北欧の女神にして戦乙女フレイヤ召喚
ガトリングガン、かっこいい。
準備やら金策やらで時間がかかったが、ようやく魔王城の攻略を開始できる。まずエミリーの新しい武器を受け取り、それから1週間限定の仲間を召喚する。それにしても、二日間の買物ツアーで持ち物が増えた。これを抱えて魔王城攻略はつらいな。アイテムボックスのような便利なものはないのか?道具屋で訊いてみるか。
「いらっしゃいませ。一昨日は名乗りませんでしたが、道具屋パキスタンへようこそ。」
「え?パキスタン?なんで?」
「店名がすべてフランス語だと読者の反発を受けるのではないかと...」
「誰が考えたって?」
「コホン、そんなことはともかく、パキスタンで何をお求めで?」
「アイテムボックスだ。インベントリーが無限になる...」
「お客様、軽々しく無限などと言ってもらっては困ります。」
「あ、そうなの?」
「果てはないけど無限ではない、それが宇宙でございます。」
「あー、それめんどくさいやつだ。やめて、そういうの。」
「で、アイテムボックスでございますね。もちろん無限ではございませんし、お値段によってインベントリー・リミットも異なっております。どのレベルのものが必要なのでしょう?」
「逆に訊くが、値段と収納リミットを先に教えてくれ。」
「はい、最も安価なものですと、収納物の大中小でそれぞれ10、50、500です。以後、価格が倍になるにつけ、20、100、1000というように上がってゆきます。」
「なるほど。ちょっと仲間と相談するので待っていてくれ。」
「なあ、エラ、どうする?」
「新メンバーを加えると、私たちは全員で10人になるから、ある程度のサイズは必要ね。とくに弾丸や矢はインベントリーを圧迫するわ。」
「エミリーのガトリングガン、使う銃弾が半端ないからな。80,400,4000のやつにするか?」
「価格によるわよ。」
「わかった。」
「お決まりでございますか?」
「うむ、80,400,4000のやつはいくらだ?」
「1万ゴールドでございます。」
「あら、もう少しお安くならないかしら。」エラの目が輝いた。
「そうでございますね...8000ゴールドなら。」
「よし、それをもらおう。」俺はすぐさま金貨を積み上げた。
次は鍛冶屋、えーと、ネズミ、えーと、スーリーだ。ガトリングガンを引き取りに行かないと。
「たのもう!」ミナルナの時代劇風挨拶。
「ああ、お客様、徹夜で作業しまして、今ちょうど組み上がったところです。」
「おお、これはすばらしい!」エミリーがさっそく手にして構えてみる。「しっくりくるぞ、これは。」
「ありがとう、スーリーの旦那。魔王城で何か珍しい素材が手に入ったら持ってきてやるよ。」エミリーは心底この武器が気に入ったようだ。
いよいよ魔王城へ乗り込むわけだが、その前に1週間枠の召喚だ。召喚する相手は決まっている。北欧神話の戦乙女フレイヤだ。
「人文知を極めたプリモが召喚する。北欧の女神にして戦乙女フレイヤよ、顕現せよ!」
「私を呼んだのはおまえか?」
「異世界へようこそ、フレイヤ。間近で見ると驚くばかりの美貌と迫力!」
「世辞は良い。敵はどこにいる?敵は誰だ?」
「敵は魔王城にいる魔王だ。」
「魔王だと?それはなかなか楽しめそうな相手じゃないか。」
「ここにいる仲間におまえを加えた10名で討伐に行く。何か必要なものはあるか?」
「いや、この装備で十分だ。私にはセイズという魂の織術がある。運命を編み直すことができる。」
「その力はこの世界では発動しないと思われます。」翡翠がしばし考えてから口を開いた。
「なぜだ?力が衰えた実感はないぞ。」
「この世界はあなたがいた世界と、刻の進み方と運命の組紐の構造が異なっているのです。私もいくつか能力を失いました。」
「そうか。なら仕方がない。資金がかかるが戦力強化のためだ。魔法屋マンソンジュへ行こう。」
「あら、いらっしゃい。新しいお仲間かしら?」
「フレイヤという。ここでは魔法のロールを売っているのか?」
「そうです。でも売るのは適性がある魔法だけですよ。測定なさいますか?」
「うむ、頼む。」フレイヤは測定器の水晶玉に手を置いた。
「まあ.....電撃と治癒の適性があります。習得ロールと使い切りロール、どちらになさいます?」
「習得にしてください。」エラが背後から答えた。
「そうしますと、電撃と治癒の習得ロールで4000ゴールドになります。」
手痛い出費となったが、パーティのタンクとして活躍してもらわなければならないので、必要なスキルだった。
フレイヤは世界の女神の中でも1,2位を争う美形です。次回は鎧を外した姿をお見せしましょう。




