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巫女とサキュバスと異世界と、そして人文知は役立たず  作者: 青水


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イナンナ隊のゴールデンアビス攻略

このパーティーで魔法試運転と金策を同時に行います。

 深層の目的地はかなり遠く、途中で遭遇する雑魚はすべてイナンナのカリスマに屈服して同士討ちを始めた。エルフたちは死体から出る素材を拾おうとしたが、イナンナと天使がどんどん先に進むので諦めて付いていった。途中に川があり、そこを渡ればショートカットできそうだったので、イナンナは自力で、エルフたちは天使たちに運んでもらった。川の先に森があり、たくさんの果物が実っていた。エルフたちは故郷を思い出し、もぎ取って食べようかと思ったが、ダンジョンの果物なので警戒して諦めた。しかし....警戒という言葉を知らないようなイナンナは、パタパタと飛んで、果物をもいでエルフたちに投げて寄こした。


挿絵(By みてみん)


「美味そうだ。食べるが良い。」


「うわ、美味しい。何これ?」フェリシアが齧りついて笑顔になった。


「ジューシーで甘酸っぱくて、そして幽かにスパイシー。」エルフィーナが食レポのような感想を漏らし、そして何かを思い出したようだ。


「この果物ってあの伝説の...」


「そうよ、100年前のヴァンパイア退治で大活躍した...」


「スパイスマンゴー!」2人はユニゾンで叫んだ。


「どうしたの?」セレスが果物を頬張りながら尋ねた。


「100年前、この果物を食べてヴァンパイアから人間に戻った人たちが、みんなで協力して強大な始祖を倒したという話が伝わっているの。」


「へえ、じゃあ美味しくて縁起が良い果物なんだ。」ステラもシャリシャリ食べている。


「おい、気をつけろ。何か出たぞ。」空からイナンナが警告する。


「あ、ついに出たわ。金ピカよ。」エルフたちは矢をつがえた。


挿絵(By みてみん)


「なんだか顔がかわいいけど、お金が欲しい私たち!」


「非情に徹してむしり取る!」


 なんだかかっこいいような口上を述べているが内容は酷い。


「あれ?矢が刺さらない。」


 ゴールドキマイラの黄金のボディは矢を弾いた。エルフィーナは風魔法を唱えた。四肢や翼に亀裂が入った。


「見てられんの。」


樹上からイナンナが闇魔法を唱えた。これは効果があった。ボディがどんどん朽ちて行く。まるで急激な老化のような。


「待って!なんだか金ピカがくすんできた。」エルフィーナが金策を心配した。


「うーむ、これ以上やると価値が大きく減じそうだな。」イナンナは攻撃をやめた。


「皮膚が弱っているみたいだから、今なら矢が刺さるんじゃない?」


セレスが背後からいい加減なアドバイスを送った。


「あ、本当だ。刺さる。」


山嵐のように身体中に矢を受けてゴールドキマイラは倒れた。


「対策を考えないといけないの。」イナンナは腕組みして考え込んだ。


「闇魔法は効くけど金が劣化します。」セレスは困った顔で言った。


「ゴールドには何が有効なのかしら?」


フェリシアが片手で肘を持ち、その肘の先の手の親指と人差し指で顎を挟んだ。ああ、面倒くさい。誰もがやるこのポーズ、名前はないのか?考える人のポーズ。ともかくフェリシアは考えた。


「火なら溶けそうだけど、ここに火魔法持ちはいないわ。」


「闇魔法で弱らせてから光魔法でとどめを刺したら金の品質が戻りませんかね?」


セレスのいい加減な出まかせは、結構な確率で当たる。


「次ので試してみよう。来たぞ。」樹上のイナンナが敵を見つけた。


「ゴールドアラクネ!」


「切り刻め!」エルフたちの風魔法がゴールドアラクネの皮膚に傷を付け、イナンナの闇魔法がさらに腐食させ、金色がくすんだ。


「よし光魔法だ!」イナンナの号令で女神と天使たちの光魔法が金色の巨大グモを倒した。


「どうだ、金の品質は...あ、ピカピカに戻ってる。」


「よし、これで金塊ザックザク♪」エルフたちは大喜びだ。


「よし、この調子でどんどん行くぞ。」」イナンナは見た目とは裏腹にノリが良い。


「出ましたよ!」セレスが敵を発見した。


挿絵(By みてみん)


「裁きの光!」少し明るくなった。


「ねえ、セレス、何か出たの?」ステラがセレスの顔を見た。


「敵には何も効果がなかったみたい。」


「見てられんな。」イナンナが闇魔法を使ったが、効果がなかった。


「無駄だ。我は闇のゴールドクイーン。闇魔法など栄養でしかない。」


 闇のゴールドクイーンが勝ち誇ったように宣言し、何やら攻撃魔法を詠唱し始めた。


「撃て、撃てー!」


エルフ2人が雨のようにさまざまな属性矢を放った。闇のゴールドクイーンは背中の翼をマントのように閉じて矢をかわした。


「神をも恐れぬその不遜にして傲慢な態度、見過ごすことはできません!」


 そう、神罰は天使の中に罰する心が芽生えないと発動しないのだ。真の「裁きの光」が放たれ、闇のゴールドクイーンは倒れた。


「また似たようなのが出てきたぞ。」イナンナがニヤニヤ笑っている。


挿絵(By みてみん)


「似たようなのとは無礼だな。私は黄金女王アウレリア、ゴールデンアビスの長だ。」


「ほう、女王を名乗るか?私も女神にして女王、メソポタミアのイナンナだ。お互いに納得できるまでやり合おうではないか!」


「望むところだ、無礼者どもめ!」


 勝負はあっという間に決まった。プロレスのように取っ組み合いをしようと挑んできたアウレリアにイナンナは持っていた三日月の杖で5発ほど無属性の魔法攻撃を与え、地面に落ちたところを杖でガシガシ殴って倒したのだった。


「ほれ、金策のエルフども、こいつを身ぐるみ剥いでしまえ!」


なんか傲慢で大丈夫かなと思っていたけど、イナンナ様、なかなか話せるやつですね。

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