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異世界で無一文、初期装備ゼロ

メフィストフェレスなんか召喚して大丈夫なんですかね?でも初期装備ゼロで無一文だから、溺れる者は悪魔にもすがる...

 ここが異世界か。草原に落ちてしまったな。そういえば初期装備を何かもらってくれば良かった。無一文じゃないか。しかも武器もないので狩りもできない。都合良く誰か助けてくれないかな。アニメだとだいたい誰かと出会いそうなものだが、周囲を見渡しても延々と広がる草地しかない。たまに灌木があるな。これはステップというやつか。野ウサギとかいるけど、火を起こす道具も皮を剥くナイフもない。これは初っぱなからピンチだ。異世界に放り出される前にもっと話を詰めておくべきだった。これが社畜とかサラリーマンなら、たぶん女神と商談を進めて、もらうものはしっかりもらったんだろうな。うう、現世の職業の社会的不適応性がこんなところで徒となるとは。


「おーい、女神様~!」今さら様を付けて呼んでも助けてはくれないか。そうだよな、あれだけ悪態付いたんだから。うーむ、どうする、俺?


 よし、ならばさっそくチートスキルの召喚だ。文化人たるもの、自然の中に投げ出されてしまっては何もできない。理系じゃないんだから。ということで町まで導いてくれる者。そして町でいろいろイベントを起こして、今後の生活の活路を開いてくれる者。誰かいないか?連れ出して導いてくれる者...、いたな、あいつだ。契約しなければならないけれど、どうせ1週間で消えるんだ。あっちから契約不履行ということになる。


 さて、召喚ってどうやるんだ?やり方聞いてこなかったぞ。妙なプライドが邪魔して潔く質問できないというのも人文知の弱点だな。いや、人文知のじゃなくて俺の弱点だ。くっそー、どうする?初っぱなからこんなに何度も詰みそうになるなんて、そのうち本当に詰んでしまうぞ。


 たしか召喚は、「~の名において召喚する、出でよ、**!」みたいな感じだったよな。う、待てよ!~の名において命じるって、俺の名前まだ決まってないじゃないか。どうする?作者名だと据わりが悪いよな。ローブルーの名において命じる。いや、ないでしょ、これは。本名は、ダメ、絶対!ううう、困った。ピンチだ。ん?待てよ、ピンチをチャンスに変えるって良い感じじゃね?名前はピンチャン!アホか!そんな名前の主人公がいるか!ペットのペンギンみたいじゃないか!ピンダロス...とりあえずピンから離れようか。1週間の王、ヴォッヘンケーニッヒ...はい、長すぎます。ヴォッヘ...いや「ヘ」で終わる名前はちょっと。しょっちゅう「屁」に誤変換されるし。俺がこの世界で一番ということで、プリムス、いやもっと語尾を変えてプリモ、これは可愛らしくて良いかもね。よし、俺は今からプリモだ。


「プリモの名において召喚する、出でよ、メフィストフェレス!」


############ん?何も出ないぞ。そうか名前だけじゃダメなのか。二つ名が必要なんだ、たぶん...


「人文知を極めたプリモの名において召喚する。出でよ、メフィストフェレス!」


挿絵(By みてみん)


「お呼びですか?」


わ、出た!メフィストフェレスだ。悪魔だけにすごいオーラだな。


「お、おう。我が呼びかけに応じてよくぞ顕現してくれた。」


「失礼ですが、あなたは本当に人文知を極めた者なのですか?」


「え?ああそうだけど、何か問題が?」


「かつて私と契約したファウスト博士とはあまりにも違う。ファウスト博士は、哲学、自然学、医学、そして神学まですべて極めて、それでこれ以上学ぶことがない退屈から逃れ出るために私を召喚しました。でも....失礼ながらあなたの知識は穴だらけで、まだまだ学ぶことがたくさんあります。とても人文知を極めたとは言えないでしょう。」


「わ、わかっているよ、そ、そんなこと。でも仕方がないだろ。そういう二つ名がないと召喚できないみたいだからさ。」


「まあ良いでしょう。召喚された以上、契約を結んであなたに仕えますよ。あなたの血でここにサインしてください。血は特別なジュースですから。」


「お、おう、契約はするけど、これは双務的な契約だね?君が契約を完全に履行できない場合は、君の負債になる。違約金を払ってもらうが、何を差し出せるんだい?」


「私のシャッテンディーナーを差し上げましょう。英語風に言えばシャドウサーヴァントですが、この物語の作者は何でも英語にするのを潔くないとしているらしいので、シャッテンディーナーです。これは私がいないときに私の代わりに働く奉仕者だと思ってください。


「よし、ならばそれを渡さなくて済むように励みたまえ。」


 俺は心の中でガッツポーズだ。なぜならメフィストは必ず契約違反を犯す。1週間経過したら責任を放棄して消える定めだからだ。よし、この調子で召喚した連中からいろいろ巻き上げてやろう。


「で、私への命令は何なので?」メフィストフェレスは慇懃無礼なレヴェレンスとともに尋ねた。


挿絵(By みてみん)


「俺を近くの町まで連れて行くこと。そして町で俺の新しい生活基盤を見つけること。」


「かしこまりました。では私の手を取ってください。」


 俺が手を取ると風が巻き起こり、身体が浮かび上がった。メフィストは俺を脇に抱え、左手でロープを握っている。上を見ると宙に浮かぶ球体があった。気球だ。悪魔のくせに文明の利器に頼るのか。ああ、そういえばファウストも契約のあとで研究室を出て広い世界へ旅立つときに熱気球のような仕組みで飛び出したっけな。


挿絵(By みてみん)


 地上の景色はみるみるうちに小さくなり、俺たちは熱気球のゴンドラに収まった。メフィストは時折フーッと熱い吐息を気球に吹き込み高度を保っている。風に乗って気球はゆっくりと進み、森を越え、湖を越え、やがて高度を下げ始めた。眼下に町が広がる。無事に着陸できるのか?なにしろ俺は熱気球に乗るなんて生まれて初めてだからな。メフィストは気球に向かって冷気と熱気を交互に吹き込み手際よく町の入り口に着陸した。そしてメフィストがマントを翻すと、気球はみるみるうちに縮んでマントの中に収まってしまった。ああ、これが異世界ものに登場するアイテムボックスとかいう都合の良い仕組みか。


「着きましたよ、旦那。」だんだんしゃべり方が雑になってきたな。まあ、悪魔に礼儀を求めても無駄か。


「良し、では町に入るか。」


「では私も悪目立ちしないよう、人間の姿になりましょう。教会の坊主にあれこれされたら面倒ですからな。」メフィストはマントを翻すと、胡散臭いオヤジに姿を変えた。


 町の入り口で門番に呼び止められた。


「止まれ!この町には何の用できた?」


「はい、私たちは旅の商人です。いろいろと珍しいものを扱っていましてね、例えばほら...」メフィストが握った手を広げると、赤や黄色や青のガラス玉が出てきた。「綺麗でしょ?」


 ガラス玉を見た門番は目がうっとりとなって魅了された。ちょろいな。


「では参りましょう。」メフィストはさっさと町の中に入っていった。


異世界の町、何が起こるのでしょう?えーと、書き始めはわりと楽に書けるんですけど、いつもの癖で何も考えずに書き進めてしまうので、ときどき展開の出口が見えなくなることがあるんですよ。まあ、お酒を飲んでいると何か思いついちゃいますけど。

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