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巫女とサキュバスと異世界と、そして人文知は役立たず  作者: 青い水


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ダンジョンでターコイズのビキニ

エルフたちも野望があるようです。

「ねえ、今日は休日だからクエストへ行こうよ!」エルフ2人が早速のおねだりだ。


「構成はどうする?」


「まず即死させられる敵は選ばないので、天使はいらない。レベルが上がったJK隊を前衛にして、私たちが後衛からシューティング&キャスティング。前衛の負傷はヒールする。」


「それだと火力が少し足りないな。メロを連れていこう。あいつ、しばらく火を吹いていないからいろいろ溜まっていそうだ。あと、ヒールは最後尾から俺がロールを投げるので、あまり意識しなくても良いぞ。JK隊は痛覚が鈍い。」


「こないだ新調した高級オートクチュール、クエストに着ていくのはイヤね。汚れちゃうもの。」


「どうする?軽装で行くか?」


「うん、現地でお楽しみに。」



「では討伐クエストを開始します。討伐対象はアルラウネ。これは種族名であって、実際にはいくつかのジョブに分かれて攻撃してきます。詳しい生態は知られていないので、各自十分に注意してください。良いですね、そこの水色軍団?」


「オッケー!」メロは水着でクルクル宙空で回っている。「この服装ならパンチラという概念がないから安心安全だね。」


「おそろいの水着だとチームって感じでテンションが上がるな。」エルフィーナもまんざらじゃなさそうだ。


「被弾したら左手を挙げてください。ヒールのロールを投げます。エルフのお二人がマンソンジュで大人買いしたやつです。100個以上ありますから。」


「矢とMP回復剤も十分にある?」フェリシアがいちおう確認する。


「はい、これもおふたりがコストも顧みずに爆買いしましたからね。」


「良かった。安心できる。」二人に皮肉は通じないようだ。



 アルラウネは植物系モンスターだが、実態は人型と言っても良いだろう。物理アタッカーと後衛のキャスターのパーティーで攻撃してくる。


「会敵しました。戦闘を開始します。」JK部隊が抜刀して敵に迫る。後衛のシューターが矢を放ち、メロが炎のブレスを吐いた。勝負は2分で決まった。


挿絵(By みてみん)



「案外あっけなかったわね。」エルフィーナが矢を回収しながら言った。放った矢は回収する方針に変わったようだ。戦国時代や百年戦争でも矢は回収していたのだろうか?まあ、ふつうに考えれば戦死者からあれこれ剥がす商売はあっただろうな。


「雌だったからちっとも吸えなかった。」メロは少し不満のようだ。


「あの...」JK2号が手を挙げた。「脇腹を槍で刺されました。」


「よし、ヒールだ。」俺はヒール・ロールを投げて治療した。


「アルラウネってどんな素材を落とすの?」JK1号が尋ねた。


「ふつうは種と花弁だ。薬品の材料になる。」


「たいした儲けにはなりませんね。」JK2号は落胆したようだ。


「そうでもないぞ。たまに高額で取引されるレアな種を落とすことがある。それは王都の老人たちの垂涎の品で、衰えていた精....うっ!」俺は背中にメロの蹴りを受けた。何だよ、サキュバスのくせにカマトトぶってんじゃないよ。


「私たちは今日の稼ぎでステージ衣装を揃える。」エルフィーナが変な宣言を口にした。「ステージのあとのチェキタイム、あれは美味しい。参戦しないわけにはいかない。」


「翡翠さんなんてウハウハでしたよ。」フェリシアが羨ましそうに言った。


 おい、待て。あの翡翠さんがチェキでウハウハ?そんなわけあるか!


「なあ、翡翠さんもチェキ撮ってるのか?」


「ええ、いつも列が抽選になって、ワンステージで30人は捌いていますよ。」エルフィーナが羨ましそうに目をしばたたいた。


 俺が知らないうちにコンカフェの状況は変化しているようだ。「人は変わって行くものだろ?」えーと、誰の台詞だったっけ?


「次、来ます。前より部隊が大きい!」JK部隊は抜刀して飛び込んでいった。大型が1体、物理系の配下が3体の配置だ。


「このぉっ!」メロが炎を吐く。



挿絵(By みてみん)



 配下はすべて倒れた。しかし背後に控えるマザーらしいのが妙な動きを始めた。花粉を飛ばすようだ。これはひょっとして致死性?メロが闇魔法を放ち、エルフたちが矢を射た。前衛のJKたちはそれぞれの得物で斬りかかった。俺は目を閉じ口と鼻を覆った。俺が倒れればリヴァイヴのロールを使える者がいない。


挿絵(By みてみん)


「あっ!」JK2号が崩れ落ちた。花粉を吸ったようだ。アルラウネマザーは切り刻まれ、山嵐のように矢が刺さり、絶命した。


挿絵(By みてみん)


「待ってろ!リヴァイヴ!」俺は魔法が使えないが、気分を盛り上げるために呪文を唱えてからリヴァイヴ・ロール(300ゴールド)を投げた。


「ありがとう、プリモ。」起き上がったJK2号は満面の笑みで俺の手を取った。やばい、かわいい。命を at stake 何だっけ、命を賭した女のかわいさは2割増しだ。JK2号、そろそろ固有名を付けてやらなければ。


 戦死者が出たので、ここでいったん休憩のキャンプだ。おやつを食べて、装備を確認し、俺はマザーアルラウネの解体に取りかかった。慎重に作業を進めないと毒果粉の袋を切り裂いてしまう。


「ねえ、プリモ、私たち戦闘を重ねてレベルがかなり上がったみたいなの。一度マンソンジュで測定してもらえないかな?」JK3号が切り出した。そうか、こいつらの潜在能力は謎のままだ。天水美夜が作り出したJKという名の魔物、どう化けるか誰も知らない。


「そうだな。あそこは測定して適性ありとなるとロールをお買い上げのシステムだから、きょうは稼げるだけ稼ごう。」


「私たちもレベルが上がったんじゃないかな?」それを聞いてエルフたちも興味を抱いた。すごい散財を強いられる未来が見える。


 冒険者、剣と魔法の実力でのし上がる、一見すると華やかな世界のようだが、実際は過酷な経済格差の世界でもある。装備の違いが火力と耐久力とほぼ比例しているので、個人の裸の能力より支払えるゴールドがものを言う。そういう意味では、こいつら、破格の存在かも知れない。


挿絵(By みてみん)



「じゃあ出発だ。気を引き締めて行くぞ!」俺は戦闘に参加できないので、司令官として振る舞うことにしている。司令官にして回収係とアイテム係。良いんだ、世間の評判なんて。俺はこれでしっかりパーティーに寄与しているんだ。


「この辺から周囲の色が変わってきたね。」メロがパタパタと斥候に出て報告した。


「敵の種類が変わるのかも知れない。みんな慎重にな。」


「あっ!」JK4号が指差す先に巨大な植物系モンスターがいた。巨大な食虫植物のような、たくさんの触手と溢れ出す粘液、あきらかにヤバいやつだ。


挿絵(By みてみん)


「みんな気をつけろ!メロ、植物なので性別があるかわからないが、とりあえず精気を吸え。エルフ隊は火の矢を使え。JK隊はその場で防御態勢で待機。」司令官は賢明な指示を出した。万が一に備えて手にはリヴァイヴのロールを握る。


「うぇ~、ダメだ。気持ち悪い!」メロが精気のゲロを煙のように吐いた。


「矢は当たってるけど、火はすぐに消えちゃう。身体が湿ってるからかな。」エルフもお手上げのようだ。


「作戦変更!メロは闇魔法、エルフは風魔法。JK隊は突撃だ。」


 闇魔法と風魔法はそれなりに効果があったようだ。敵の動きが鈍くなってきた。JK隊の斬撃はヌメヌメした皮膚によってあまり効かない。ただ片手斧は電撃属性を伴って触手を何本か切り落とした。そしてアタランタを尊敬するJK4号の槍は、大きく開いたモンスターの口の中にかなりのダメージを与えたようだ。


「よし、JK隊はいったん下がれ。メロ、炎のブレスを最大出力で。」



挿絵(By みてみん)


 すごい臭気のガスを発してモンスターの表皮を覆っていた粘膜が蒸発し、その下の木材部分が炎を上げて燃えだした。


「やったわ!」メロはエネルギー切れでその場に座り込んだ。


「メロ、ご褒美だ。少し吸って良いぞ。」俺は胸をはだけてメロに近づいた。


「胸から吸うんじゃないんだよ...」メロは俺を抱きしめて口をふさいだ。唇で。


メロが大活躍だったけれど、ご褒美で失ったものも大きかったような。え?失ったの?それとも手に入れたの?

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