#3 思わぬ力を手に入れたのですが
こんにちは、COCOAです。
今回はあまり主人公とシルがイチャイチャしてないです。
代わりに次回は沢山イチャイチャさせますので…
シルに抱えられたまま移動し続けて行きと同じぐらいの時間でリザーブに帰ってくる。一体私が何をしてこんな目に…いや、シルがしたいからしてるって言ってたし特に深い理由は無いか。え、恥ずかしくないのって?恥ずかしいよ、チラッと見られるだけじゃなくてジーッと見られるから余計に。けどシルが楽しそうだし、解けないから諦めた。多分これからの移動手段の1つにこれが入るんだろうなぁ…
「マスター!何処行けば良い?」
おっと、そんな事を考えている隙にいつの間にかリザーブに着いてたみたい。変わらず街の人には温かい目で見られてるけど気にしない気にしない。
「取り敢えず武器屋か雑貨屋に行きたいかな、ドロップアイテム売りたいし」
「そっか〜、それじゃあ雑貨屋に行くね!」
「うん、それでお願い」
なんてやり取りをして雑貨屋に向かってもらう。別に武器作って欲しい訳じゃないから雑貨屋の方が良いのかな。そこら辺はまだ全然分からないからなんとも言えないけど。
そういえば…と思い出してシルに運ばれながら自分のステータスを開いてみると、割り振られていないステータスポイントが50あった。どうやら1レベル上がる毎に5ポイント貰えるみたい。う〜ん、今のところ召喚士らしくシルに戦ってもらうことを主体にしていくつもりだから振り方は変わらずで良いかな。そう考えながら自分のステータスポイントを振り分ける。
今の私のステータスはこんな感じ。
【アンカー】召喚士 Lv11
STR:0
VIT:0
AGI:30
DEX:0
INT:60
LUK:60
召喚士スキル
召喚
送還
まだレベル11だし特筆する点は無いね。
ちなみに【召喚】の効果は現世に出して戦わせる、【送還】の効果は現世から戻して休ませるって感じ。送還して休ませてる間は30秒につき1%のHPを回復するみたい。だからもし残りHPが1%になったタイミングで送還させてHPを最大まで回復させるには49分30秒かかる計算になるね。けどもし召喚モンスターを死なせちゃった時には24時間出せないペナルティがあるから基本的には体力が減ったらその度に送還する、みたいな動きになるのかな。
「マスター、着いたよ!」
そうこうしているうちにどうやら雑貨屋に着いたみたい。
「ありがとうシル。それじゃあ降ろしてくれる?」
「えぇ〜、いいじゃん!このまま入ろうよ!」
「流石にお店に入る時にこのままだと失礼だし…」
「む〜…まぁ、しょうがないか…」
そう言って渋々ながらも私を降ろしてくれる。
「ん、ありがと。それじゃあ入るよ」
シルの頭をポンポンと優しく撫でてから雑貨屋に入る。
「ふぇ…?あ、ちょっと待って!」
私が雑貨屋に入ってから少し遅れてシルが少し顔を赤くしながら入ってくる。どうしたんだろう?
「ん?どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ!さっきの何?!」
「いや、有難うって伝えたかっただけだよ?」
「だからと言って頭撫でるのは違うと思うんだけど…」
「え、嫌だった?それだったら止めるけど…」
「別に嫌って訳じゃないから良いんだけど…」
「あ、そう?なら良かった」
さっきの頭を撫でた事の意図について悩んでたみたい。顔を赤くしてた理由は分からないけど嫌じゃないって言ってくれたしこれからもしてこうかな。私が撫でたいし。
ひと段落着いた所で店内をぐるっと見渡す。するとカウンターの人の頭の上に【店主 コウ】と書かれた厳格な雰囲気を醸し出す男性が居た。
「すみません、ドロップアイテムを売りたいんですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、問題無い。売りたいアイテムを見せてくれ」
その一言で目の前に物を売る画面が出てくる。どうやらここで選んだものを売れるらしい。取り敢えず今は素材を必要としてない上にお金が欲しいから全部売ろう。ボアの肉が400G、ブラックボアの皮が600G、ブラックボアの牙が700Gとのことなのでそれぞれ最大数選んでOKを選択すると合計で30万G近くのお金が私の所持金となった。この感じだと通貨の単位が変わっただけで現実とお金の価値観はそんなに大差ないみたい。
「ありがとな、また贔屓にしてくれ」
「こちらこそありがとうございます、ちなみにここら辺で服屋はありますか?」
「防具屋か。それならこの通りの向こう側、正面の店から左に3つ横に行くとあるから行ってみると良い」
「分かりました、ありがとうございます」
「どうってことないさ」
店主のコウさんに防具屋の場所を教えて貰うとお礼を言って雑貨屋を出るとシルが聞いてきた。
「ねえマスター。何で防具屋に行くの?」
「私は基本的にそんなにVITを上げるつもりは無いし、いざ1人になった時にこの状態だと心もとないからさ」
「大丈夫だよ!私が居るもん!」
「まあ使う事が無いことを祈るけど念の為ね」
「心配性だな〜…」
幾らシルが強いからと言って任せっきりにするのも落ち着かないし、1人で居る時にモンスターに襲われでもしたらとてもじゃないけど敵わない。だから一応自衛として防具とかアイテムを買いに行くのだ。
防具屋自体は雑貨屋のすぐ近くにあったので迷わずに来ることが出来た。さて、めぼしいものが見つかるといいな。
無かったです。はい。一応装備出来て使えそうな防具は幾つかあったから試着してみたんだけど、身体が軟弱な私にはあまりにも厳しかった。運動してない仇がこんな所で出てくるなんて思ってなかった。けどステータスを振ってSTRとかVITを増やせばもっと使える防具が増えたりするみたいだから未来の私に期待。
う〜ん、あてが外れて何をするか悩みどころなんだけど……そう唸っている時にふと視線を感じて後ろを振り向くとそこには異様な雰囲気を纏った老人が遠くの方から私を見つめていた。
「ねえシル、あの人がこっちを見てる気がしてるんだけどどう思う?」
「あ〜…うん、私もそう思う」
「だよね」
イベントか何かが発生したのだろうか。少し待ってみても老人の動きは変わらずにじっと此方を見ているだけ。そうだ、調べて見ようと思い立ったが吉日、ゲーム内エンジンで【召喚士 老人 イベント】で検索をかけてみると1件それっぽい記事が見つかった。どうやらこれは特殊なモンスターを召喚出来る人にのみ出現する特異的なイベントらしい。だがイベントに出会った事のある人が少ないせいかそれ以上の詳細を知ることが出来ない。
「どうしようかな…」
「良いじゃん、やってみようよ!私が居るから大丈夫だって!」
「う〜ん…まあ、万が一何かあったらお願いね。シル」
「うん!」
シルからの後押しを貰って決めた。あの老人に話しかけてみよう。そして私とシルは一直線にその老人の元に向かう。
「何か私達に用でしょうか?」
そう声をかけた瞬間に老人の目がカッと開かれる。
「やはり……お主、かの伝説を従えておるのか…」
「え、あぁ…そうですね。一応シルとは仲良くさせて貰ってます」
最初は何のことか分からなかったけど、少し遅れて理解した。かの伝説ってシルのことか。
「そんなかしこまった言い方しないでよ〜!」
シルが私に抱きついてくる。
「よもや、そこまで深めておるとは…天晴なり」
老人は少し考え込んだ後に
「決めた、お主にとある技を授けよう」
そう言ってきた。
「技、ですか…?」
「そうじゃ、かの伝説を従えている者にしか受け継がれない奇跡の技じゃ」
「え、そんな大層な技を私に伝えて大丈夫なんですか?」
響きだけでも危険な雰囲気を感じ取れるような言葉を並べる老人に訝しむ。
「良い。出来るとは思えんが力で従えるような者ならまだしも、お主の様に従えるのではなくましてやそやつに好かれる者であるならば知らねばならん」
「は、はぁ…」
「着いてくるが良い」
そう言って老人は静かに歩き出した。展開に着いていけない。老人の言っていた事を整理するとバハムートを召喚出来る人にしか使えない技を知るイベントが起きた、ってことだよね…?奇跡の技って言ってたし何だか凄そうな予感…
「ねぇマスター、奇跡の技ってなんだろうね」
シルから出てくるとは思えないほどの小さな声で聞いてくる。
「分かんない。けど何か特別な技なんでしょ。それもシルを召喚出来る人にしか使えないような…」
確かに召喚士のうち、特定のモンスターを召喚する人にはそのモンスター特有のスキルを使う事が出来る。けどそれは召喚モンスターのレベルを上げたり、召喚士本人のレベルを上げたりして手にするものだ。だからイベントで手に入れるスキルなんてないはず。だから今起きてる事はそうそう起きないレアイベントって事だからこのチャンス逃さないようにしないと…
リザーブから出てかなりの距離を歩き、周囲の風景も変わり、人の気配がしなくなったその時老人は止まった。
「さて、此処が目的の場所じゃ」
そう言うも周りには地平線まで草原が広がり、あるのは小さな小屋一つ。その小屋に錨とシル連れて老人は中へ入り、椅子に座って話し始めた。
「さて何処から言うべきか悩むところではあるのじゃが…ふむ、そうじゃな。何か聞きたいことはあるかのう?」
「え…っと貴方は誰ですか…?」
「ワシは…そうじゃのう……昔、お主と同じ種族を召喚出来た者じゃ」
「…と言うことは」
「うむ、今は出来ん。ワシはバハムートに見限られた愚か者じゃよ」
「えぇ〜!おじいさんも私みたいな子を召喚してたの?!」
「うむ、お主とは全く別の個体じゃが召喚しておった。」
そこから長い昔話が始まった。
このおじいさんは昔、バハムートを召喚出来た頃に修行目的で各地を冒険していたらしい。その際、ある地方にて天変地異とも言える災害が起きた時、驚くことに自分が召喚出来るバハムートと同じ力を使ってその災害を鎮めたとのこと。
そこで自分の丈に合わない力を持ってしまったが為に力を誇示して傲慢になっていたらしく、初めてバハムートと同じ力を使えるようになった日から1年経った時突如バハムートが召喚出来なくなった。そこから自分が使えていたバハムートの力も無くなり、力に溺れていた故に自分本来の力を磨かずに怠惰に生きていた事で何も出来なくなっていた。だからそんな人を二度と出さないように、人に対してバハムートという種族が失望しないようにバハムートを召喚出来る者を探し、その器を見定めているっていう経緯なんだって。
じゃあ今回私がこの小屋に呼ばれたのはシルと同じ力が使えるようになっても、力に溺れないような人かどうかを見極めるために呼ばれたってことかな。
「そもそも私、シルと同じ力が使えないんですけど…」
「そりゃそうじゃ、そう簡単に使えるようにはならん。自らと相手を理解し、お互いの心が通った者だけが使える。それがバハムートの力じゃよ」
「じゃあ何で呼ばれたんです?」
「ワシは今やバハムートを召喚出来ないとはいえその力の使い方は覚えておる。じゃからもし器が見合った者が居た時にはその力の使い方を教えているのじゃよ。力自体は悪では無い、じゃが使い方を間違えると本人もバハムートも悪扱いされてしまう」
「なるほど、それを防ぐ為にもおじいさんが今そのような活動をしていると」
「そうじゃ、じゃがお主の場合は心配しておらん」
「何でですか?」
そう返すと老人は
「そやつがお主に対して好意を持っている時点で主人を認めたと同義じゃからな」
「う……」
とカッカッカッと老人は笑いながら言い、シルは顔を赤くしているこの状況をあまり理解出来ずにいると
「ほうれ、これをくれてやるわい」
「…?」
老人が手を振るとその手の先から光の靄が出てきて私を包み込んだ。
【スキル:一心同体を入手しました】
「わっ、何これ…」
「それが例の力じゃよ、お主なら正しく使えるまい」
「あ、ありがとうございます」
「構わん、それが今ワシに唯一出来る事、そして今日お主に目をかけて此処に呼んだ理由じゃからな。それ、早う出んか。今日は良い日じゃからな、酒を呑むわい」
「わ、分かりました。今回はありがとうございました」
お辞儀をして小屋から出ていく為に顔を上げるとそこには
【原初を従えし者 カイリ】
頭の上にそう表示されている老人が楽しそうに酒を呑んでいた。
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