#16 リフレッシュ出来たのですが
こんにちは、COCOAです。
もうすぐ梅雨になるそうですね。
気が滅入りますが頑張っていきましょう。
UNOの勝敗が3勝3敗となり、いざ決着をつけようとした所で私たちが頼んだ天麩羅定食が来た。お礼を言いながらいそいそとUNOを片付けてお行儀よくシルと机を挟んで座る。
「よし、それじゃあ食べよっか」
「うん!」
「「いただきますっ」」
味噌汁を1口、それから天麩羅に手をつけ始めた。あ、海苔の天麩羅もある。これ好きなんだよね。とは言いつつも先ずは野菜の方から食べよ。ということで茄子の天麩羅を取ってつゆに軽くつけて食べる。サクッと小気味良い音を響かせながら中身の茄子の味が広がる。揚げたてのような食感でありながら剥がれない衣、それでいて天麩羅の味を損なわないようなつゆ、シンプルに美味しい茄子。この天麩羅、美味しい。
「ん〜!美味しい〜!」
「ふふ、そうだね。久しぶりに食べたのもあって私も凄く感動してる」
「だよねだよね!」
目を輝かせながら興奮気味に話すシル。こういう所は妹っぽさを感じるよね。とはいえそうなるのも共感出来る。口の中に味が残っている間に白米も食べる。これはご飯が進むね〜。
「ザリオスは美味しい食べ物がいっぱいあるんだね」
「確かに!前にお肉を調理してもらった所の料理もすっごく美味しかったし!」
「あれは素材もあるんだろうけど、にしてもだよね」
「ご飯が美味しいとずっと居たくなっちゃうね〜」
「そうだね…流石にずっと居るのは厳しいだろうけど、ふとした時に戻って来れたらいいね」
「うん〜」
天麩羅定食に舌鼓を打ちながら食べ進める。
「あ、そうだ!折角だし…」
「…?」
何かを思い付いたのかシルがかぼちゃの天麩羅を箸で取って私の口の方に持ってくる。まさか…
「はいマスター、あ〜ん」
やっぱりか〜、シルが箸で取った瞬間にそんな予感がしたんだよね。
「食べてるの同じやつじゃん…」
「同じだったとしても、したっていいでしょ?」
「まあしちゃいけないわけじゃないけどさ…」
「でしょ?」
どうやら説得は出来ないみたいです。
「あ〜…ん」
「美味しい?」
「んむ」
喋ると零れそうなので頷いてその旨を伝える。がぼちゃは甘みがあって柔らかいから食べにくさを感じない。
それはそうとやられっぱなしもあれだし、私もやり返そう。
「ほら、シルも」
「え」
「いや?」
「そんな事ないっ!」
自分の天麩羅を食べ始めていたシルに対して声をかけてシルにも食べさせる。
「じゃあ、はい。あ〜ん」
「あ〜む」
なんか良いねこれ。餌付けって言うと聞こえが悪いけど小動物に食べ物あげてるみたい。母親の気分というかお世話してる気分というか。ちなみにシルに食べさせたのもかぼちゃの天麩羅。これで食べてるもの自体は同じだから良いはず。にしても美味しいものだから、食べ終わるまでが速そう。
30分くらいで私達は夜ご飯を食べ終わった。これでも時間は気にせず食べてたんだけど、美味しさのあまりどんどん食べちゃったものだからそう時間はかからなかった。
「美味しかったね」
「ね〜!いっぱい食べちゃったから今は動けないよ〜」
「ふふ、食休みにする?」
「する〜」
お腹をさすってゆっくり休み始める。お風呂場でもシルに運んでもらったし、ちょっとしたお礼でもしようかな。
「ん、シル。おいで」
私は正座をして自分の太ももをポンポンと叩く。
「え〜…っと?」
「膝枕してあげる」
「良いの?」
「今日はいっぱい運んで貰っちゃったし、お礼ということで」
「わ〜い!」
膝立ちで私の方に移動してくると、ゆっくり倒れて私の膝の上に頭を乗せた。そんなシルの頭を私はゆっくり撫でる。
「良いね〜、マスターの膝枕!」
「そう?…そんなに肉付いてないけど」
「別に骨に当たってるとかは無いからそこは大丈夫だよ〜」
「なら良かった」
横になってるシルを見てふとあることを思い出す。
「そういえば食べてすぐ横になると牛になるって言うよね」
「あ〜!聞いたことある!」
「あれって確か消化が関係してて、太りやすくなるみたい感じだったと思うんだけど…どうだったかな…」
「まあ私はいっぱい動くから太らないよ〜」
「私はそもそもそんなに食べないし」
「結構少食だよねマスターは」
シルの言う通り私は結構少食である。身長が関係してるかは分からないけどついさっき食べた天麩羅定食だって普通に食べて満腹も満腹なくらいだからね。シルは白米のおかわりとかしてたけどまだ余裕がありそうな雰囲気を感じる。それくらい私達の胃は差がある。
「もし本当に太るんだとしても、1日横になっただけでそんな大袈裟に太ることはないでしょ?」
「それはそうだね、普段こんな事しないからそんなに気にしなくても良いのかな…?」
「でしょ〜?」
私の膝の上に頭を預けながらドヤ顔をするシル。とても可愛い。そんなシルの頬と口をふにふにする。
「ふふ、柔らかいね」
「そう?…硬い人が居るとも思えないけど」
「確かに…とはいえシルの頬とかは触ってて気持ちいいよ、癖になる」
「気持ちいいはまあ褒められてる気がするけど…癖になるっていうのはどうなの?」
「ずっとしてたい感じがあるって事だから、もちろん褒めてるよ」
「なんか中毒性でもあるの…?」
「こんなにふにふにならあるかもね」
「そんなぁ…」
「ふふ」
シクシクと悲しんでる動きを見せるシル。とは言ってもおふざけだと理解した上での行動なのでそう取り乱すことは無い。面白かったからちょっと笑っちゃった。
「あ〜、人の泣くところみて笑ったねマスター?」
「だってシルが大袈裟だから…」
「私が大根役者のせいだった」
「演技は向いてないかもね〜」
「む〜、残念」
シルは演技しない方が可愛くて好きだからこのままでいて欲しい。私も演技ができるわけじゃ無いんだけどね?だとしともシルみたいに海外の映画並みにリアクションすることはしないと思うんだけど…
「私はそのままのシルが1番好きだから」
「き、急に何?!」
「演技の話」
「あ、あ〜!そっちの話ね!」
こっちの話しかしてないと思うんどけど、何か他にあったのかな?まあ細かいことを気にしていてもどうしようもないのでそこは置いておくとする。
にしても相変わらずシルの髪は綺麗でさらさらだな〜。
「シルの髪色は銀で格好良いよね」
「割と珍しい髪色ではあるかもね」
「私なんて元は真っ黒だからなぁ…」
「でも日本人といえばみたいな髪色だよね」
「それはそうだけどねぇ…今は違うし」
髪色を変えて髪にダメージを与えるのは私としてもあまりしたくないところではある。せっかく気をつけて手入れしてる髪なんだし、大切にしていかないとね。そんな気持ちがあるせいで髪を短くできなかったりするんだけど…今はゲーム内だし好きに髪型弄れるから今度やってみようかな。
「そろそろ今日も終わっちゃうね〜」
「そうだね。今日はずっとゆっくりしてたね」
「そんな日があってもいいと思うよ」
「ゲームなんだしずっと敵倒してばかりだと疲れちゃいそうだし…」
「だし…?」
「今となってはなるべくシルと一緒に過ごしていたいから…ね?」
「うぐっ…」
「えっ?」
「大丈夫…気にしないで」
「あ、うん…」
少し小っ恥ずかしいことを口にしていたら、シルがダメージを受けたような声を出した。大丈夫って言ってるけど…前にもこんな事あったよね…?流石に何回もあるようだったら少し怖いんだけど…本人が大丈夫って言ってるんだし、そんなに気にしなくてもいっか。今のところ原因も分かってないけど…
「やっぱりマスター可愛い…」
「何回その話するの…やっぱりそんなに可愛くないと思うんだけど」
「可愛いよぉ!…何回話してもマスターが自分のことを可愛いとそうそう認めないからね…認めるまで続けようかな〜、と」
「なんてことを…」
「普通の人は恥ずかしいと思うような言葉でもさらっと言っちゃったりするんだもん…」
「それは思った事がすぐ口に出てるだけだよ?」
「そこが可愛いんじゃん!」
「えぇ…?」
可愛いの基準が分からなくなってきた。私の感性が可笑しいのかな?そもそも感性自体が人によって違うものだからどうしようもないか。
「この姿を見たらどっちかと言うとシルの方が可愛いの軍配が上がると思うんだけど…」
「…確かに膝枕受けてるけどさ、普通こういうのって男の人が受ける側でしょ?」
「まあそのイメージはあるね」
「だからこの場合可愛いって言われるのはしてる側のマスターだと思うんだよね!」
「そうはならないでしょ…」
謎理論を出して私が可愛いことにしようとするシル。自信があるのかまたドヤ顔をしてるけど、可愛いと謎理論は関係無いからね?
「シルとこの話をするとずっと終わらない水掛け論になるから終わりにしよ?」
「むぅ〜…諦めないからね?」
「…この際この争いが終わてくれれば何だって良いよ」
「次こそ認めさせるんだから!」
何回もシルに言われてるせいでプラシーボ効果なのかなんなのか分からないけどちょっとそう思うようになってきてしまってるのが厄介なんだよね…人に褒められると自己肯定感上がるから尚更ね。まあ可愛いって言われること自体が嫌なわけじゃないから折れてもいいんだけど、そうするとなんか自画自賛してるみたいになるじゃん。それが嫌。シルに可愛いって思われる分には全然嬉しいから難しいところ。
「結構時間経ってるね〜」
ふと顔を上げて時計を目にすると時刻は午後9時を回っていた。明日も学校があるからそんなに遅くまでは出来ないからね〜。どうしようかな。
「そういえば旅館の中でログアウトするとどうなるんだろう?」
「居た時間分だけ値段が上がるんじゃない?それか時間になったら外に弾き出されるとか?」
「どっちも嫌だなぁ…旅館から出てからログアウトしようかな」
「それが無難だと思うよ」
「やっぱりそうだよね」
シルと相談して決めると、出る用意をし始める。この旅館で結構ゆっくりさせてもらうことが出来たし、良いリフレッシュになったかな。学校も悪くないし戦っているのも楽しいんだけどね。こうして偶にはゆっくりするべきだと思う。
私達は出る用意が出来ると受付の人に鍵を返してお金を払う。まあ泊まったわけじゃないから結構安い。そしてそのまま旅館の外に出る。空は完全に暗くなり、街灯の光が並んでる。
「それじゃあシル、また明日ね」
「うん、今日はいっぱいマスターと居れたし満足!」
「それは良かった。じゃあ」
「「ばいばい」」
口を揃えてそう言って、私はFoFからログアウトした。
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