JK隊の成長3
全体魔法対策をしましょう。
「いらっしゃいませ、防具の店パシオン王都店へようこそ。」ドワーフのような店長が迎えた。
「この子たちに魔法防御に特化した軽い装備を捜している。」
「こちらの獣人のお姉ちゃんには既製品で大丈夫ですが、キャットバットさんには作らないとフィットしませんね。」
「時間がかかるのか?」
「いいえ、ほんの30分というところです。ただし希少な素材を使うのでお値段は張りますよ。」
「ほう、希少な素材とは?」
「天使の羽根です。ちょっと前に片翼を拾った人が持ち込んだので。」
片翼だと?それはステラが失った羽根に違いない。どこで落としたんだ、あのすっとぼけ天使は。
「その人はどこで拾ったんだ?」
「ダンジョンです。たぶん逃げるときに壁にでもぶつかって外れたんでしょう。」
「で、獣人用とキャットバット用でいくらになる?」
「合わせて5万ゴールドです。」
ううう、痛い出費になった。手持ち資産の半分が今日1日で消えた。ジェムドラゴンでも倒さないと今日の出費をまかなえない。でも、翡翠さんの非情の犠牲作戦でないとあれは倒せない。コツコツ行くしかないか。
「さて、準備も整ったことだし、デンジャラスゾーンへ戻るわよ。」
「今度の敵はどんなのかな~?」メロは相変わらず暢気だ。こいつ、本当は何歳なんだ?エラより年寄りだったら笑えるんだが。
「キモチワルイノデタ。」ミミちゃん警報だ。何だ、気持ち悪いのって?
カサカサカサ...這い回る音、ブ~ンという羽音も聞こえる。まさかね、俺の苦手なあれだったらいやだな...て、そうなりますよね。フラグですよね。
「メガローチの大軍だわ。きんも~!」冷静なエラも怖気を震っている。
「あいつの精気、吸うのやだ。」メロも顔をしかめている。
俺はモフ子の手を取り、ミミちゃんを抱いてはるか後方に逃げた。1匹でも苦手なのに大軍なんて、気が変になりそうだ。
メロの火炎ブレスとJK1号の火魔法で焼き払い、こちらに近づかないようにJK3号が土の壁を作ってくれた。
「まだまだ来るよう!」メロが情けない声を出した。
「気持ち悪くても我慢してヴァイタルアブソーブで精気を満タンにしてから、ブレスと闇魔法で一掃しましょう。どうせ精気に味なんかないんだから。」
「え~!」
「行くわよ。ヴァイタルアブソーブ!」「あぶそ~ぶ!」
俺は後ろを向いて見ないようにしているので何が起こっているのかわからない。たぶんみんなの魔法やブレスで全滅させたのだろう。酷い臭いが立ちこめている。
「プリモ、素材の回収...」
「いやだ、断る。これだけは絶対無理だ。」俺は揺るぎない決意を込めて拒否した。
「私、手伝うよ。」モフ子が巨大ゴキブリの触覚や脚などを回収してアイテムボックスに放り込んでいる。なんとけなげな娘だ。自分のヘタレぶりがこれで浮き彫りになった。JK隊の冷たい視線が俺に注がれた。
「ツギハイノチガナイテキダ。」ミミちゃん警報。次はアンデッドのようだ。
「やっかいね。エルダーリッチのグループよ。」先行して目視地点まで飛んだエラが言った。
「それって全体魔法を使う敵ですか?」JK2号が尋ねた。
「そう。もし単体なら詠唱が終わる前に倒してしまえば良いんだけど、複数いると...」
「何体いるんです?」
「5体。一度に全部倒せそうもないわ。アンデッドに精気はないからヴァイタルアブソーブも無効だし。」
「俺がマジックシールドのロールを使う。JK体は手分けして骨を粉砕してくれ。ファザリア、君が一番相性が良い。期待してるぞ。」
「闇魔法も効かないし、私は何の役にも立たないわ。せいぜい鞭で転ばせるくらい。」エラは鞭をパシンパシン振るっている。嗜虐の国の女王様だ。
「一斉ので行くよ!」メロはもう口から火を出している。
「一斉のっ!」JK1号の号令で全員がエルダーリッチに飛びかかった。真っ先に倒したのはファザリナだった。骨は格闘家にとって最適な獲物。斧も骨に強い。次に倒したのは3号だった。槍は骨の隙間に入り込んで上手く行かないので、JK4号は光魔法に切り替えた。これは相性が良い。JK2号も苦戦している。双剣で切りつけても骨はなかなか崩れない。結局1体の詠唱を許してしまった。広範囲の闇魔法だ。エラとメロには効かない。モフ子とミミちゃんも天使装備で無事だった。俺を含めたそれ以外の仲間は体力の2割ぐらいを持って行かれた。
「このおっ!」ファザリナの渾身の蹴りがエルダーリッチの頭蓋骨を砕き、戦闘は終了した。
俺はダメージを食らった仲間にポーションを配った。闇魔法を食らうと、HPが回復しても身体にいやな倦怠感が残る。これは精気を失ったときと少し似ている。
「ピーピー!コワイノクル!ピーピー!」ミミちゃん警報のレベルが上がった。ピーピーが加わったぞ。
「プリモ、ポーションはあと何本?」エラが厳しい顔で訊いてきた。
「25本だ。足りるだろ?」
「わからない。次の戦闘は全員がダメージを受けるから、戦闘中にポーションを投げまくる必要が出てきそう。ミミちゃんのピーピーはそれだけ危険を警告しているの。」
「あ、来たわ。でかいデーモンね。アークデーモンかしら?」
「わあ、HPが高そう。」
「HPだけじゃなくてMPもね。
「とりあえず吸っちゃおう!」
「うわっ、なにこれ!」エラが顔をしかめて咳き込んでいる。
「ふつうは味なんかしないんでしょ!何これ!ゲロまず~!」
メロはパタパタ飛び回りながら炎と精気を吐いた。汚くはないが絵面が酷い。
「もう吸えないわ、これ。」エラが肩で息をしながら呟いた。
それほどレベルが下がらなかったアークデーモンはパーティ前衛に向かって氷のブレスを吐いた。ブレスはマジックシールドで緩和されない。JK1号とJK3号はまともに食らってHPが半分になった。俺がポーションを投げ、JK4がヒールを唱えた。まだ全然足りない。ファザリナがアークデーモンの頭に跳び蹴りを食らわせた。アークデーモンは避けたつもりだったが、角の先に当たってしまい、角が折れた。
「ブレスが面倒ね。口を狙って!」
エラの指示でみんなが魔法や武器でアークデーモンの口を攻撃した。最も効果的だったのはJK4号の投げ槍だった。口の中に刺さり喉を貫通した。俺はそんな中ずっとポーションを投げ続けた。エラは嘔吐感をこらえて精気を吸い続けている。メロはゲロ混じりの炎をアークデーモンに吹きかけている。そんなことをすればせっかく吸った精気が戻ってしまうのではないかと俺は危惧したが、どうやらそういうものではないようだ。メロにいったん吸われた精気は、戻されてももはやゲロでしかなく、アークデーモンを力づけるものではなくて弱らせるものでしかないようだ。おっと、我慢して吸い続けていたエラもついに限界を迎えたようで、大量の精気ゲロをアークデーモンに吹きかけてしまった。アークデーモンはパニックになって、とうとう自分から精気を吐き出すようになってしまった。これはもらいゲロのようなものだろうか。大量の精気を失ったアークデーモンはレベルが下がって縮んでしまい、レッサーデーモンになってしまった。メロは、レッサーデーモンを確認すると、元彼を思い出したのか、怒り心頭に発して紅蓮の炎を吐きかけた。元アークデーモンのレッサーデーモンは消し炭になった。
「デンジャラスゾーンはここで行き止まりみたいね。素材を集めて帰りましょう。」
たとえ精気であってもソラ子はゲロの挿画は決して描かないとChat-GPTは断言したけど、「炎と一緒に吹き出した」なら見祢ツを突破して描いてくれましたよ。




