新生シューターシスターズの冒険
ガンガールズ、スタイルも一新してシューターシスターズの冒険です。エミリーさん、髪をブロンドに染めたら、おまけでたわわまで育ってしまいました。ぼくが育てたんじゃないですよ。AIが勝手に、ブロンドならこのくらいないとなって盛り付けました。
満足した様子でエミリーがブティックから出てきた。髪をブロンドに染め、胸の開いたブラウスに革のベスト、革のタイトミニ、革のブーツ、そして仕上げはテンガロンハット。モダンな西部のガンガールだ。
「わー、すごく素敵だよ、それ。」ミナルナは目を丸くして褒めちぎった。
「プリモのツケで値札見ないで買ったからな、気持ちよかったぞ。」
「私たちも今度それやる。値札見ないで好きなだけ買ってみる。」
「ああ、いい女ってのは値札なんか気にしちゃダメだ。ツケにして男に払わせる、これがアメリカン・ウェイ・オブ・ライフだ。」
「次は魔法屋マンソンジュに行こう!」
「魔法屋マンソンジュへようこそ。あら、かっこいいガンマンのお姉さん。」
「あるかどうかわからないけど、適性の測定に来た。」
「まあ、二丁拳銃に魔法が加われば、あなた、それはもう鬼に金棒、虎に翼、豚に真珠、猫に小判!」
「違うのが混じっているようだが。」
「いえいえ、もともと可愛らしい豚さんを真珠で飾り立てたらキューティー10倍ですし、あちこちからいろいろなものを集めてきて蓄財に余念のない猫さんに小判を渡せばすぐに5倍に増えますよ。はい、二丁拳銃のお姉様が魔法を使えば、そう...笑う門には福が立つですわ。ともかく、こちらへどうぞ。」
「おめでとうございます。火の適性がありますわ。」
「お、やったな。では習得で頼む。お代はプリモにツケだ。」
「了解しました。」
「良し。では鍛冶屋へ行って弾丸を注文してこよう。あそこはたしか注文したら翌日に渡すってことだったからな。」
「わかった。うちら100発注文する。」
「私はガトリングがあるから500発だな。プリモの甲斐性に感謝するぜ。」
「誠意のプリモだもんね。」
「次は武器屋へ行くぞ。」
「え、エミリーさん、拳銃の他に武器が必要なの?」
「ああ、私たち西部の人間は拳銃の他にボウイナイフが必要なのさ。まああの武器屋にはないだろうが、似たようなのはあるだろうよ。そのうち良い素材を手に入れたら鍛冶屋でスペシャルなのを作らせるつもりだ。」
「武器屋モデスト王都店へようこし。」武器屋らしからぬ優しそうな店長が出迎えた。
「ダガーを捜してる。長さは30cmぐらいか。」
「短剣類はこちらです。」
「あっ、これ!」エミリーは巨大な短剣を見つけた。
「これ、兄さんのボウイナイフと同じだ。これください!」エミリーは即決した。
トランシルヴァニアでドラキュラを追い詰め、護衛のジプシーに腹を刺されながらもドラキュラの心臓を抉ったクインシー・モリスのボウイナイフ。西部の男の誇りである刃渡り30cmの大きくて頑丈なナイフ。エミリーと兄をつなぐ血脈の武器。これを装備することによって、エミリーはモリス家の女として戦いに身を投じることができる。
「ねえ、エミリー、そんな大きなナイフ、どこに収納するの?」
「腰に差すかな。」
「両側にガンホルダーがあるじゃん。」
「じゃあ...袈裟懸けにしたベルトに鞘を付けるか?」
「そのたわわが邪魔になるよ。」
「うん、絶対抜きにくい。抜くとき間違って胸元を切り裂いておっぱいポロリになるよ。」
「じゃあ....、あ、そうだ、おまえらみたいに背中に背負うってのは?」
「それだよそれ!刀は背中、これがうちらの基本!エミリーも今日から仲間だよ!」
「なあ、せっかく魔法を手に入れたんだ。鍛冶屋で弾丸を注文したら、私たちだけでクエストに行かないか?残りの弾を全部撃ち尽くしてもかまわない。」エミリーはミナルナを誘った。
「やるよ、シューターシスターズのクエスト!」ミナルナは手に入れたばかりのピースメーカーでガンスピンを決めた。
「たのもう!」ミナルナはギルドの受付でいつもの時代劇挨拶をした。
「おや、シューターシスターズかい?」
「もうシューターだけってわけじゃないんだけどね。いろいろスキルも増えたので、何かお試しでクエストやろうかなと思って。あまり金策は意識してない。どうせ何でもプリモが買ってくれるから。」ミナが説明した。
「そうそう、プリモは誠意と甲斐性を持ち合わせた理想の男だよ。」ルナが、本気かどうかはわからないけど、とりあえず褒めた。
「どんなクエストがご所望なのかな?」受付はもみ手をしながら尋ねた。
「燃えやすい敵!」エミリーが言った。
「腐りやすい敵!」ミナルナが言った。
「弾丸が通る敵!」最後は全員で言った。
「でございますと...中層に厄介な敵が拠点を作りまして、精力を伸ばしているのです。知能が高く、生意気にも工廠を設置して武器を作っています。冒険者だけでなく周辺のモンスターも捕食して個体数を増やしているようです。このままだとダンジョン内に小さな国を作る勢いです。生還した冒険者によりますと、武装した大型類人猿で軍隊のような戦い方をするそうです。」
「ほう、それは面白そうだ。それにしよう。受注証を。」エミリーは不適に微笑んだ。
「このあたりかな?」ルナが周囲を見回す。
「あ、出たよ!あいつだ。単体だけど、周囲に潜んでるかも知れない。」ミナが発見した。
「射程内まで進んだら倒れるまで弾丸を撃ち込む!」エミリーが先行した。
エミリーの二丁拳銃とミナルナで計4丁のピースメーカーが火を吹いて、ドワーフエイプは倒れた。銃弾4発で倒れるようだ。だが、銃声に反応して敵が集まってきた。その数...10体は下らない。
「気をつけて!敵はダガーを投げる。」ミナが警告した。
「んなもん当たるわけない。」
ルナが横に跳んで壁走りしながら弾丸を撃ち込む。エミリーは残酷な笑みを浮かべて火魔法を唱えた。敵の前衛が燃え上がった。
「Hahahaha! Burn, baby, barbecue!」
両側の壁に立つミナとルナは前衛に続くグループに何やら粉を巻いた。火薬だ。前衛の炎に引火して次のグループも炎に包まれた。
「まだまだ湧いてくるなら、これでもお見舞いするか。」エミリーはガトリングガンをぶっ放した。
硝煙が消えると無数の死体が転がっていた。ミナルナは両側の壁を走って先へ進み、残敵に闇魔法と連射を浴びせた。たまに敵のダガーが跳んでくるが一流のくノ一に当たるわけがない。廊下の敵が一掃され、奥に工廠の入り口が見えた。
「あそこかい!」
ガトリングガンをアイテムボックスにしまい、エミリーはボウイナイフを抜いた。左手にピースメーカー、右手にボウイナイフ。ミナルナも忍刀を抜き、全員が銃と刀剣を構えて入り口に近づいた。
「さて、入るか。」エミリーが扉を開ける。
ドワーフエイプのボスが待ち構えていた。しかしボスにしてはいまいち迫力がない。武装はしているが、徹底抗戦するという気迫が感じられない。するとどうだろう、ボスは武器を捨てて降伏のポーズを取った。知能が高いので無駄に戦うより降伏を選んだのだろう。
「どうする?」ミナがみんなの顔を見た。
「ここで殺しちゃうと後味が悪いよな。」エミリーはボウイナイフを下ろした。
「拘束して連れ帰ってもどうせギルドで殺処分するだろうし。」ルナも忍刀を鞘に収めた。
「武装解除して放置。武器は全部持ち帰ってギルドに売る。」ミナの決定にみんな頷いた。
エミリーさん、スタイルを一新したら性格も少し変わったような気がするのですが、相変わらず豪胆な西部の姉ごっぷりですね。




