#13 温泉に入りたいのですが
こんにちは、COCOAです。
今週は忙しくなりそうですが、変わらず書きたいものを書き続けていきます。
「そういえばくすぐったいってどういう反応なのかな?」
「ちょっと調べたんだけど、皮膚が薄かったり刺激に敏感だったりするとくすぐったく感じるみたいだよ」
「じゃあマスターもそうなのかな?」
「確かめる方法が無いから何ともいないけど多分どっちかだとは思うよ」
「まあ理由が分かったところでどうしようも無いけどね〜」
「ほんとにね…」
シルの膝の上で可愛がられ続けてもう少しで1時間くらいは経ちそうなんだけど…そろそろ体力的に厳しくなってきた…とにかく他の方法でイチャイチャしてくれないと。
「そろそろ他のこともしよ?」
「え〜…もっとマスターを弄ってたいんだけど」
「そろそろ力尽きそう…」
「体力少なすぎない…?」
「シルと比べたら私は微塵の体力しか無いって」
「ん〜、それもそっか」
「そうそう…だから休憩がてら他のイチャイチャをして欲しいところです」
「分かった!じゃあ取り敢えず冒険者ギルドから出よっ!」
「そうだね」
返事をしてから私はシルの膝の上から立ち上がろうとしたんだけど、何故か立てない。足が動かないというか力が入らない感じなんだけど、何で…?
「助けてシル」
「どしたのマスター?」
「足に力入らなくて立てない…」
「何でよ、腰抜けちゃった?」
「分かんない…この際お姫様抱っこでもなんでも良いから私を連れてって…」
「言質取ったよ!」
言いきる前に私の事を抱き上げて歩き始めてしまうシル。毎回思うんだけど、何でシルは私の事を抱えたがるんだろう。シルのことだししたいからしてる、なんて返しをしてきそうなまであるけど…細かいことは気にしなくて良いかな。今はとにかくシルに抱き上げて貰わないと動けないから、文句は言えない。
「どこ行こっかマスター」
冒険者ギルドを出てから聞かれたので
「ゆっくりしたいから…温泉とかあるのかな」
「どうだろう、一旦ザリオスの地図でも見て探してみる?」
「そうだね、探すくらいなら私も手伝えるから探そっか」
「分かった〜」
ゲーム内検索でザリオスの地図を探す。…お、あったあった。
「これ見て一緒に探そ?」
「うん!」
そうして私はシルに抱えられながら冒険者ギルドの出入口の横で地図の中から温泉を探す。
「露天風呂付きの宿とかでも良いんだけど…あるかなぁ…」
「どうだろうね〜」
「ザリオスはヨーロッパみたいな街並みだから無いのかな…」
パーっと地図を2人で見ながら探すも見つからない。中央から順に時計回りで見てるけど大体は服屋とか雑貨屋、あとは料理店とかが結構多い感じかな。流石に無いかな〜…
「あ、この建物とかありそうじゃない?」
地図上を指で示してくれる。そこには中央から少し外れた所に【旅館 透】と書かれた場所があった。
「こんな和の雰囲気の建物あるんだ…」
「とりあえずお店の詳細見てみようよ!」
「そうだね」
その旅館の場所をタップして詳細を見てみる。説明には名前から推測出来るような和の建物のような説明が書かれており、設備に温泉が含まれていることが確認できた。
「泊まるわけじゃなくて温泉目的だけど、ここに行こうよシル」
「分かった〜!」
了承してくれたシルが旅館の方へ歩き始めてくれた。街ゆく人から視線を感じるけど気にしたら負けな気がしたのでなるべく気付かないフリをする。
シルがすごく可愛いからそのせい、と言ったらあれだけど余計に視線を集めてると思うんだよね。シルは本当に気にしてなさそうな感じだけど、どうなんだろう。
「ねえシル?」
「ん〜?」
「周りの人達の視線って気にならないの?」
「私の種族があれだから普段からよく見られてたんだよね、特に空を飛んで移動してる時とか。だから慣れてるよ?」
「そっか、凄いね」
「マスターは気になるの?」
「まあ、気にならないと言ったら嘘になるけど…」
「それならこれ被ってみて?」
シルはどこからとも無くフード付きのポンチョを出してくれた。
「これは…?」
「私がこの姿の時によく使ってるポンチョ。雨具なわけだからフードが付いてるし、顔くらいなら少しは隠せるんじゃないかな」
「あ、ありがとう」
「これくらいどうってこと無いから気にしないで?」
「ふふ、シルやっぱり優しいね」
「そうかな、マスターにだけかも」
「ほんとに?そんなことないと思うけど」
「まあ普段からそうするようにはしてるけど、マスターは特別だよ」
「そっか…えへへ」
「んぐっ…!」
「へっ…?」
私が照れくさくて思わず笑ってしまった瞬間にシルがダメージを負ったような声を出して思わず驚いてしまう。
「だ、大丈夫?」
「気にしないで…一瞬悶えただけだから…」
「そ、そう…?」
ちょっと何を言ってるのか分からないけど、取り敢えずシル自身に問題は無さそうで安心した。シルに何かあったら私が嫌だからね。その一心であの時も無茶をしたんだから。
なんてことは一旦置いといて、そろそろ旅館に着きそうだね。
「あそこを右に曲がったらもう見えるね」
「もうすぐ到着で〜す」
「運転手さん、代金は幾らですか?」
「そうですね…お客さんを頂くので結構です〜」
「実際にこんな運転手は居ないとは思うけどね」
「そりゃあね〜、流石にこんな事する人居たら怒られてそうだもん」
そんなおふざけも程々に道を曲がると遂に看板が見えた。
「お、あそこだ〜!」
「結構建物が大きそうだね」
「そうだね〜」
「そろそろ体力も回復しただろうし、降ろして欲しいな」
「え〜…分かった」
「ありがと」
しぶしぶだけど降ろしてくれた。降ろしてくれなかったらどうしようかと思ったけど、流石に許してくれたみたいで助かった…
いざ入店ということで暖簾をくぐって戸を開けると、ここだけ日本と思ってしまうようなほど和風な空間が広がっていた。床や壁は木造だし掛け軸とかもある。まさかゲーム内で和風の建物を目にすることがあるとは思ってなかったから少し感動するね。
「いらっしゃいませ〜」
「あ、お部屋は何処でも良いので2人で入りたいんですけど大丈夫ですかね?」
「はい、ただ今空き部屋が幾つかありますのでこの中から選んでください」
「え〜と…シルは何処が良い?」
「どうしようかな〜…」
空いてる部屋は4つあってそのうち1つは1番安い部屋、2つは1番安い部屋の1つ上のグレードの部屋、最後の1つは露天風呂付きの少し高めの部屋がある。私としてはゆっくり入りたいから露天風呂付きが良いんだけど、シルはどうだろう。
「私は露天風呂付きが良いかな〜…マスターは?」
「ふふ、私も丁度そう思ってたところ。それじゃあこの露天風呂付きの部屋でお願いします」
「かしこまりました。それでは此方が部屋の鍵となっております。お部屋に付いております露天風呂はいつでも入ることが出来ますが、大浴場に関しましては23時から6時までは閉まっておりますのでお気をつけください。」
「分かりました」
「部屋着をお渡しするのですが、サイズは如何なさいますか?」
「SとMを1つずつお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
店員さんが部屋着を取りに行ってる間に聞かれる。
「マスターよく私のサイズ分かったね」
「私がSだと大きいくらいだからMかなと思って、合ってたなら良かったよ」
「Sだと大きいのにSにしたの?」
「うん、私は余裕がある方が好きだから」
「そうなんだ」
そんな会話をしているうちに店員さんが戻ってくる。
「お待たせしました、部屋着になります。それではごゆっくりお過ごしくださいませ」
「ありがとうございます」
部屋着を持って私達はいよいよ部屋に向かう。部屋自体は1階にあるみたい。部屋に着くと鍵を開けて中に入る。
「おぉ、畳だ…」
「わ〜い!」
私が感動している間にシルが畳にごろんと仰向けに寝転がる。
「洋風な建築も良いけどやっぱりこっちの方が好きかな」
寝転がるシルの傍まで近付くと隣に座り込む。
「あ、窓から星が見えるよマスター!」
「え、どっち?」
「あっち!」
仰向けのまま窓を指差すシル。座った状態だと空が見えないから私も同じように仰向けに寝転がる。すると窓には空が映り、星々が輝いて見えた。
「ほんとだ、王都の中心から少し離れるだけでも結構見え方が違うね」
「そうだね〜…綺麗に星が見える〜」
「いつお風呂入る〜?というかどっちのお風呂入る?」
「大浴場も気になるけどマスターと2人きりで居たいから今日は露天風呂だけで良いかな」
「ふふ、そっか。私もそうするつもりだったかな」
「マスターも同じつもりだったの?やった〜」
万歳するシルが隙だらけに見えたかれ横から不意打ちで抱き着く。
「わあっ!」
「ふふ、吃驚した?」
「もう、急だな〜…そりゃビックリしたよ〜」
なんて言ってるけど、笑いながら抱きしめ返してくれる。吃驚はしたけど嬉しいんだ。可愛い。
「入るのはもう少し後で良いや〜…こうしてくっ付いてたいし」
「そう?…それじゃあもうちょっとくっ付いてよっか」
「だね〜」
こうして抱きついてみるとシルって抱き心地が良い。感触がふわふわしてるというか優しい感じがする。いつもは元気だけどここぞという時は頼りになるんだよね。
「あ、マスター。顔がにやにやしてるよ〜?」
「へ?…そんな顔してたの?」
「うん、すっごく分かりやすいくらいにやにやしてたけど…何考えてたの?」
「シルって抱き心地良くて元気だけど、大事な時には頼りになるな〜…って考えてたんだけど…」
「そ、そう?…えへへ、そう言われるとちょっと恥ずかしいけど嬉しいね」
「ん、可愛い…」
猛烈な衝動に駆られてシルの頭を撫で始める。最早撫でたいという欲求に逆らえないまであるんだけど。
「えへ〜…マスターは撫でるのと撫でられるの、どっちの方が好き?」
「え〜…?…悩むなぁ…」
「私はどっちかと言うと撫でる方が好き!マスターの可愛い顔が見れるから」
「あ、そういう?…う〜ん、強いて言うなら撫でられる方かな…」
「何で〜?」
「それは…」
理由が理由なので少しどもってしまう私、それを好機と捉えたのかシルがグイグイと押し始める。
「え〜、何か言えない恥ずかしい理由でもあるの?」
「まあ…あるにはあるけど」
「けど?」
「…その意地悪そうな顔をしてるシルには言いたくない」
「意地悪そうな顔なんてしてないよ〜!」
弁明するシルの顔は小悪魔のような表情を浮かべている。この場においては全くもってシルが信頼出来ない…
「間違いなくしてるんだけど…」
「まあまあ、そこは置いといて〜…結局理由は何なの〜?」
うぐ、中々手強い。話を逸らそうとしたけど話題を戻されてしまった。
「……のが、好きだから」
恥ずかしさのあまり想像よりも小さな声で話す私。
「な、なんて言ったの…?」
「だ、だから…」
聞き直されるとは思っていなくて顔が凄くなるけど…
「シルに触られるのが、好きだからって…」
「そっかそっか〜!」
恐らく今の私は顔を真っ赤にしてると思う。鏡を見なくてもそう自信を持って言いきれるほど恥ずかしい。私の言葉を聞いてシルは嬉しそうな顔をして頷くと
「嫌々言っててもやっぱり触られるのが好きだったんだね…」
「あうっ…」
ゆっくり私の耳元に口を近付けてそう囁いてくる。いきなり声が耳元に来たものだから私は思わず息を漏らす。
「そ、それは言わないお約束でしょ…」
「ふふ、反応するマスター可愛い」
「止めてぇ…」
「なんて言ってるけど本当は嬉しいんでしょ〜?」
「うぅ〜…」
どうやら場所が変わっても私が弄られることに変わりはないみたいです。
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評価もして頂けると嬉しいです。




