御巫翡翠、理不尽に転生させられてこの世界に参上
はい、皆さん大好きな翡翠さん登場です。この世界でも急々如律令!
コンカフェが開店して3日経った。客足は安定しており、今のところ何のトラブルもない。サキュバスやエルフの姿も、「コスプレ・コンカフェ」というコンセプトのおかげで、誰も不審に思う人間はいない。順調だ。キャストへは日払いで報酬を渡している。水商売ではなくてエンタメであるという意味を込めて、給料ではなくギャランティー、すなわちギャラという名目で支払っている。これにはアイドル双子も大満足のようで、ときどき町の仕立屋に衣装を作りに行ってるらしい。そんなとき、奇妙な来客があった。
「こんにちは。こちらがプリモさんのお店ですか?」
え?何で?呼んだ覚えはないよ。自分が作ったキャラの中で推しナンバーワンの御巫翡翠さんではないか。なぜこの時空に?
「はい、そうですが。あのお...御巫翡翠さんですか?」
「はい。少々困った事態になりました。」
「この時空にいるということですか?」
「ええ、理不尽に転生させられました。」
「させられた...ということは、あの女神にですか?」
「そうです。その理由がいい加減で、とても納得できるものではなくて...問い詰めてもヘラヘラ笑って、起こってしまったことは巻き戻せないと...」
何と言うことだ!俺のときと同じじゃないか。寄りによって翡翠さんを遊び半分でこの世界に転生させるなんて...ううう、許すまじ、ヘラヘラ女神!
「どんな理由を言ったのですか、その女神?」
「私がプリモさんの推しナンバーワンなので、無理矢理転生させてしまって少し申し訳ないと思っているので、慰めるために差し出したとか....」
「え?それではまるで俺のせいみたいじゃないですか!」
「女神様としてはプリモさんへの善意のつもりなのでしょうが...私の人権は...いや、女神様にとってフィクションのキャラクターに人権なんてないのでしょうね...」困惑した笑顔で翡翠さんはそう言った。
「19世紀末のロンドンに留学中でしたよね?たしか哲学的自然学。」
「はい、大気中のさまざまな原子を集積して降り注がせる術法の確立をテーマに研究しておりました。」
「中断を余儀なくされて困っておられるのでは?」
「ある意味ではそうですが、ここのような異世界では新たな発見が期待できるということもあります。」
「それで、ここに来られたということは...」
「女神様に言われたのです。転生したらプリモさんを頼れと。」
うう、女神の奴め、気まずい再会を仕込みやがって。だが、俺を頼ってここまで来てくれたんだ。誠心誠意お世話をしないと。とりあえず店に入ってもらおう。巫女姿は人目を引く。
「とりあえず店に入りましょう。立ち話もあれだし、人目もありますから。」
「あら、新しい子を連れてきたの?」エラが嬉しそうに近づいて来た。
「強い妖気が感じられます。」翡翠が一歩退いて警戒した。
「あ、この人は大丈夫、仲間なんだ。」危ない、調伏されてしまうところだった。
「ごめんなさいね。私、サキュバスなの。でも悪いことはしないから仲良くしてちょうだい。」屈託ない笑顔でエラは小首をかしげた。
「そうでしたか。こちらも反射的に反応してしまい失礼しました。」翡翠は素直に頭を下げた。
「この世界にはプリモに呼ばれたのかしら?」
「いえ、実は女神様によって異世界転生させられたのです。」
「あらまあ、それは大変だったわね。でもここに来たのならもう大丈夫よ。仲間もたくさんいるし、プリモが養ってくれるから。」エラは俺を指差してウィンクした。
「あれー?何か私たちと同じ和風テイストの子がいる。」ミナとルナが現れた。
「あら、こんにちは。御巫翡翠と申します。」
「私たちは金竜疾風のくノ一、ミナとルナ、2人合わせてミナルナよ。」ミナルナはユニゾンで自己紹介してアイドルポーズを決めた。
「まだいっぱい仲間がいるけど、とりあえずエラ、翡翠さんを部屋まで案内してあげて。」
「わかったわ。さあ翡翠さん、新しいお家よ。お部屋へ行きましょう。」
人数が増えた。翡翠さんには申し訳ないけど、これでますます状況が好転した。あのビジュアルで、しかも異国の巫女という出で立ち、これは人気が出ないはずがない。そして、ふふふ、この店で俺だけが知っている翡翠さんの圧倒的な戦闘力。魔物が押し寄せてきても、急々如律令だ。これで枕を高くして眠れる。めでたい。シャンパンでも開けるか。
「今誰かいらっしゃいました?」アタランタが来た。こいつのコスチュームも考えてやらないと。古代ギリシャの森の狩人ではいまいち通じない。どうしたものか?
「なあ、アタランタ、ここはコスチュームがコンセプトの店なんだ。何か着たいコスチュームはあるか?」
「そうですね。狩人なので弓矢と槍...」
「それは武器であって衣装ではないだろう?」
「でも私のアイデンティティーです。」
「そうか。まあそういうことなら用意するか。一部の客には刺さるだろう。弓矢だけに。だが槍はなしだ。長くて邪魔だし、危ない。弓矢だけで良いな?」
「はい、了解いたしました。でも万が一の戦に備えて、私室に槍は常備させてください。」
「いいだろう。万が一の戦、なければないにこしたことはないが、ここは異世界、何があるかわからんからな。」
キャラが増えましたね。ここ、元は宿屋だったというけれど、そんなにたくさん部屋があるのかしら?私事ですが、きょうは午後に抜歯があります。抜歯した夜はお酒が飲めません。お酒を飲まないと眠くなりません、たぶん。なので歯の抜けたような文章で続きを書くことになるでしょう。




