天使とくノ一と女神の魔法適性
ゴールドが付くと金がザックザクに儲かる、そんな楽ができるなら、誰もゲームの金策で困りませんね。
「出たよ、金ピカ!」ミナルナが緊張して報告する。
「ふ、跪け!」イナンナが見据えるとモンスターはその場に跪いた。
「戦って我に命を捧げよ!」イナンナの命令でゴールドリザードマンたちは同士討ちを始め、数分後に傷だらけの1体を残しすべて死体となった。
「何、これ?」ミナルナが怪訝そうに振り返ると、イナンナは満足そうに微笑んだ。
「さあ、死体を集めるのじゃ!」イナンナは指先から光の球を弾いて最後の1体を倒した。
イナンナはどうやら女王のカリスマで敵を操作できるようだ。敵は最後の1体になるまで同士討ちをする。せっかくのミナルナのミスリル忍刀の出番はなかった。
「なーに、これ?つまんなーい!」ミナルナが口を尖らせる。
「私たちの出番がありません。」セレスとステラも不満そうだ。
「どうした?私の力で楽勝続きだろうが!たいしたことではないのでそう褒め称えんでも良いぞ。」イナンナは満足そうに微笑んだ。
この先はいろいろと調整が必要かもしれないが、現在のバランスの良くないパーティーにとってイナンナのチート能力は、現在の金欠から救済するまさに天恵だった。
「えーと、いろいろ不満があるようだが、魔法屋の支払い分を稼ぐまでは、しばらくこのまま女神様のお力にすがろう。無駄に怪我をする必要もない。ゴールドリザードマンの一撃はかなり重そうだしな。痛い思いをする必要もないだろう。ミナルナのかわいい顔に傷が付くのを見たくない。」
「それもそうだね。アイドルの顔は大事。」ミナルナはユニゾンで納得した。
そのあともずっと女神のカリスマ魅了でザクザクと黄金が貯まり、俺たちはダンジョンの行き止まりまで到達した。アイテムボックスはゴールドの死体でいっぱいになった。
「良し、帰ろう。」
その瞬間、地面が揺れ、岩壁が割れ、巨大なゴールドリザードマン、いやマンじゃない。ウーマンだ。フラウだ。リザードクイーンだ。
「うわ、金ピカのクイーンだ。」ミナルナは喜んでいる。
「クイーンは雌なので魅了はできんな。双子よ、不覚を取るなよ。」イナンナが身構える。
「怪我をしたらすぐに回復しますよ~!」天使たちも身構えた。
ミナルナは散開して跳躍し、新調したミスリル忍刀で斬りかかった。しかし黄金のうろこは硬く、あまり効果的なダメージを与えられない。逆に、クイーンが振り回すメイスは、たまにミナルナの四肢に当たってダメージを与える。
「いやん、痛い!」ルナが地上に落ちた。
「ヒール!」ステラの治癒魔法が瞬時にルナの傷を回復する。
このまま続ければ、アイドル双子くノ一のHPはずっと満タンのままだろうが、たまに食らう一撃の痛みのストレスは蓄積される。
「見てられんの。」
イナンナは薄ら笑いとともに三日月のセプターをかざし光弾を放った。一発の威力はそれほど高くはなかったが、無数に放たれる光弾はクイーンのうろこを破り、身体にのめり込んだ。
「今じゃ!刺せるところに刀を刺して抉るのじゃ!」
ミナとルナは左右からクイーンを攻め、忍刀で内臓を抉った。ゴールドリザードクイーンは莫大な金塊となって絶命した。
「うわー、金塊がザクザクですね♡」ステラがパタパタ飛んできた。
「ふむ、私の手にかかればこんなもんじゃ。」イナンナは文字通り鼻高々だ。
「じゃあ、さっそくカネを持って魔法屋へ行こうよ。」ミナルナが俺をせかした。
「魔法屋マンソンジュ王都店へようこそ。」美人店長が出迎えた。こいつにCMを語らせてはいけない。
「こいつらの適性を測定してくれ。」
「天使様もですか?」
「ああ、元々の能力で治癒は無限にできるが、他の適性も調べたいそうだ。」
「こちらの女王様のようなお方は?」
「私か?そうだな、何でもいけそうな気がするが、せっかくの機会だ、測定してもらおう。」
「ではこちらへどうぞ。」
「ミナさんは土と闇、ルナさんは風と闇です。」
「習得で!」俺が言うより、いや店長に訊かれるより前に、ミナルナはユニゾンで習得を要求した。
「やった!風だ!土よりかわいい!」ルナが勝ち誇ったようにミナに言う。
「土はみんなを守れるのよ。」ミナは静かに諭す。
「土臭いってダサいってことなんだよ。」
「そんなことないもん。地に足を付けてお花や野菜を育てる良妻のイメージだもん。あんたはフーテンでフーゾクでお嫁に行けなさそう。」
「なんですって?エルフィーナとフェリシアも風なんだよ。」
「エルフは女だけの里で暮らすからお嫁に行かないの。」
「ミナはさすが闇だけあって心が黒いわね。」
「あら、ルナだって闇じゃないの。闇のくノ一。」
「うふふ」「ふふふ」「あはは」「ははは」
「うちら闇のくノ一!」2人はとても悪い顔で笑い合った。
「次は天使様ね。測定するのが初めてだからとても楽しみです。」店長は期待に胸を高鳴らせている。
「セレスさんとステラさんは思った通り光です。しかも見たことがない能力を持っています。人間には発音できない呪文で発動する極めて強力な攻撃魔法です。これにはロールがありませんからお売りできません。戒めの光のような魔法です。」
「どうやって発動するのですか?」セレスが尋ねた。
「天罰を与える気持ちになれば発動するかと。人間には計り知れぬことですが。」
「次のバトルで一斉ので出そう!」ステラはやる気満々だ。
「一斉ので出すのは危なそうだから別々に試してみましょう。」セレスが制した。
「次は私だな。」
イナンナが圧倒的な威厳とともに測定器の前に進んだ。この人、もし全部適合だったら全部買いそう。さっきたくさん稼いだけど、お金足りるかな?天使2人組がタダだったので大丈夫だろう、たぶん。
「ではこちらへ手を乗せてください。」
「これは珍しい。こんなことが起こりうるなんて。光と闇の適性があります。」
「それは実に私らしいな。私は愛と戦い、豊穣と破壊を司る女神。相反する力を有するのは当然なのじゃ。」
イナンナのカリスマんいよる魅了とか天使が新しく覚えた戒めの光という攻撃魔法、パーティーは翡翠さん抜きでもチート級に強くなってきました。これなら地獄のサタンでも倒せそう。




