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メフィストの腹立たしい生還

死んでなかったんかーい!流した涙を返して...

「討伐報酬、本当によろしいんで?」


「ああ、だから死ぬな。」


「了解しました。」


 メフィストフェレスの火傷がみるみる消えて行く。「ふう」というため息とともに火傷の痕跡はすべてなくなった。


「旦那、無事帰還しました。」


「おまえ、火傷は?」


「ああ、あれですか?無傷で帰るのも芸がないのでしばらくブレスを浴びてました。十分に焦げ目が付いたところでドラゴンを倒し、報酬をもらって帰ってきました。」


「報酬は?」


「旦那はもういらないと...」


「いや、もらったのならよこせ。」


「ダメですよ。いらないという言質は取りましたからね。あの金は悪魔財布に入ります。」


「悪魔財布だと?」


「はい、悪魔もたまにはお金が必要になることがあるので、財布に貯めているんですよ。」


「ドラゴンはどうやって倒した?」


「反転の力で裏表逆になって息絶えました。私はそもそも矛盾や反転の存在です。いわば神を裏返しにしたようなもの。ドラゴンは表皮が内部に、肉と内臓が表に出た状態で絶命しました。いや、エグい絵面でした。あんな状態になって生きていられる生物はいません。討伐の証拠として目玉をと思ったのですが、内側にのめり込んだので取り出せず、仕方がないので心臓を持って行きました。どうやって取り出したのか訝しがられましたがね。ギルドへの証拠品以外にに、ドラゴンの肉や血液、骨、油なども採取して、大都会の市場で売りさばいてきましたよ。大儲けです。命令、ありがとうございました。」


 く、くっそー、マジで腹が立つ。一瞬でもこいつのために涙を流したことを後悔する。なんだ、こいつは?そう、悪魔だ。悪魔に人間の感情で接してはいけない。当たり前の原則を忘れていた。


「まあ良いだろう。おまえの実力はわかった。これから存分に働いてもらう。」


「そのことなんですが旦那、私はあなたの下僕ではないということをお忘れなく。拒否権は常に発動可能なのです。そう易々と悪魔の力を利用できると思わないように。」


「わかった。明日は大都会へ行くぞ。出版社に乗り込んで原稿を買ってもらう。」


「了解しました。原稿、売れると良いですね。あのゲーテでさえ最初は苦労したという話ですから。」


「お、おう。」


 翌日、宿を引き払って俺たちは大都市を目指した。メフィストフェレスは熱気球の操縦に長けているようで、気流の状態を読んで気球に熱風と冷風を上手に吹き込み、俺たちはお昼前に大都会へ到着した。


挿絵(By みてみん)


「さあ到着しましたよ。ここはこの国の王都です。王宮がありますので警戒も厳重です。怪しい態度を取って逮捕されないように注意してください。」


「その言葉、おまえに全部返すわ。悪魔の気配プンプンしてるぜ。教会でお祈りして来たらどうだ。」俺は思いつく最大の嫌みを言ってやった。


「教会ですか...私が入ったら建物が崩れ落ちるかも知れないので遠慮しておきましょう。」


「出版社がどこにあるかわかってるんだろうな?」


「はい、もちろんです。」


 門番に呼び止められたが、出版社を訪れる作家と編集者と言って、袖の下に本をプレゼントしたら簡単に通してもらった。ついでに裏表紙にサインをねだられたが。


「出版社はあの高い建物の最上階です。さあ参りましょう。」


「こんにちは。原稿の持ち込みに来ました。助手のアルマーニと作家のプリモです。」メフィストはよどみなく名刺を渡した。あんなもの、いつ作ったんだ?


「これはこれは、王都書林のガスパルです。原稿の持ち込みはいつでも歓迎しています。ジャンルは何ですか?」


「広い意味でのファンタジーです。今回は3つ持ってきました。」


「どれどれ、なるほど、『ジョアンナ・ヴァン・ヘルシング ――The Vampire Queen』(https://ncode.syosetu.com/n5112kj/)と『最下層のヴァンパイアですが,飯が食えるようになりました。』(https://ncode.syosetu.com/n4361kk/)、そして長編『織田家のアナザー・ジャパン』(https://ncode.syosetu.com/n7138kh/)ですか。ちなみに長編のタイトルの「織田家」って何ですか?」


「異国の王族の名前です。何百年にもわたるダイナスティーの歴史物語です。」


「ほう、そえは壮大な構想ですね。わかりました。編集部総出で作品を読ませて頂いて、出版についての当社の考えを明後日までに決定いたします。それまでどうか王都でお待ちください。それから...これから先は版権が関わってきますので、自主出版による販売は控えてください。よろしいですか?」


「了解しました。では明後日、色好いお返事をお待ちしております。」


 メフィストは実にそつがなく商談をまとめた。こういうの、俺は非常に苦手だ。人文知は役立たずなのか、単に俺が役立たずなのか...


「さて、当初の目的は達成しました。明後日までどうしましょう?言っておきますが、モンスター討伐をしたいのなら自分でしてください。私はまっぴらです。」メフィストは涼しい顔で釘を刺した。


「うむ、モンスター討伐もできなければ市場で本も売れない。となると何をするべきか考えないとな。とりあえず宿屋に部屋を確保しよう。」


 俺たちは王都のホテルに宿を取った。宿代は以前の倍ぐらいする。財布が心配になってきた。


「なんか冴えない顔つきになりましたね。財布が心配なのですか?良いですよ、王都の宿泊と食事代ぐらいは私が面倒見ましょう。ドラゴン素材を売り払って財布がとても重くなっていますから。」


「お、おう、ありがとうな...」く、嫌みな野郎だ。おごられる立場は卑屈になるのをわかっていてやっている。


「で、明後日まで何をなさるので?」


「王立図書館で文献調査だ。この異世界に来てから、この世界の地理も歴史も何もわからない。これではこの先生きていける気がしないので、徹底的に文献調査をする。これは俺の得意分野だ。せいぜい楽しませてもらおう。」


挿絵(By みてみん)


「了解しました。ならば私は気楽に遊び歩いて持っております。」


 メフィストが大都市の街路を歩いていると、何やら自分と似た波動を感じた。


「あなたですか?こんなところで何をしておいでで?」メフィストは警戒しながら尋ねた。


「あなたですか、はこっちの台詞だよ、メフィストくん。」


プリモくんはようやく自分の得意技、図書館で文献調査ができて何より。そしてメフィストフェレスが出会ったのは...?

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