迫る。


「このっ!」


 ファザリナのパンチが土塁へ迫る固体を弾き飛ばす。モフ子はMP回復薬を飲みながら火魔法を唱え続けた。土塁の前は溶けた銀でドロドロになっている。


「くっ、このままだと押し切られる。私が乗り込んで倒しまくるから治癒魔法で援護してくれ。」


 言うが早いか、ファザリナは土塁から飛び出し敵のど真ん中に着地した。パンチと蹴りで周囲に次々に死体を築いて行く。道が狭いのでファザリナを避けてモフ子に近づく敵はいない。モフ子は光魔法で戦場の視認性を高め、治癒魔法でファザリナの体力を満タンに保持した。敵の後攻めが一段落し、集団の背後が見え始めると、モフ子は土塁を出てファザリナの隣へ行き火魔法で残りの敵を溶かした。


「ふう、こんなものかしら。」


「おまえ初めてなのに、そしてそんなに小さいのに、よくやるな。」


「お兄ちゃんに良いとこを見せたいの。男子3日会わざれば刮目して見よというけれど、女子だって同じよ。」


「このあたりは片付いたのでクエスト終了だな。戻って報告しよう。」



 プリモの元に次々とツケの支払いの請求書が届いていた。魔法屋、ブティック、武器屋、道具屋、鍛冶屋...すべて足すとその額270000ゴールド。手持ちの資金では足りない。店の運転資金に手を付けてようやく支払える額だ。


「何なんだ、これは?」プリモは頭を抱えた。


「ご融資しましょうか?」翡翠が近づいて来て手を差し伸べた。


「いや、ご厚意はありがたいが、大学設立のための資金に手を付けるわけにはまいりません。」


 いや、ここで融資なんか受けたら学長の話を断れなくなる。ここは自力で何とかしないと。せっかく異世界で地歩を固めるべく開店したコンカフェを失うことになったら、野垂れ死にまっしぐらではないか。異世界で金を得るにはクエスト、そう、それに限る。連れて行くメンバーは、金を要求しないやつら。エルフは除外。イナンナは大歓迎。天使は除外。あいつらは教会を作るから金に汚くなってる。エミリーは、この災厄の張本人だから除外だ。何がアメリカン・ウェイ・オブ・ライフだ、嘘情報を拡散させやがって。ということでミナルナも同罪で除外。ここはやはり子飼いのJK隊だ。頼りにしてるぞ。そしてコンカフェの危機ということでエラとメロにも同行してもらおう。


「皆の衆!ここに至ってコンカフェの存亡の危機である。高額クエストをこなして財政状況を一挙に健全化し、われらが住処にして結束の場でもあるこのコスプレ・コンカフェを守ろうではないか!」


 拍手はまばらだった。だが、反対の声も聞こえなかった。どうやら退屈しのぎでクエストにはついてきてくれるようだ。攻略メンバーは、エラ、メロ、イナンナ、JK隊。なかなかのメンツだ。魔法属性は、闇、光、火、水、土、治癒、風以外はすべて網羅している。



「ちょっと!」俺は呼び止められた。


「ちょっと、私のことを忘れてるんじゃ?」


 メートヒェンが頬を膨らませながら俺を睨んでいる。


「忘れていたよね?ねえ、物語にいたはずなのにいつの間にかいなくなった人みたいな扱いになっていたよね?」


「あ、えっと、ごめんなさい。メートヒェンさんでしたっけ...」


挿絵(By みてみん)


「はい、そうです。モブなのに名前があってごめんなさいです。いちおうオーディションでJK隊と一緒に採用されたんですけど、影が薄くて使ってもらえなかったかわいそうな魔法使いは私です。てか、ふざけんなよ!何だこの扱いは?なめてんのか?」


「いえ、とんでもない。メートヒェンさん、覚えていますとも。100年前のヴァンパイア事件で大活躍したシュロマンス出身の魔道士の末裔。ええ、良く覚えていますとも。」


「ふ、あのときもご先祖様はかなりモブ寄りの描かれ方だったからな。参照URLを呼び出そうか?」


「いえ、それはご勘弁を。」


 メートヒェンはワンドを振った。


https://ncode.syosetu.com/n4361kk/


「これを見ても言い逃れができるとでも?ご先祖様はシュロマンスから脱走して仲間になった尊い存在だったのだぞ。それをサブキャラ以下に雑に扱いやがって!」


 俺は雷に打たれたようにその場に立ちすくんだ。雑に扱った?この俺が、雑に扱った?何ということだ、これでは女神様に何と申し開きができるのか?


「連れて行くんだろうな、クエスト?」メートヒェンはイヤだとは言わせんぞという圧で俺を睨んだ。


「はい、それはもうもちろん。」


「活躍の場を提供してくれるんだろうな?」


「当然です。ヒロインに、スターになれますよ。」


「良し、ならばまずはビジュアルからだ。おまえのツケで私のビジュアルを大改造する。」


 メートヒェンは俺を連れて各ショップを回り、さらに負債を1万ゴールド増やした。


挿絵(By みてみん)


「これでもうモブとは呼ばせない。じゃあ行こうか、クエスト。私は火、水、風、土の魔法を操る四大の精霊の加護を得た魔道士メートヒェン。必ずや敵を殲滅してやろう。」




そう、メートヒェンさん、あなたのご先祖もかなり雑に扱いました。あのことろはまだ誠意の意味をわかっていなかったようです。

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