最初の町、クエスト受注
最初の町は冒険者が集まる町だったようです。
「ここがプリモが異世界に来て初めて訪れた町なのね。」
「そうだけど、エラ、なんか顔変わってないか?」
「ああ、これはね、温泉でぶはーってやった影響でサキュバスのエロス精気が抜けたせいなの。少し補充したいわ。吸わせてくれる?」
「ダメに決まってるだろ!しばらくその清楚モードで暮らせ。」
「なんかしっくりこないのよね。顔だけじゃなくて、ほら、お胸も縮んじゃって。」エラはデコルテのあたりの服をつまんで引っ張った。
「だぁー、ほら、じゃねーよ!」
「もっと見たいなら...」
「今の顔に合わない台詞を吐くな。とりあえず宿を確保して、それからギルドへ行くぞ。」
「いらっしゃいませ...あらっ!あなた、あのときの....」
「ん?」
「角を出したおじさんと一緒だった人ですね?」
「はて、記憶にございませんが...」
「そんなわけないでしょう。だって私が驚いてビールを派手に服にぶちまけて、ブラウスが透け透けになったのをとても喜んで見ていたじゃありませんか!」
「とても喜んでなんかいませんでしたよ。」俺の答えはまるで、とてもは喜んでいなかったけれどかなり喜んではいた、みたいな含みのあるものになってしまった。日本語のこういうところが難しい。
「きょうは大勢でご宿泊ですか?」
「部屋は空いてるかな?9人だけど、シングル3つにツイン3つ。」翡翠とエミリーはまだ馴染んでいないので別室にしておこう。
「はい、大丈夫ですよ。空き部屋だらけで困っていたので助かります。」宿屋の娘の顔が明るくなった。
「荷物を置いたら冒険者ギルドへ行きたいんだけど、場所がわからない。」
「でしたら、この冒険者用タウンマップをどうぞ。この町は人気のダンジョンがあるので、冒険者さんがたくさんいらっしゃるのです。」
人気のダンジョンか。そういえばメフィストは勝手にここのダンジョンで金を稼いで全部悪魔財布に入れていたっけな。うん、クエストは期待できる。思えばダンジョンに入るの初めてだな。まあ前回の廃墟はダンジョンみたいなものだったが。
「たのもう!」ミナルナが17世紀人らしい言葉で受付に挨拶した。
「冒険者様ご一行ですか。クエストをお探しで?」
「はい。壁に貼ってある一般的なクエストではなく、高額報酬のクエストを探しています。私たち、だいたいみんなSランクなんです。」そう言ってミナルナはちらりと俺を見た。そういうところだよ、おまえら。心に針を刺すその視線。
「あ、私はまだ冒険者登録していないぞ。」エミリーが前に出た。
「ではこちらの書類に必要事項をお書きください。スキルは後で測定しますので空欄のままで。」
「エミリー・モリス...ジョブ...ガンマン...あれ?出身地とか年齢とかそういうのはいらないのか?」
「はい、冒険者にそういう背景は必要ありません。クエストをこなす実力だけが問われます。」
「お、良いねえ、気に入った。ワイルドウェストの流儀と同じだ。この世界、悪くない。」
「ではエミリー様、こちらの水晶玉に触れてしばらくそのままでいてください...........え?これはすばらしい!」受付嬢は測定値を見て驚き、そして喜んだ。
「エミリー様、文句なしのSランクです。フィジカルすべてSSS、射撃は測定不能、魔力量はゼロですが、魔法耐性がかなり高いようです。特に魅了や睡眠などのデバフはほぼ効果がありません。最強のガンファイターです。」
それを聞いてエミリーは鼻をぴくつかせ、当たり前だろう、みたいな顔をした。いや、わかりやすいけど頼りになる。
「で、クエストだが何かあるか?難易度と報酬がバカ高いやつ?」戦力にならない俺が唯一活躍できる交渉に出た。
「はい。難易度が高すぎてずいぶん前から放置されているクエストがあります。挑んだパーティーはすべて全滅、というかMIAですね。誰ひとり帰ってきませんから。」
「おお、ならばそれをクリアできれば名声が上がるな。」
「はい、それはもう。ですが、よろしいのですか?全滅する可能性が高いのですよ。」
「全滅する気はさらさらない。で、報酬はいくらだ?」
「10万ゴールド、そしてクエスト達成の条件は、魔王城の攻略です。東の山嶺にあった古城に魔族が住みつき、王を戴き強固な組織を作りました。この町にとって大きな脅威です。」
「なるほど、実にやりがいがあるクエストだ。よろしい、我がパーティーがそのクエストを引き受けよう。魔王の首を取って帰ってこよう。」
「ありがとうございます。こちらが依頼書です。ではご武運を。」
「ねえ、プリモ、気になっていたんだけど、クエストに出かける前に何の準備もしてこなかったわね。ふつうはいろいろアイテムを買い込んで行くものじゃなくって?」エラが的確な指摘をした。
「私たち、雑に扱われているのでしょうか?」エルフたちが口を尖らせた。いかん、女を雑に扱ってはいけない、これは女神が示した至上の原理だった。
「そ、そうだな。準備は大切だ。ここはダンジョンで有名な冒険者の町、きっと良い道具屋や薬屋があるはずだ。買えるだけ買って安全安心で快適な攻略にしよう。」俺は爽やかな笑顔でみんなを安心させた。
冒険者が集まるダンジョンの町には、冒険の準備のためのさまざまな店がある。武器屋、防具屋、道具屋の三点セットはもちろんのこと、魔法屋、鍛冶屋、占い師、さらには探索で使役する動物を売る店もある。俺たちは順番に回ることにした。
「いらっしゃい。武器をお探しかな?」武器屋の主人は武器屋らしからぬ穏やかな紳士だった。
「私たち、矢を補充したい。」エルフデュオが声を上げた。
「矢ですか。いろいろありますよ。どうぞお手にとってご覧ください。」
「いろいろな種類がありますね。これは?」
「それはアンデッドや悪魔系に効果が高い聖属性の矢です。属性付与に費用がかかるので少しお高い。1本10ゴールドです。」
「では40本ください。」エルフィーナは勝手に購入した。まあ良いだろう。
「こっちの水色のは?」
「それは氷属性の矢です。氷が弱点の魔物に効果があるのと、それとは無関係に敵を凍らせて動きを止めることができます。これも1本10ゴールドです。」
「ではこれも40本ください。」フェリシアも勝手に購入を決めた。これで800ゴールドだぞ。
「こっちの...」エルフィーナが火炎系と思われる矢に手を伸ばしかけたので俺は言葉をかけた。
「そんなに持って行けるのか?矢筒に入りきらないだろう?」
「あ、そうか。矢筒も買わないと。ご主人、矢筒は?」
「矢筒はこちらにございます。お客様にお似合いのかわいい矢筒もありますよ。」
ダメだ。もうエルフワールドだ。諦めよう。
「ねえプリモ。私も武器が欲しい。」清楚顔になったエラがニコニコしながら上目遣いでねだっている。顔と態度が似合わない。
「私もカワイイ武器が欲しい。」エラが言えばメロも言うでしょうよ。もう勝手にしろ。どうせおまえらの言う武器っておしゃれアイテムだろ。
超高難易度クエストを受注して、準備のために貯めたお金がポロポロ出て行く。リーダーは大変ですね。ところで、私事になりますが、抜歯後1日我慢したお酒を昨夜しこたま飲んだら...痛くはないけどほっぺたが腫れました。冷えピタはって書いています。




