#5 冒険者になったのですが
こんにちは、COCOAです。
物語を書いてるといつの間にか時間が想像よりも時間が過ぎている事が何度かあるのです。
でも楽しいからOKです。
窓から朝日が差し込んで目を覚ます。
「んん…いまなんじぃ…?」
普段から枕元に置いているスマホで時間を確認するときっかり6:40だった。丁度いい時間だったので重い瞼をなんとか開きながら洗面台へ向かう。口をゆすいで顔を洗うと漸く目が覚めた感じがするんだよね。それを済ませると朝ごはんのトーストとコーンスープを食べてから学校の準備をする。着替え、鞄の中身の確認、身だしなみ。諸々を済ませてから家を出る。
「行ってきま〜す」
「行ってらっしゃ〜い!」
家の奥から返事が聞こえてきた。今日はお母さんも起きてるみたい。専業主婦だから普段は私が学校に向かい始めてから少し経つ頃に起きるんだけどね。お父さんは単身赴任で東京に勤めてる、だから休暇の時くらいにしか家には帰ってこないよ。つい3週間前までは家に帰ってきてたけどちょっと居たら直ぐ東京に戻っちゃった。何やらここ最近忙しいらしく無理くり休みを貰って帰ってきてたんだって。帰って来てくれたのは嬉しいんだけど、欲を言えばもう少し一緒にいたかったな…
歩くこと25分、学校に到着。昨日は入学式して教室に入って担任の先生の紹介を聞いたら解散だったから隣の席の人とすら話して無い。確か女の子だったら今日は話せたら良いな。
学校が終わって家に帰ってくると椅子にもたれかかる。まさか隣の女の子もFoFをやってたなんて思いもしなかったよ。しかも初日勢。私はまだ始めたばっかりだから全然詳しくないんだけどその子は結構やり込んでたから色々教えてくれた。その中で特に気になったのは【冒険者機能】のこと。
なんとザリオスにある冒険者ギルドという場所に行って冒険者申請すると、冒険者機能が解放されるんだって。冒険者機能は簡単に言うとその人に冒険者カードなるものが配られてそこには本人の情報だったり今まで達成した任務に応じて上がる冒険者ランクが記載されていてザリオス以降の街でも使える、とのこと。
冒険者ランクを上げることのメリットは幾つかあって、1つ目は報酬の増加。冒険者ギルドで受ける任務に限る話にはなるけど、任務達成時に貰える報酬が冒険者ランクに応じてアップするんだって。
2つ目は取得経験値の増加。そこまで割合は大きくないけどランクに応じて敵を倒したり任務を達成した時に貰える経験値が多くなるらしい。塵も積もれば山となるように沢山やってると結構変わってくるみたい。
3つ目は召喚士に限った話なんだけど、自分が召喚モンスターとしてテイムしてるモンスターの好感度とイベント発生率が上がる…らしい。これは確実な情報じゃなくて有志の人が集めたデータになるけど冒険者ランクとテイムモンスターに相関関係がある、って結論が出てるみたい。具体的な数値はまだ未解明だけど経験則としてあるんだって。
そんな話を聞いてこれはやった方が良いな〜、と感じたのでログイン後は手始めに冒険者ギルドに向かう事を考えてる。だからプレイする為にも取り敢えず着替えて荷物の整理をしないと…
よし、何とか早めに用意が出来た。それじゃあ早速ログインしようかな。ベッドに横たわってヘッドギアを装着する。電源をつけると昨日みたいに視界が白く染まった。
少し待つと視界いっぱいに見たことある建物が並んでいる。何回みても壮観な景色。そういえばシルを召喚しないと、なんて考えていると突然視界が暗くなった。
「わっ、何…?」
「だ〜れだ?」
聞き覚えのある声り。昨日初めて聞いたのに既に安心感のあるその音色に少し気分が高揚する。
「シルでしょ」
「せいか〜い!」
そう言うと私の体を掴んでくるっと回し、ぎゅっと抱き着いてくる。どうやら相当楽しみにしててくれたみたい。
「お待たせ、シル」
「うん、待ってた。マスター!」
「ふふ、そんなに喜ばれるとこっちも嬉しくなっちゃうよ」
「マスターは私と会えて嬉しくないの?」
「ううん、私も楽しみにしてた」
「えへへ〜」
可愛い。反射的にシルの頭を撫で始める。街中の人に温かい目を向けられてるけど、こんなシルを見ちゃうとどうでも良くなっちゃうよ。とはいえやりたい事あるからずっとこうしてるわけにもいかないし。
「取り敢えず今から冒険者ギルドに行こうと思うんだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ!登録しにいくの?」
「そう、今後の為にもね」
「良いね〜、それじゃあ行こっ」
そう言って私の手を握ってくるシル。私も握り返すとシルの顔に喜びの表現がより出てきた。そして歩き出しながら話を続ける。
「冒険者ギルドで申請したら早速任務受けようかな」
「良いね〜、最初は簡単そうなのばっかりだと思うけど」
「やり続ければ段々と難しい任務も出来るようになってくると思うしそこまでは我慢だね」
「早く敵と戦いたいのに…」
「シルってそんな戦闘民族だったっけ…」
「そういう訳じゃないけど〜!でも私の強さは知ってるでしょ?」
「うん、まあ…」
「だから低ランクのクエストだと満足出来ないよ〜、ってこと!」
「な〜んだ、てっきりずっと戦ってたいって言い始めるかと思ったよ」
「そんな怖いことしないよ〜!」
「ふふっ、そうだね。シルは怖くないもんね、可愛いもんね」
「なっ……私はそんなに可愛くないってば〜!そりゃ平均よりは上ってことくらいは自覚してるけど、私よりよっぽどマスターの方が可愛いもん!」
「私は小さいだけなんだけど…」
「そんなことないよ!マスターは見た目だけじゃなくて中身も可愛いんだからっ」
「まあこの話は一旦止めよ?水掛け論にしかならなさそうだし」
「むぅ〜…確かにそうだけど…」
「ね?…そういえば冒険者ランクって何処からどこまであるのかな」
「ん〜、1番下はFから始まって、E.D.C.B.Aと上がってその上がS。1番上がSSだったはず」
「へ〜、じゃあ結構1番上に行くまでは時間かかりそうだね」
「そうだね〜…因みに本人の冒険者ランクの1つ上のランクの任務までは行けるからなるべく高いランクの任務を達成していけば結構早くあがるかもね!」
「う〜ん、そこは任務の難易度と相談していきたいところだけど……あ、此処が冒険者ギルドかな?」
「うん、そうみたい」
シルが指を指す方向にはご丁寧に看板まであったから、分かりやすくて助かるね。
「それじゃあ入ろっか」
そう言ってシルを連れながら冒険者ギルドの扉を開ける。するとそこには活発的な空気と共に多くの人が訪れていた。
「え〜っと、冒険者申請は……あっちかな」
冒険者ギルドに入ってすぐの場所に案内図があったので、それを元にして受付に向かう。
「すみません、冒険者申請をしたいんですけど」
「分かりました、そうしましたらこちらの紙の方記入をお願いします」
「分かりました〜」
丁寧な口調と共に渡された書類に必要事項を書いてくらしい。名前、性別、職業、目的等の欄があるのでどんどん埋めていくよ。時間をかけるようなものでもないと思うし。…よし、これで大丈夫かな。
「書き終わりました」
「ありがとうございます、それでは確認させて頂きますね……はい、こちらで大丈夫です。それでは冒険者カードを発行致しますね」
「はい、お願いします」
「それではこちらのカードに手をかざして頂いても良いですか?」
「は〜い」
「…ありがとうございます。それではこれにて登録が終わりました。これからの冒険者活動、頑張ってください」
「ありがとうございました〜」
そう言って受け取った冒険者カードには名前の横に【冒険者ランク F】と書かれていた。
「これでマスターも立派な冒険者だね!」
「まだビギナーだけどね。それじゃあ任務受けに行こっか」
そうしてそのまま隣にある任務ボードの前に移動して丁度いい任務を探す。
「薬草取りに荷物運び、簡単なモンスター討伐…どれもありきたりだね」
「まあまだFランクだし仕方ないんじゃない?」
「それもそっか」
話の流れで手に取った依頼は手紙をとある人の所へ届けるというもの。これなら飛翔を使えば直ぐに終わるだろうという算段。ボードからその依頼が書かれた紙を剥がして受付に持っていく。
「それじゃあこの依頼受けます」
「了解しました〜…はい、手紙の郵送ですね。期限は明後日までとなりますのでよろしくお願いします」
受付の人から届ける場所が書かれた地図と手紙を受け取る。
「分かりました、ありがとうございます」
期限明後日までなんだ、結構優しいね。
「依頼も受けることが出来たし行こっか、シル。」
「は〜い!」
そうして冒険者ギルドから出て地図を確認してみる。
「う〜ん、と…」
どうやらザリオスから北に出て少しした所にある一軒家に届けるみたい。
「よし、場所も分かったし早速出発しよ。シルはザリオスから出たら私を連れていってくれる?」
「うん、良いよ〜!」
これでかなり早く向こうに着くことが出来るはず。とはいえこんな街中でシルに元の姿に戻ってもらうことは出来ないからザリオスから出るまでは徒歩かな。そんなことを考えながら北の出入口に向けて歩き出す。
「シルはなんかしたいことある?」
「したいこと〜?1つはザリオスから出たらやるし…なんだろう」
ザリオスから出たらやる?なんだろう、飛翔とかかな。
「あ、それじゃあ一緒にスイーツ食べたいな!」
「スイーツ?良いよ、それじゃあ行く前に何処かで食べよっか」
「やった〜!」
はしゃいで喜ぶシル、可愛い。
「何処か行きたいスイーツ屋さんはあるの?」
「王都の中心部にあるパンケーキのお店が凄く有名だから行ってみたい!」
「ん、分かった。それじゃあ行こ?」
「うん!食べに行こ〜!」
なんて言って歩き出して数分したら列が並んでいるそのお店を見つけた。これくらいだったらちょっと待ったら入れそうだし並んじゃおう。
「あ、あそこにメニューあるよ。お店に入る前になに食べるか決めちゃおっか」
「う〜ん…悩ましいところ…!」
メニューとにらめっこをして真剣な顔で悩むシル。私はチラッとメニューを一通り見てすぐ決めたからシル次第になりそう。因みに私はチョコパンケーキに決めた。
段々と列が進んで私たちの前にあと2.3組くらいになってきた頃にシルは決めた。
「決めた、イチゴとクリームのパンケーキにする!」
「ふふ、良いね。私はチョコパンケーキにするよ」
「あ〜!そっちも美味しそう〜!」
「そしたら食べあいっこする?私もシルの食べる方気になるし」
「うん!するする!」
程なくして店内に案内されるとオシャレな雰囲気のカフェのようなイメージを持たせるようなお店だった。席に案内されて座るとそのままイチゴとクリームのパンケーキとチョコパンケーキを注文する。
「それにしてもマスター、なんで急に私にしたいことを聞いてきたの?」
「いつもシルにはお世話になってるから、何かしてあげたいなと思って」
「お世話になってるのは私の方なのに…ありがとう、マスター」
花が咲いたような笑顔を見せてくれるシル。私はこれを見れただけで十分だよ。そんな風に心が満たされていると遂に注文したパンケーキが届いた。
「わぁ!美味しそ〜!いただきま〜す!」
「ふふっ、私も頂きます」
そうしてそれぞれ注文したパンケーキを食べ始める。食べあいっこするって言ってたし、そうだ。
「ねえシル」
「なぁに?」
「はい、あ〜ん」
「え、えぇ?!」
「?…食べあいっこするんでしょ?」
「そ、そうだけど…」
何故か顔を赤くしてプルプルしているシルに首を傾げていると、私が差し出したパンケーキをシルが勢いよく食べる。
「こっちも美味しいでしょ?」
「…う、うん。美味しい」
「良かった」
別に私が作ったわけでもないんだけどね。なんて思っているとシルの口元にクリームがついてることに気がつく。
「あ、シル。そのまま止まってて」
「え、あ、うん…」
指でシルの口元に付いていたクリームを取ってパクッと食べる。
「………ふぇ?」
「シルの口周りにクリーム付いてたから、取ったよ」
「……あ…ありがと…」
「…?」
凄い小さな声でお礼を伝えてきたシル。どうしたんだろう。でも、今日は色んな顔のシルを見れて楽しいな。そう思いながら食べるパンケーキは今まで食べてきた中で一番美味しく感じた。
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