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酒場の翡翠

金策もだいたい終わり、金が集まりました。

「ただいまー!たんまり稼いできたよ!」メロが鼻息荒く宿屋に飛び込んできた。


「思わぬ副収入もあったのよ。」そのあとでエラが自信満々で入ってきた。


「ほう、すごいな。10000ゴールドもあるじゃないか。」俺は満面の笑みで金貨を受け取った。


「ラスボスを捕獲してギルドへ持ち込んだら、すごく利用価値があるということで報奨金が大幅アップしちゃった。なんでも見世物にして町の観光資源にするんだって。」


「ほう、抜け目ないな。」


「これで本来のクエストに行けるかしら。」


「まだ防具屋と鍛冶屋、それから何か利用できそうな店もあるかもしれない。今日の収入は、サキュバスチームが1万、エルフチームが3500、くのいちチームが5000、エミリー&翡翠が7000、そして微力ながら本を売った俺の稼ぎ1000、合わせて26500ゴールドだ。みんなよく頑張ってくれた。明日の店巡りだが、購買係を決めておきたい。また資金不足になったら、いつまでたっても本クエストに出撃できないからな。」俺はエルフチームをちらちら見ながら倹約案を提案した。


「誰に財布を預けるの?」エラが自分以外は選ばせないぞという圧を込めて俺を見た。


「おまえだ、エラ、コンカフェのレジを任せていた実績もある。」


「わかったわ、任せて。」


 昨日の買物でエラはウィップ、メロはダガーを買っただけで、これはむしろ装飾的な武器なのでそれほど高いものではなかった。こいつらは人間世界に紛れ込んで数百年生きてきたので貨幣経済の勘所がわかっている。


「では、これで解散にして、明日の朝食で集合することにしよう。」



 色々と忙しい1日だったので、俺は宿屋を出て居酒屋へ行った。独り飲みで1日をリセットだ。


挿絵(By みてみん)


「いらっしゃい。何を飲まれますか?」


「え...?まさかね?でも似てる。そして声も同じ...?」


「どうなさったの?お口をあんぐりなさって。」


「だ、だって...翡翠さん?」


「あら、お客様のお知り合いと似てますか、私?」


「はい。似てると言うより本人です。翡翠さんなんでしょ?」」


「そう思われるのでしたらそう思ってくださってかまいません。どうぞ翡翠とお呼びください。私、それでもかまいません、今は。」そう言って女性スタッフは笑顔を見せた。


「わかった。では強い蒸留酒をひとつ頼む。飲んだらすぐ帰るので、はい、これがお代だ。おつりはチップにとっておいてくれ。」


 俺は酒を一気に飲み干すと宿屋へ急行し、翡翠さんの部屋の扉を叩いた。



「翡翠さん、悪い、プリモだ!」


「まあ、なんでしょう?」翡翠さんは笑顔で出てきた。まったく呼吸に乱れはない。


「翡翠さん、さっきまで酒場にいたよな?」


「いいえ、ずっとここにいましたよ。」


「さっき酒場で見たんだ、翡翠さんがそこで働いていたのを。」


「まあ、そんなところで。」


「あれは翡翠さんではなかったのか?」


「私です、術を構築したのは。まだ未熟なので、よく把握できていませんでした。」


「術...だと?」


「ええ、式神の原理を用いて自らの分身を作り出す術式を構築してみました。」


「そ、そんなことができるのか?」


「できるのか、できないのか、まだ何とも言えないのですが。というのも、私は分身を把握して統御できるにいたってはいません。まだ分身とは呼べないレベルなんです。」


「分身に何かあったら、翡翠さんに影響はないのか?」


「それもまだよくわかりません。術の展開の詳細な実証実験はまだなので。」


「そうか。リスクが予想される実権は、あらかじめ俺に相談してくれ。」


「申し訳ありません。好奇心が先走りました。」


「いや、責めているわけじゃないんだ。出会ってしまって驚いただけだ。しかし、あれは驚くべき体験だった。術の精度が上がれば作戦に多大なる寄与を果たすことができる。翡翠さん、研究の今後の進捗について、何か変化があったら報告を頼む。」


「了解しました。きょうは、その...驚かせてしまってごめんなさい。」


「いや、良いんだ。不思議な体験、痛みがないならむしろご馳走だ。」



 翌朝、朝食の場にみんながそろい、クエスト準備のための買い物ツアーに出発だ。今回はエラが購買係で財布を握っているので、前回のような散財事件にはならないだろう。最初の目的地は防具屋だ。ここは気を緩めれば一財産持って行かれそうだ。



「いらっしゃいませ、愛と防具の店パシオンへ!」


 またこの町特有の妙な名前の店だ。Passion 「情熱」と言えば聞こえが良いが、「受難」や「受苦」でもある。痛い思いを耐え忍ぶ?ドM御用達の店なのか?


挿絵(By みてみん)


「はーい、皆さん、自分に合いそうな防具があったら私に報告してね。購入するかどうかはコスパを勘案して私が決定します。」エラが頼もしく財務省を演じている。


「前衛の方はどなたですか?」店主が愛想良く尋ねた。


「はーい!」ミナルナがユニゾンで声を上げた。


「うーん、あなたたちは回避特化型のユニットだから、防具は邪魔ね。護符を装備していれば大丈夫よ。ざっと見渡したところ、防具が必要そうな前衛は3人、巫女さんとガンマンと、後衛ですらない役立たずのあなた。ただ、巫女さんは霊的な加護で守られているので、物理的な防具と邪魔し合いそうだから装備しないほうが良いわね。ガンマンも、身体能力が極めて高いので、防具で耐久力を上げるより回避優先で考えたほうが良いわ。このキュイラスぐらいでちょうど良いと思う。で、あなた、戦闘力ゼロのただ飯食いのあなた。あなたはフルアーマーを付けるべきだけど、そうするともう動けなくなるのでみんなの邪魔ね。なので、死ぬときは死ぬという強い心で生きてちょうだい。」


 防具屋での支出は450ゴールドと俺の心のダメージ7000で済んだ。



翡翠さんが分身を練習してる?奥義「翡翠7体」とか、もうAIの処理が限界ですね。

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