エルフの村でコンカフェのスタッフを捜す
エラとメフィストは100年前にヴァンパイア事件が起こった村へ行きます。
そのころエラとメフィストは100年前にヴァンパイア騒動があった村に到着していた。今はもうその記憶も薄れて、平和な観光地になっていた。温泉、ビーチ、観光名所の血の池地獄。居酒屋の料理が多彩なのもここの名物だ。エラとメフィストは寿司をつまんで一服して英気を養った。
「まず花のお酒とお土産のスイーツを調達しなくっちゃね。」
「それなら温泉の売店に売ってましたよ。名物のバラワインと青い花のマカロン。」
「あら、おあつらえ向きね。」
「100年前の事件がらみの名物らしいですぜ。」
「ああ、そんなこともあったわね。思い出してきたわ。あのころ、私の一番のお友だちはユラっていう幽霊で、ヴァンパイアの始祖とともに天に召されたの。」
「ほう、幽霊とお友だちでしたか。吸精と取り憑きで男はボロボロになりますな。」
「人を悪の化け物みたいに言わないで。ユラは心の清らかな子だったのよ。霊体から実体化して、バックハグして頭を撫でたりしてみんなに愛されていたわ。私もだけど。」
「そうでしたか。美しい思い出ですな。まあ思い出はたいてい美化されますがね。」
「なんか感じ悪いわね。まあ悪魔だからしょうがないか。じゃ、お酒とお土産を買いに行きましょう。」
「あった、あった。これを大人買いするわよ。お代は、メフィスト、あなたが払うのよ。」
「へいへい、7%金利で旦那につけときます。」
「エルフの村は、たしか裏山のエレベーターから登っていけたはずだけど、今はどうなってるのかしらね。」
「ああ、裏山のエレベーターはもうないですよ。50年前ぐらいに壊れてしまって、今は誰もあの崖の上に行く人はいません。」エラの言葉を聞いた売店のスタッフが教えてくれた。
「なら、メフィスト、あなたの気球で崖の上まで行きましょう。」
「きゃあ、何?」
エラとメフィストを乗せた気球を見てエルフたちは驚いた。逃げ出そうとする彼女たちにエラが優しく声をかけた。
「待って、エルフさん、お土産を持ってきたのよ。ほら、青い花のマカロン!」
伝説の青い花のマカロンを見てエルフたちは戻ってきた。
「はい、いっぱいあるわよ。村の仲間たちにもあげたいから連れて行ってくれるかな?クイーンにもお酒のお土産があるの。」
エルフたちはメフィストを見て少し戸惑っている。
「このおじさんはここに残って気球の番をしてるから大丈夫。村へは私だけ行くのよ。」
エルフたちはそれを聞いて安心したのか、エラの手を取って村へ向かった。エルフの村には木が何本も茂っていて、大小の花をつけていた。
「この花から私たちは生まれるのです。」マカロンを食べながらエルフが教えてくれた。
「そうだったわね。思い出したわ。100年前にそんな話を聞いたわ。そしてこの村には女しかいないのね。」
「その通りです。私たちの村は花から生まれた女だけの村です。クイーンが守っています。」
「そのクイーンにバラのワインをたくさん持ってきたのよ。」
「クイーンもさぞかし喜ばれることでしょう。最近は人間の村との行き来も絶え、お酒が手に入らなくなって、クイーンは悲しんでおられました。」
「良くいらっしゃいました、このエルフの村へ。」クイーンは寂しい笑顔でエラを迎えた。
「ユア・マジェスティ、お目にかかれて光栄です。かつて人間の村に住んでいた者でございます。きょうはクイーンにバラのワインを持参しました。どうぞお納めください。」エラが大量の酒を献上すると、クイーンの顔が一気に明るくなり、さっそくぐいぐい飲み始めた。
「プハー、こりゃたまらん。久しぶりなので五臓六腑に染み渡るわ。プハー♩」
「お気に召したようで何よりです。」
「ふむ、こうして酒を持参したということは、何か願いがあるのじゃろ?言うてみい。」
「はい。実は東の大陸の王都に店を出そうと考えております。コンセプトカフェといって.決められたコンセプトにしたがって客をもてなす店です。ですが、町ではなかなかスタッフが見つかりません。なので、町で働いてみたいという村人がいたら2人ほど紹介して頂けないかと。」
「ふむ、良いじゃろう。街は華やかだからの、若い娘は憧れるものじゃ。まあエルフは若くても老いてもあまり姿は変わらないがの。さっそく広場で人選を行うとしよう。ついて参れ。」
「ふむ、みんなそっくりであまり代わり映えせんな。まあ、同じ木の花から生まれてくるので、交配による形質の多様化が起こらんから仕方がないか。どうじゃ、皆の衆、町で働いてみたい者はおらんか?」
エルフたちはガヤガヤとざわめいた。そして2人のエルフが手を挙げた。金髪と黒髪のエルフだ。なかなかの美形なので、コンカフェで人気者になるだろう。
「じゃあ、一緒に町へ行きましょう。空を飛んで行くのよ。」エラは笑顔で2人に声をかけた。
いやあ、美形のスタッフが見つかって良かったですね。名前、どうしようかな?




