コンカフェがフル稼働
王都に凱旋帰還です。コンカフェを盛り上げよう!
王都に戻る前に市場に寄って、上級学校の寮に入ることになったモフ子を同伴させた。王都に着いたら、筆記用具やバッグ、ノートや辞書など、学校生活に必要なものを買ってあげよう。何と言っても俺は、モフ子のたったひとりの「お兄ちゃん」だからな。
「お兄ちゃん、王都ってどんなところ?」
「大きな町だよ。王様とお姫様が住む王宮というお城もある。いつか見物に行こうな。」
「うん、楽しみ!」モフ子は満面の笑みを浮かべた。
「ねえ、プリモ、私たちもキャストとして接客したい。」JK1号が訊いてきた。
「ああ、店に着いたらエラに相談してみよう。たぶんOKだと思うぞ。」
「あら、お帰りなさい。クエスト、どうだった?」エラが出迎えた。
「この通りだ。」エミリーが自慢げにアイテムボックスを見せた。
「あら、私が一緒だったらウィンクで値引きさせたのに。」
「ウィンクすれば値引きになるのか。今度やってみる。」エミリーは本気のようだ。
「俺たちが留守の間、店はどうだった?」
「順調よ。翡翠さんの分身が大活躍してくれたわ。天使目当ての昇天客はがっかりしていたけど。」
「西部女目当ての客はどうだった?がっかりしていただろう。」
「そ、そうね。たぶん...」
「エラさん、私たち...」JK1号が1号らしく代表して言葉を発した。「私たち、今回のクエストで絆を深めました。腕や足を切り落とされても支え合って戦いました。この絆を武器にステージに立ちたい。エラさん、私たちをキャストにしてください。」
天水美夜によって作り出されたモブのJKだった4人が、今はすっかりキャラを確立してエラに迫っている。「腕や足を切り落とされても」という強烈な言葉を用いて築き上げた絆の深さをアピールしている。素晴らしい成長だ。
「ええ、良いわよ。その目を見ればわかるわ。あなたたちの本気が伝わってくる。」
「ねえ、エラ、私もステージに立ちたい。」メロがパタパタと飛んできた。
「屋内で火吹き芸はやめなさい。火事になるから。」
「お店が開く前に、私たちちょっと買い物に行ってきます。キャストになったのでその衣装を。」JKサービス隊は駆け足で商店街へ向かった。
「ステージが華やかになりそうね。」エラは駆けて行くJKを見送りながら満足そうに呟いた。
店の中で翡翠さんが分身たちにテキパキ指示を出しながら開店準備をしていた。留守中はすっかり負担をかけてしまった。何かお土産を持ってくるべきだったな。こういう気が利かない性分も誠意と関係しているのだろう。せめて留守を守ったみんなに感謝を伝えておこう。
「翡翠さん、留守中すっかり世話になった。ありがとう。」
「いえ、仕事ですから当然です。クエストは成功したようですね。さっきエミリーさんが大喜びでみんなにアイテムボックスを見せて回っていました。」
「ああ、JK4人組の成長が著しくて、ずいぶんと助けられた。攻撃力や耐久力も上がったみたいだ。」
「そうですか。私もファンサービス力が上がったんですよ。ふふふ。」翡翠さんは謎の笑いとともにバックヤードに消えた。
「やあ、エルフィーナとフェリシア、留守中どうもありがとう。」
「私たちもクエストに行きたかったな。」
「悪い。今回はエミリー主催なので、シューターだらけのパーティーにするわけにはいかなかったんだ。」
「そういえばうちの店ってシューターだらけね。」
「そうなんだ。だからパーティーを組むときは順番ってことで。」
「そういえば私たち、風魔法の他にエルフィーナがヒール、私がキュアを使えるんだった。まだ実戦で使ったことない。忘れるところだった。」
「回復と風魔法が使えるシューター、かなりお得なメンバーよね。」エルフィーナが胸を張った。
「わかった。次は是非頼む。」
店が開いた。今日から2階席も解放してフル営業だ。客が次々と来店し、メロと翡翠分身がてきぱきと席に案内している。天使2人は、久しぶりの登場ということで、席まで客を昇天移動の特別サービスを提供している。ああ、タダなんてもったいない。俺なら20ゴールドぐらいチップを渡すぞ...ってみんな渡しているじゃないか、チップを。それも、他の客と張り合うようにチップの額がどんどんつり上がっている。天使は物欲がないのに...って、2人ともめっちゃ喜んでいるぞ。チップで膨れ上がったポケットをポンポン叩いて喜んでいる。
ステージの用意ができたようだ。スポットライトが登場するキャストを待ち受ける。拍手と歓声が聞こえる。誰だろう、きょうのステージは?
「みなさん、こんばんは。翡翠です。つたない歌ですが聴いてください。『水も風も、森も花も』。」歓声と拍手が鳴り響き、そしてスポットライトを残してステージの照明が落とされると、翡翠が静かに歌い始めた。
「流れる水も、そよぐ風も、空の恵みが育む森も、命をつなぐ花も、すべては星屑の欠片、そう分子でできてる、奇跡は原子を結びつけ、色とりどりの分子を産んだ♩」
翡翠さんの透明な歌声が響き、観客は目を閉じて歌の世界に引き込まれる。翡翠さんが言ってた「ファンサービス力が上がった」というのはこれだったのか。俺は感動で身体が熱くなった。翡翠さんは短いMCを挟みながら5曲を歌いきった。割れんばかりの拍手。客はみんな感動を伝え合っていた。
翡翠さんが退場してスポットライトが消え、ステージが暗転した。そして、3分ほどの間をおいて色とりどりの電飾が煌めき、次のステージが始まった。
「こんばんは、皆さん、私たちのデビュー・ステージにようこそ!」
おそろいのユニフォームに身を包んだJK部隊だ。完全にアイドルになっている。いつ練習したんだ?歌もダンスも寸分の隙がない。完璧なパフォーマンスだ。ミナルナに匹敵する完成度だ。
「いいなあ。」メロがうらやましそうに見ている。
「エルフの2人とユニット組んでみる?あんたも耳がそこそこ長いからウケるかもよ。」エラがニコニコしながら煽った。
「踊ってみたいなあ。」メロはパタパタと舞って宙返りをした。迂闊にもパンツが丸見えになった。ダメだ。ステージには出せない。
まさかの翡翠さんステージ。前にも分身たちとバンドで出演していましたが、今度はソロで弾き語りです。引き出しの多い女、素敵です。




