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巫女とサキュバスと異世界と、そして人文知は役立たず  作者: 青い水


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精気切れでダウン

精気がほぼ空っぽになるってどういう状態なのでしょう?ダルくてもう何もしたくない...いや、それどころではないのでしょうね。


 翌日、俺は寝続けた。精気は放出したら時間をかけて回復するのを待つしかない。サキュバスのように自在に吸収できない。俺は魔力量もゼロだし、力も体力もない。なのでレベルが下がったという実感はないが、頭がぼんやりして何も考えられない。これは作家としてのレベルダウンなのかも知れない。ああ、なんか無性に抱っこされて撫で撫でされたいな。あ、これは赤ちゃん返り?人間としてのレベルダウン?


「プリモ、起きた?」エラが入ってきた。


「起きられねえよ。頭も身体も動かない。」


「抱っこしてあげようか?」


「これ以上吸われたら死ぬ。」


「吸わないわよ。抱っこして撫で撫ですると少し戻るのよ、精気。」


「本当か?」


「でも少しだけね。1人の抱っこで戻るのはちょっとだけ。いっぱい戻すにはたくさんの人に抱っこしてもらわないと。」エラは悪戯っぽく笑った。こいつは俺に何か恥ずかしいことをやらせようとしている。


「試してみる?」


「おう、頼む。」俺はやけくそになった。


挿絵(By みてみん)



 何だ、これは...気持ちが良いけど、既視感が...俺はそのまままどろみの世界に入った。


「エラ、そろそろ開店よ...って、何やってるの?」遠くでメロの声が聞こえる。


「クエストでいっぱい吸っちゃったからね。」


「あ、私も吸ったんだった。」


「撫で撫でしてあげなさい。」


「うん。撫で撫でしてチュウもする。」


「バカね、そんなことをしたらまた空っぽになっちゃうじゃない。」


 俺はまたまどろみの世界に入って何も聞こえなくなった。夢を見た。森の中でエルフの2人が俺の手を引いて泉へいざなう。小鳥の鳴き声が聞こえる。木立の隙間から陽光が射し込む。俺はエルフの2人と沐浴を楽しんだ。エルフィーナが壺の水を俺の頭にかけてくれる。俺は泉で沐浴しているはずなのに、その姿が新古典派の絵画のように目の前に見える。エルフで良かった。これがアルテミスだったら鹿にされてしまうところだった。俺は泉を出て森の道を歩いた。すると向こうから落ち武者の一群がやってきた。そして俺を見つけて刀を抜いた。攻撃されるのか?まあ夢だから良いけどな。諦めてその場に立ち止まり目を閉じた。「グワッ!」目の前の落ち武者が悲鳴を上げて倒れた。何だ?死んだぞ。残りの落ち武者は警戒して散開した。待てよ。俺は何もしていない。「グワッ!」また1人倒れた。その額には手裏剣が刺さっていた。


挿絵(By みてみん)



「兄さん、日本語話せるか?」


「アブラス・ハポネス?」


 どう見てもミナルナだよな。何で知らない人みたいになってるんだ?しばらく戦闘すると、圧倒的な力の差を感じ取って落ち武者たちは退散した。


「このあたりは物騒だから気をつけな。じゃあな。」ミナルナらしいくノ一は、俺の頭をポンポンすると、木立に跳んで、やがて姿を消した。


 森を抜けたら海だった。潮風が気持ちいい。俺は砂浜に横になった。寄せては返す波の音。泳ごうかな。でも水着持ってないし。それに、せっかくさっき泉で沐浴したのに、海に入ったら潮水でベタベタになる。空でカモメが鳴いている。眠くなってきた。夢の中で寝たらどうなるんだろう?イテッ!顔にビーチボールが飛んできた。


「お兄さ~ん!ごめんね~!」


挿絵(By みてみん)


 JK隊が寄ってきた。しゃがんで俺を取り囲んでペタペタ触ってくる。たわわが近い。顔が近い。気まずいので寝たふりでやり過ごそう....と思ったら本当に寝てしまった。夢の中でも眠れるんだな。俺は砂地を歩いていた。さっきまでいた砂浜ではなくて砂地。もう少しで砂漠になりそうな砂地だ。赤茶色の岩がゴロゴロしている。喉が渇いた。自販機もコンビニもあるはずがない。お、あそこに町があるぞ。Saloonと書いてある店がある。たぶん飲食店だろう。


「Brother, the first time here?」店主がグラスを拭きながら声をかけてきた。英語だった。面倒くさい。夢の中で英語なんか使ってられるか。


「ミネラルウォーターをくれ。」


「は?そんな上等なもんはねえよ。ガキはミルクでも飲んでな。」


「じゃあ、それでいい。」俺は乾いた喉にミルクを流し込んだ。


「はっはっは、坊主、*`>%$#!」何を言ってるのかわからんが、顔つきからするとたぶん侮辱したのだろう。かまうもんか、勝手にやってろ。


「おい!言われたままにするのはここの流儀じゃないんだ。これを使いな。」


挿絵(By みてみん)


 テーブルに脚を投げ出している女が俺に銃を渡した。どう見てもエミリーだが、夢の中では知らない人のようだった。


「決闘しろと?」


「ああ、ここじゃあ侮辱されてそのままにする奴は生きていけないんだよ。」


「おう、ミルクボーイ、表に出な。」さっきの侮辱男がスイングドアを抜けて外に出た。


 まあ良いだろう。どうせ夢だしな。負けて死んで目が覚めるってやつか。俺は表に出て男と対峙した。銃の撃ち方、どうするんだっけ?たしかハンマーを起こすんだな。映画で見たぞ。カチッとやるやつ。よし準備オッケーだ。もう撃っても良いのかな?審判とかいなさそうだし、さっさと終わらせるか。男は腰のガンホルダーの銃に手をかけている。かっこよく早撃ちを決めるつもりなんだろう。付き合ってられない。俺はノーアクションで引き金を引いた。ゲーセンでやるように。すると、何というまぐれだろう、男が倒れた。死んだのか?いや、死んではいない。足の甲に当たって倒れたようだ。まあ、これでも勝ちは勝ちだ。


「やったな、ラッキーガイ!」店からエミリーのような女が出てきて俺をハグして頭を撫でた。


 はあ、疲れた。夢の中とは言え、生まれて初めての決闘だ。俺はどこかに倒れ込みたくなった。すると周囲で、「Sent from the heaven! Jesus, my Lord!」などと騒がしい。何だろうと見渡していると、セレスとステラじゃないか。


挿絵(By みてみん)


「お迎えに来ました。」


「え?俺、死ぬの?」


「恐れることはありません。神に召されるのです。」


「だから、それが死ぬってことじゃないか!」



挿絵(By みてみん)


 俺は雲の上に連れて行かれた。雲の上ってフワフワして羽毛布団のような場所なのか?そんなわけがあるか!


まさか、夢の中で死ぬって....ああ、けっこうあるみたいですね、死ぬ夢。ぼくは見たことがないけど。ところで、あのターコイズブルーの水着、あれだけはなぜかSoraも着せることを許してくれるんですよ。ふつうは、「ビーチで水着を着て」がガイドライン的に拒否されるのですが。

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