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巫女とサキュバスと異世界と、そして人文知は役立たず  作者: 青い水


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The Jade、魂のライブ、そして...

第1部が終わって、ステージは第2部、いよいよThe Jade のライブです。ところで先日、"Nobody knows that nobody lives"と歌うガールズバンドの動画をGeminiに作らせたのですが、なんとボーカルが魔法でギターを召喚する不思議動画になりました。


「はい、それでは1時間半の休憩およびチェキタイムに入ります。お席まで天使に運んでもらいたいお客様はこちらへどうぞ。昇天したあとのシャンパンは格別ですよ。」エラが客を誘導して昇天タイムが始まった。


挿絵(By みてみん)


「フンフンフ~ン♩」ステラはチップでザックザックになったポーチに大満足だ。


挿絵(By みてみん)


「なあ、そんなにお金を稼いで何に使うんだ?」俺は上機嫌のステラに訊いた。


「教会を建てるのよ。」


「女神の教会があるじゃないか。」


「私たち、甘やかしの女神と試練の女神のそばによると、影響を受けちゃって何だか変になるの。雲の上でも酔っ払ったみたいになったし。でね、セレスとも相談して考えたんだけど、女神たちとは別の、私たちが仕える本当の神様がいるんじゃないかって。その神様のために教会を建てようということになった。」


「そうか。天使は神の御使いだから、神様がいないと話にならないもんな。」


「立派な教会ができれば、きっと神様も見に来てくれると思う。」


「そうだな。がんばれ。」



 バーカウンターにはクラリモンドと別れを惜しむ客が大勢押しかけ、次々とシャンパンが開けられた。クラリモンドは人間ではないので、いくら乾杯に付き合っても全く酔わない。店の売り上げは爆上がりだ。ステージに目をやると、チェキを撮りたい客が推しの前に長蛇の列を作っていた。夜も更けてきた。店は熱気に包まれた。エラは女主人としてあちこちに顔を出し、細かい指示を送っていた。さすが創業400年の老舗サキュバスだ。若い――わけではないが若く見える――わりに貫禄がある。


 ステージに幕が下ろされ、バンドのセッティングが始まったようだ。機材の調整の音が聞こえる。翡翠さんの厳しい指示が飛ぶ。期待が高まる。ドラムスのシンバルがパシャーンと大きな音を出した。何かがぶつかったのだろう。それに続いて少女らしい明るい笑い声が聞こえてきた。翡翠さんが幕の横から出てきた。


「みなさん、もう少しお待ちくださいね。メンバーが替わったのでアー写の取り直しです。これはチェキを撮ってくださったお客さんにプレゼントします。」会場から興奮の声が上がった。


挿絵(By みてみん)



 幕が上がった。華々しいライトがバンドメンバーを照らして動く。会場は割れんばかりの拍手と声援だ。ペンライトが振られる。MCもなくいきなり演奏が始まった。


「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」


« Nobody knows that nobody lives....♩ But the shadows that’ve been ourselves pretend to play their roles and whisper that it’s all OK....♩”



挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 MCなしで激しい曲、メロディアスな曲、ダンサブルな曲、全部で5曲が続けて披露された。貨客は総立ちでヘドバンしたり、踊ったり、ペンライトを振ったりと全力で楽しんだ。


「みなさん、どうもありがとう。次回のステージで同じメンバーにできるかどうかわからないのですが、全力で優れた分身を作り出せるよう精進します。」翡翠は最後に頭を下げてライブは終わった。


 幕が下りたステージの横にチェキ会場が設けられた。翡翠に長蛇の列ができたのは言うまでもないが、いずれ収束する儚い分身たちにもファンの列ができていた。これは演奏に対するリスペクトのためだろう。お色気担当ベースのファンサ、寡黙な職人リードギターの渾身のリフ、冷静なリズム統御者のドラム、すべてが尊い。チェキ会が終了するまで1時間以上もかかった。



「じゃあ、みんな、行くわよ。」バンドメンバーを引き連れて、翡翠は着替えもせずに外へ出た。どこに行く気だろう?


「翡翠さん、こんな時間にどこへ行くの?」


「まだ身体が熱いのでナイトハントへ行きます。分身の構成も安定してますから。大丈夫、私も自分用のアイテムボックスを買ったので、付いてきてくれなくても問題ありません。」


「そんなこと言われても、分身がいるとは言え、翡翠さんひとりでは心配です。天使以外に生き返らせることができるのは俺だけですから。」


「ありがとう。不覚を取るつもりはありませんが、そういうことならよろしくお願いします。」



 俺たちはギルドの夜間窓口へ行った。


「現在受注できるクエストで最も利益を上げられるものは何ですか?」


「えーと、危険を厭わないというのなら、ジェムドラゴンの群れだな。属性魔法も物理も通りにくい上に、無属性の強力なブレスを吐く。欲に駆られた冒険者が何人もMIAだ。戻ってきた者はいない。」


「そうですか。ならばそれを受けます。受注証をお願いします。」


 翡翠さんがそれほどまで金に執着する炉有が知りたいところだが、訊ける雰囲気ではなかった。

「属性魔法も物理も効かない。液体窒素で呼吸停止にする方法で果たして倒せるか。とりあえず分身は楽器をしまって武装させておきましょう。物理が効かないとはいえ丸腰というわけにはいきません。」翡翠さんはアイテムボックスに楽器を放り込み、分身に武器を渡した。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



「とりあえず液体窒素を試すのか?」俺は尋ねた。


「そうですね。でもその前に式神で敵の位置を確認しなければなりません。分身壱、弐、参、行きますよ。式、影より出でて識を広げ,真理を携え、急々如律令!」翡翠たちは扇を取りだし術を唱えてそれぞれ3体の半透明の式神を呼び出した。計12体の式神は空中で散開し、ダンジョンの彼方へ消えていった。


ライブが終わってから、さらに資金稼ぎのためにクエストに出かけるなんて、翡翠さんはなんと精力的なのでしょう。ところで、楽器を武器に持ち替える翡翠さんと分身たちですけれど、なんとAIに拒否されました。あーだこーだと回り道をしてようやく作れたのですが、ガイドラインの謎です。

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