コンカフェ開店、アタランタ登場
コンカフェが開店します。苦労してスタッフを集めましたからね、成功してもらわないと。
いよいよ開店日だ。今日は初日なのでキャストは全員入ってもらおう。エルフの2人は、人間世界に慣れていないだろうから、まずはカウンターに立ってもらって店の雰囲気や流れを学んでもらおう。2人で同じポジションを任されれば、古い馴染みの仲なので安心するだろう。そういえば、古い馴染みと言ったけれど、あいつらは何歳なのだろう?まあ訊かないほうがお互いのためかも知れない。さっき訊くまで知らなかったが、名前は金髪がエルフィーナ、実にエルフらしい、黒髪がフェリシア、お客を幸福にしてくれそうな名前だ。
エラは女主人なので、会計のキャッシャーと入り口での応対、席への誘導を担当してもらう。創業400年の老舗サキュバスなので、堂々たるものである。たぶんお会計のときに少しだけ吸ってしまうかも知れない。
メロは、少し心配だが、ボックス席で接客だ。幼く見えるがサキュバスだ。それも、見た目に反して修羅場をくぐり抜けてきている。いたいけなメロを見て、悪いホストに騙されて貢がされてきた過去を持つ女だと誰が想像するだろう。
きょうのステージは、ミナルナとサロメで決まりだ。絶対に盛り上がる。ステージに上がっていないときはボックス席で接客をしてもらう。
思った通り、客足が絶えなかった。キャストはフル動員で店を回した。エラとメロは営業しながら少し吸っているせいか、エロス濃度が上がり、オーラがダダ漏れになった。だが客はそれを見て大喜びだ。客は高い酒をどんどん注文してくれた。さすが王都、景気の良い客が多い。キャストにもどんどんおごる。幸い、サキュバスもエルフもアルコール耐性が非常に高い。飲んでも飲んでもまったく酔わない。店の売り上げだけが上がって行く。
俺は店をエラに任せて外に出た。この調子で店が繁盛すればみんな幸せだ。だがここは異世界。現実世界にはない脅威もある。現にメロがレッサーデーモンに襲われた。現在の体制では防衛力に不安が残る。7日間ルールの召喚枠を使って防衛力を強化しなければならない。さて誰を呼ぼうか?ヘラクレスのようなごつい奴を呼ぶとコンカフェの雰囲気をぶち壊すことになる。ここはやはり女性だ。接客も担当できる美しい女性が良い。強くで美人...AIがない世界では自分の知識だけが頼りだ。考えるんだ、俺、人文知を極めた俺...。アルテミス...ダメだ、接客なんかするわけがない。客を鹿に変えてしまいそうだ。王都に鹿が大量発生...ああ、恐ろしい。だいたいギリシャ神話の女神は危険物だらけだ。呼んだら死ぬ。愛と美の女神アフロディーテだっていろいろやらかしているからな。うーむ、7日間ルールの召喚だから、多少間違っても1週間耐えれば良いか。良し、決めた。ギリシャ神話でそれほどポピュラーではないが、アタランタ!
アルカディアの王女として生まれたが、息子を期待していた父によって森に捨てられ、子熊を亡くした雌熊によって育てられた野生児。弓と槍で獣を狩る俊足のハンター。アルゴス号の冒険にも参加し、カリュドーンのイノシシ狩りでは最初の矢を放った英雄として称えられている。ただ、基本的に男嫌いというのは気になるところだが、そこは仕事として割り切ってもらおう。
「人文知を極めしプリモが召喚する、アルカディアの王女にして俊足のハンター、アタランタよ、ここに顕現せよ!」
「あら、ここはどこかしら?私は森で狩りをしていたはずなのに、弓も槍もないわ。」
「初めまして。武器は危険なので置いてきてもらいました。私はプリモ、あなたを召喚した者です。」
「召喚して私に何をさせようと?」
「そこにおしゃれな店があるでしょ?そこで1週間の短期アルバイトをしていただきたいのです。そして、もし魔物が襲ってくるようなことがあれば、戦って撃退して欲しい。あなたを美しい英雄と見込んでのお願いです。武器は中に用意してあります。」
「ここは魔物が出る世界なのですか?」
「はい、すでに悪魔が襲ってきましたが、何とかスタッフが協力して撃退してくれました。」
「頼りになるお仲間がいるのですね。私は必要ないのでは?」
「いいえ、頼りになる仲間のひとりが召喚期間を終えて帰ってしまったので、今は防衛力不足で不安な状態なのです。」
「1週間というのは?」
「はい、私の力不足で召喚期間は1週間と定められているのです。この世界の女神との約束なのです。」
「そうですか。ちょうど退屈していたところなので、1週間、楽しませて頂きますわ。」
「ありがとうございます。それでは店内へどうぞ。」
アタランタへは包み隠さずすべてを語った。1週間限定とわかっていれば異世界だろうと何も問題なく働いてくれるだろう。悪魔のメフィストと違って彼女は人間、誠意を持って付き合うのがベストだ。
「あら、新しいキャストの方かしら。コスプレ・コンカフェへようこそ!」エラが嬉しそうに出迎えた。
「まずあなたのお部屋へ案内するわね。仕事は明日からで良いので、きょうはお店のお客になって、どんな感じのお店なのか見学して頂戴。」
「ねえ、エラ...私なんだか少し育ったみたい...」メロが出てきて妙なことを言った。
「レッサーデーモンが死んで呪いが解けたのかも知れないわね。」
「良かったな。これで警察に目を付けられる心配もなくなった。未成年を水商売で働かせているなんて評判が立つと店はお終いだ。」俺は胸をなで下ろした。
新規にメフィストの後釜としてアタランタが入店しました。彼女、ギリシャ神話ではそれほどポピュラーではありませんが、人間としてはヘラクレスの女性版...というとゴリマッチョに聞こえますが、とても強い美しき俊足ハンターです。興味がある方はぜひ検索してください。




