#6 弱点がバレたのですが
こんにちは、COCOAです。
自分の想定してない方向に飛んでいきました。
はたして最後の言葉は言ってるのかどうか…
パンケーキを食べ終えてお店を出た。んだけど…食べあいっこしたくらいからずっとシルの様子がおかしいんだよね。普段はもっと元気で朗らかな感じなんだけど今はしおらしいというか落ち着いた感じになってる。
…あ、もしかしてクリームを指で取られた挙句私に食べられたのが嫌だったのかな…心配だし聞いてみよう。
「ねえ、シル?」
「ふぇ、な、なぁに?」
「気になってるから聞くんだけど、さっき私がシルの口元に付いてたクリームを取って食べたでしょ?」
「う、うん…」
「もしかして、嫌だった?」
「え?い、嫌って訳じゃ…」
「じゃあ何でそんなに様子が変なの?」
「そ、それは…」
一呼吸の間が置かれてからシルが答えてくれた。
「は、恥ずかしかったから…」
「…恥ずかしかった?」
「そ、そう…」
「確かに周りに沢山人居たし、目線向けられるとあれだよね」
「!」
コクコク、と頷くシル。どうやら合ってたみたい。
「そしたらこれからは気をつけるね?」
「え」
「何回も恥ずかしい思いさせるのは私が嫌だし…」
「だ、大丈夫!」
凄みがある言葉と同時に私の両手をシルが両手で握りしめる。
「いつか慣れるから!…だから、これからもして、良いよ…?」
「そ、そう…?」
「うん…!」
「なら、気にしない事にするよ」
「お願いだからそうして?」
「じゃあ」
私の両手を包むシルの手を優しく解いて、未だ少し赤いその顔の頬に手を当てる。
「私の為に笑顔を見せて?」
そう言ってシルに優しく微笑みながら伝える。
「私はシルの笑顔が1番好きだから」
「そ、そう?」
するとシルの表情が段々と緩んでいく。そんな姿が可愛くて両頬をむにむにするとその緩みは加速していく。
「シルの笑顔を見ると何だって出来るよ、私は」
「じゃあマスターの為にいっぱい笑顔になるね!」
「ふふ、ありがとう」
そろそろザリオスの北にある出入口に着くかな。あ、見えてきた。私たちが入ってきた出入口とはまた少し変わった雰囲気がある。此方の方は観光者よりも冒険者の方がよく出入りするからかな。とはいえピリッとした雰囲気じゃなくてもっとこう、気を張ってるというか真剣な顔つきをしている人が多い印象。そんな事を考えながらいよいよザリオスから出る。
「よし、それじゃあシルに連れていって貰おうかな」
「分かった!任せてマスター!」
そう言うと私の身体が突然浮いて視界全体に空が広がる。今日は良い天気だな、じゃなくて…
「何でまたこれをしてるのかな…?」
「ん、だってマスターをこの地図の示す所に連れていけば良いんでしょ?」
「それはそう、なんだけど…」
てっきり私は元の姿に戻ったシルの背中に乗っていくものだと思っていたのだけど。おかげで周りの冒険者の方達からの視線が凄い。何か羨ましそうな視線だったり仲良しだなと思われてそうな視線だったりが私とシルに集まってくる。くっ、またこの目に遭うとは…
「またマスターがお姫様抱っこして欲しいって言うから私楽しみになっちゃってて…」
少し照れくさそうに言ってくるシル。もしかして
「シルが言ってたやりたい事って、これのこと…?」
「うん、そうだよ!」
当たってしまった。シルにしたいことを聞いた時に、ザオリクから出たら1つやるって言ってたのはこれの事だったのね…迂闊だった。でもまあ、シルのお姫様抱っこは嬉しいし、これはこれでいっか。シルも楽しそうだし。
「じゃあお願いね、シル。成る可く速く、でも安全は確実に取れてるくらいのスピード感でお願い」
「了解!それじゃあここらで思いっきり体を動かすよ〜!」
その言葉が言い終わるとシルの背中からあの銀の翼が展開される。あ、シルも出来るんだ。まぁ人の姿に慣れるくらいだし一部だけっていうのも出来ておかしくないか。
っていつの間にか飛び始めてる。凄い、思考を巡らせるのに夢中だったのもあるけど私が移動してる事に気付かないくらい気を使って飛んでくれてる。もう、本当に優しいなシルは。そんな気持ちを込めてシルの首に回した腕の力を少し強くする。すると少し速度が上がった。
そんなシルの凄い身体能力と凄い技術のおかげで私は快適な旅を10分過ごすだけでなんと手紙を届ける場所に到着してしまったのである。この木材で出来た家かな。
「ありがとうね、シル。凄い早く着くことが出来たよ」
「ん〜ん、私もいっぱい体動かせたしマスターとたっくさんくっ付けたから満足!」
「ふふ、それなら良かった。帰りもまたお願いするね」
なんて会話をしてから、例の一軒家のドアを3回ノックする。
「すみませ〜ん、依頼で手紙を届けに来た者なのですが〜」
少し待つと魔女のような格好をした女の人が出てくる。
「あら、ありがとうね2人とも。それじゃあ手紙を見せてくれる?」
「あ、はい。こちらになります」
「あぁ、いつものあの人の所ね。ありがとう、それじゃあこれを持って行って」
1枚の紙を封筒に入れて手渡してくれた。
「これは…?」
「それは無事に依頼を達成してくれた、って言うことを証明する手書きの書類よ」
「なるほど…」
「それを受付の人に見せればちゃんと受理されると思うから」
「分かりました、ありがとうございます」
「そんな〜、こっちこそありがとうね〜」
そう言って帰路に着く私達。後ろを見ると魔女の女の人が手を振ってくれてる。良いな、喜んでもらえると私も嬉しくなるよ…っとと、取り敢えず帰ってその封筒を渡さないと任務は達成にならないもんね。帰るまでが遠足ってよく聞いたけどこういう所にも通ずるものを感じる。
「じゃあはい、シル。お願い」
そう言ってシルに対して両手を広げる私。
「んふふ、はーい!帰りも安全に素早く行きま〜す!」
そんな私をひょいっ、と軽そうに抱えあげてまた翼を広げるシル。何回みても格好良いな、まあ私も同じ翼を生やせるんだけど。
「それじゃあ出発〜!」
文字通り飛んで帰る私達は帰りも特に問題無く移動してザリオスに到着。行きと同じ道を辿って冒険者ギルドに着くと受付に向かう。
「こんにちは、どのような要件でしょうか」
「任務を達成したので確認をお願いしたいです」
「了解しました、何か証明出来る物はお持ちですか?」
「あ、これなんですけど…」
魔女の女の人から渡された紙入り封筒を受付の人に渡す。
「それでは確認させて頂きます」
「は〜い」
待ってる間、シルの顔を再びむにむにして遊ぶ。もちもちしててすべすべなシルの肌は触ってるだけでも癒されるのに、笑顔なお顔まで付いてくるのだから…私は浄化されそう…
「お待たせしました、任務達成の確認が出来ましたので今回の任務は終了となります。お疲れ様でした」
「ありがとうございました〜」
そう言うと突如視界に通知が来る。
【レベル12になりました】
お、どうやらレベルが上がったみたい。やっぱりこのレベルになると初心者向けの敵モンスターを倒すよりもこういった任務をこなしていく方がレベル上げには良さそうだね。お金もそこそこ貰えたし。今回の任務報酬を含めて私の所持金は約33万Gとなった。受付の方から離れて冒険者ギルドの少し隅の方に行ってからステータスの振り分けを行う。まあ1レベル上がっただけじゃそんなに大きな変化は起きないけど、コツコツと上げてこう。そして私のステータスはこうなった。
【アンカー】召喚士 Lv12
STR:0
VIT:0
AGI:30
DEX:0
INT:65
LUK:60
召喚士スキル
召喚
送還
一心同体
あいも変わらずSTR.VIT.DEXは0のまま。正直私自身がレベル上げなくてもシルのステータスとスキルを反映出来るから上げるメリットをそこまで感じないんだけど…まあ一応上げている。理由としては装備の幅が広がることと何らかしらの理由でシルが召喚出来なくなった場合に私1人でも何とか出来るようにしておこう…という算段である。
さて、ステータスの振り分けも終わってどうしようか悩むところ。まだ晩御飯とお風呂がまだだからそんなに時間がある訳でもないんだよね。
「ねえシル〜?私夜ご飯までそんなに時間の余裕がある訳じゃないから、それまではのんびりしようと思うんだけどどうかな」
「良いと思う、マスターが居なくなっても大丈夫なようにマスター成分補給したいし!」
「マスター成分って何…?」
「私がマスターが居ない間にどんどん減ってく成分だよ」
「それが無くなるとどうなるの?」
「ん〜…次会った時に離れなくなる?」
「それくらいだったら別にいいんだけど…」
「でもずっとくっ付いてると動きにくいでしょ?」
「まあそれはそうだね」
「だからそれを防ぐ為にも今マスター成分を補給するの〜!」
なんて言って抱き着いてくるシル。ここ、冒険者ギルドなんだけどなぁ…まあ私もくっつきたいしそこは気にしないでおく。
「あ、マスターも嬉しいでしょ!」
「な、なんでバレたの…」
「マスター、私が抱きついてる時とか顔がほわぁ〜ってするから」
「え」
「だからバレバレだよ〜」
なんて少し意地悪そうな顔をして私と目を合わせてくる。
「うぅ…」
「あ、今回はマスターが顔赤くしてる〜!」
恥ずかしい…取り敢えず顔を隠したい、んだけどシルの腕が私より高い位置で背中に回してるから腕を上に持っていけない…
なんて思っているとふと浮遊感を覚える。
「あれ?」
「あはは、マスターはちょっと動かないでね〜」
言われた通り成る可く動かないようにする。そうしているとシルが私を抱きかかえたまま少し移動して冒険者ギルドの一番隅にあるテーブル付きの椅子に座る。私
「なんでこっちに来たの?」
「ん、マスターが私以外に見せたくない顔をしてたから」
「どういう…でも、ここも結局見られるんじゃ」
「この席は1番隅で目立たないし丁度入口との間に柱が立ってるから出入りする人に気づかれることは無いよ」
そう言って私を向かい合わせになるように膝の上に乗せる。
「ど、どうなってるの?これ」
「マスターが私の膝の上に座ってるの」
「そ、それは分かってるんだけど…」
「まあまあ、そんな細かいこと気にしなくても良いでしょ?」
「う、う〜ん…それはどうなんだろう」
「そんなことより」
淀みのない動きで私の耳元に口を近付けてくるシル。
「今は私だけに集中して?」
そう耳元で囁かれる。
「っ?!」
思わずビクリと反応してしまう。
「あれ、マスターは耳が弱いのかな?」
「そ、そんなことは…ない…」
「え〜、ほんとに〜?」
「ほ、ほんt」
「ふっ」
「わぁっ!」
突然耳に息を吹きかけられたものだからつい声が出てしまった。自分でも吃驚して口を両手で塞ぐ。
「もう、そんなに大きい声出したら目立って周りの人に見られちゃうでしょ?」
「シルのせいじゃん…」
「それはそうなんだけどね」
「ほんとだよ…」
何とか呼吸を整える為に、体を前に傾けてシルにもたれ掛かる。
「ふふ、マスター可愛い…」
なんてこと言って私の頭を撫でてくる。何回も言ってるけど私は可愛くないんだけど…ないんだけど、シルに頭を撫でられてると段々眠くなって…
「ん、眠いの?良いよ寝ても」
「…それじゃあ30分後くらいには、起こしてくれる…?」
「分かった、30分後ね」
「うん…」
シルに起こしてもらう約束をして脳が完全にリラックスしたのか眠気に全身が襲われる。瞼が完全に落ちてきて、私の呼吸がゆっくり一定になっていく。
…ん…シル……好き、だよ………
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