#11 ワイバーン狩りなのですが
こんにちは、COCOAです。
ちょっと雰囲気がアレですが、至って健全です。
ネイヤー食堂で持ち込んだレイザーベアのお肉の料理を堪能した後、私たちは食休みをしていた。冒険者ランクがCまで一気に上がったので気になる任務があったら受けるつもりだからね。Cともなると結構強いモンスターの討伐だったり盗賊の始末だったりとかなり危険度が上がってくる。それこそFランクの時とは比にならないぐらい。とはいえ私達は推定Bランク以上で受理出来るレイザーベアの討伐、もとい素材納品の任務を達成出来たのでそこまで気を張る必要も無いと思う。黒雷の神子を手に入れたからそれこそかなり余裕があるはず。とはいえ油断して失敗したら元も子も無いので適度に緊張しつつ頑張りたいところ。
「にしてもレイザーベアの料理美味しかったね」
「すっごく美味しかった!強ければ強いモンスターほどお肉が美味しいのかな?」
「それはどうだろう…いくら強いモンスターでもそもそも肉がないゴーレムとかだったら食べられないし、なんとも言えなさそうだね…」
「う〜ん…でもレイザーベアは美味しかったしなぁ…また食べたいかも」
「まだお肉自体は結構余ってるし、なんなら新しく倒したモンスターでお肉を素材として落とすモンスターが居たらそれも調理してもらおっかな」
「私はそれがいい!」
「ふふ、私も美味しい料理が食べたいしそうしたいな。でもそう考えると希少性の高い野菜とかも一緒に使ったらもっと美味しくなりそうだね」
「わぁ〜…またお腹減ってきちゃいそう…」
「流石に早すぎるよシル…」
「えへへ…」
のんびり会話すること30分と少し。そろそろお腹も落ち着いてきたし、ギルドで依頼見てたら十分動けるようになるだろうから歩き出そうかな。
「そろそろ行こっかシル」
「は〜い」
そう言って私達は手を繋ぐとゆっくり歩いてギルドへ向かう。今は夜の9時過ぎ、今から任務を受理して達成するのにそこそこ時間はかかっちゃうだろうから今日は任務を1つ終えたらログアウトしようかな。
「それじゃあ依頼見よっか」
「うん!」
元気いっぱいに返事してくれるシルと一緒にギルドへ入って任務の紙が貼られている掲示板を見ていく。こうやって改めて見ると結構色んな種類の任務があるんだなぁ、なんて思いながら眺めているとシルが良い任務を見つけてくれた。
「マスター、これなんかどう?」
「ん〜?」
そう言って渡してきた紙には【ワイバーンの討伐】と端的に書かれていた。流石にこれだけでは判断が出来ないので詳細を聞くためにこの紙を持って受付の方へ向かう。
「すみません、この任務の詳細が知りたいんですけど良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ。任務内容を拝見させて頂きますね」
任務の紙を見て少し書類を探す受付の人。時間はそうかからずにその任務についての書類が見つかったみたい。
「ワイバーンの討伐、数は出来るだけ。ここから北の方にある山脈の麓辺りで多くいるようでして、通行の妨げになってたりするから討伐して欲しい…と言った内容です」
都度依頼の紙を見せたり地図で場所を指差ししながら説明をしてくれる。ふむふむ、じゃあここら辺一帯で目に入ったワイバーンを倒せばいいって感じだね。
「分かりました、それじゃあこの依頼を受けます」
「承知しました…お待たせしました、それでは任務頑張ってください」
「ありがとうございます、行ってきます」
紙と地図を貰ってギルドから出る。出来るだけって言われてるしちょっと倒して終わりにするのもあれだよね…
「どれくらい倒そっか、シル」
「出来るだけ…って大雑把な内容だよね」
お互い顔を合わせて苦笑いする。
「取り敢えず視界に入ったワイバーンは全部倒そうと思ってるんだけど…」
「どれくらい居るか分かんないから取り敢えずはそれでいいんじゃないかな?」
「そう?…じゃあそうしようかな。それじゃあ早速向かおっか」
「うん!」
そうして私達は北の山脈へ向かうために北の出入口からザリオスを出ると飛翔を使ってひとっ飛び。向かっている途中にも何匹か見つけたのでその都度倒して進む。やがて麓が目視出来るくらいの距離になる頃にはワイバーンがぽつぽつと見当たる程になっていた。
「それじゃあ2手に分かれて倒していくよ」
「うん、分かった!」
「それじゃあここを起点としてここより東を私が、ここより西はシルが担当して手当り次第ワイバーンを倒していく感じでいこう」
「ふむふむ、何分くらいやるの?」
「そうだね〜…なら取り敢えず30分をタイムリミットとして設ける。タイムリミットが来る前にワイバーンが見つけられなくなったら戻ってきて」
「りょーかい!」
「じゃ、お互い頑張ろうね」
「うん!」
そう言って手を振りあってから後ろを振り向く。群れって言うほどでもないけど結構沢山のワイバーンが居る。折角だし、スキルの練習台になってもらおうかな。けど時間だけ忘れないようにしないと…
黒雷の神子を使う。轟音と共に黒雷が降り注ぐと私は光の速さでワイバーンに近付いて、殴る。次のワイバーンに近付いて蹴る。周りに沢山居たら一心同体からの威圧を使って動きを止める。光の速さでの移動はゲーム内でアシストが入ってるのか分からないけどちゃんと目と体はついてくる。私みたいな非力の殴りや蹴りでも光の速さと黒雷のダメージでワイバーンでも一撃で倒せる。私の速度に追いつけないワイバーンが多いから半分以上は背を向けて呑気に飛んでる敵を殴るだけの簡単なお仕事。
とはいえ殴る蹴るだけじゃ味気ないから黒雷を体外で操ってみる。それこそワイバーンに黒雷を落としたり、手から発射したりして遊べるのは結構楽しいな。そんな風にワイバーンを蹂躙しているとアラームが鳴った。時計を確認せずとも分かるようにアラームを5分前に鳴るようにセットしておいたんだよね。近くに居るワイバーンは殆ど片付けちゃったから集合地点に帰ろうかな。まあ光の速さで動けるから直ぐに着くんだけど。
座り込んで黒雷で遊びながらシルのことを待ってると遠くから声が聞こえる。顔を上げると猛スピードでシルが飛んで来t
「むぐっ」
そのままほぼ速度を落とさずに私に抱きついてきた。
「勢いが強いよシル…」
「ごめんねマスター…早く抱きつきたくて…」
「別に私は逃げたりしないから大丈夫だよ」
猛スピードによって凄いことになっているシルの髪を直す為に優しく頭を触る。しおらしくなったシルを気にせずに髪を直した後はそのまま頭を撫でる。
「どう、落ち着いた?」
「…うん」
「それは良かった、それじゃあギルドに戻ろ」
「分かった」
私達は合流した流れでそのままザリオスへ帰っていった。ここで他に特にすることも無いし、早く帰ってシルを愛でたいからね。
帰りも行きと同じく飛翔を使ってそう時間をかけずに帰って来ると真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かう。
「任務を終えたので確認お願いします〜」
受付に紙と借りていた地図を渡して確認をお願いする。
「分かりました、少しお待ちください。ワイバーンを倒した証拠となるものはお持ちでしょうか」
「え〜…と、あったあった。これで大丈夫ですかね?」
持ち物からワイバーンの角を1つ取り出して受付の人に見せる。
「はい、大丈夫です。確認が取れましたのでしまっていただいて結構ですよ」
「分かりました」
言われた通りワイバーンの角をしまう。てっきり倒した数でも聞かれるかと思ったけれど、今回の任務は出来るだけの討伐だから1つでも倒した証拠があれば任務は達成判定なのかな。
なんて1人で考え込んでいると
「はい、今回の任務も達成となります。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
無事達成とのことなのでつつがなく会話を終わらせて前に座ったことのある冒険者ギルドの出入口からは丁度見えない場所の椅子にシルを連れて座る。
「ねえ、シル。膝の上座っても良い?」
「良いよ〜!」
むしろウェルカムな雰囲気を出すシルの許可が貰えたのでシルの膝の上に向かい合うように座ると、腕をシルの首にまわして体重をかける。
「…ふぇ?」
「大丈夫かな、私重くない?」
「…え、あ、大丈夫!マスターは全然軽いよ!」
動揺しながら返事をするシル。
「ふふ」
「ど、どうしたのマスター。急に笑って…?」
「ん〜…気にしないで良いよ」
「その返答だと余計気になるんだけど!」
「だ〜め、教えてあげなーい」
なんて答えてから私は、その体勢のまま頭を撫で始める。
「よしよ〜し、いつもありがとねシル」
「な、なにこれ」
「感謝の気持ちを伝えてるんだよ?」
「そ、そっかぁ〜…」
「ふふ、好き〜」
「んなっ?!」
「そんなに驚かないでよ〜…今更でしょ?」
「うぐっ…それはそうだけど、慣れてるかどうかはまた別の話で…」
「そうなんだ…そんなことより、シルはどうなの?」
「…え?」
「私のこと、好き?」
「うぁ…す、好き…だよ」
「えへ、そっか〜」
「何かマスターないつもと違うんだけど…」
そりゃそうだよ、今私はシルとイチャイチャしたくてそんな事してるんだから。
「嫌だ?」
「マスターとくっつけたりするのは好きだけど…」
「けど?」
「主導権握るのは私の役目なのっ!」
「良いじゃん別に、私が握ったって」
「うぅ…私は可愛がりたい方なのに…」
「そうなんだ…じゃあ、そうする?」
「…良いの?」
「うん、私はシルといっぱい絡みたいだけだから」
「そ、そうなんだ…じゃあ遠慮なく」
そう言ってシルは私の頬をむにむにし始めた。
「うにゃ〜」
「よく伸びるね、マスターのほっぺた。お餅みたい」
「ほんなにのいてらいでほ」
「何言ってるか分かんないよ〜」
「んむ…それはシルが伸ばしてるせいだよ」
「えへへ、そうだけどね」
「私の頬で遊ぶの楽しい?」
「楽しいというより…頬がむにむにのマスターが可愛いからやってる」
「えぇ…」
「マスターだって私のほっぺたでむにむにしたじゃん」
「それはそうだけど」
「やってることは同じだよ?」
「そっか…」
納得してしまった私が居る。これで頬は終わりかなと思っていると今度はお腹を触り始めた。
「ちょ、お腹はくすぐったいんだけど」
「お腹もなの?もうマスター全身くすぐったいんじゃない?」
「…分かんない」
「だって耳も背中もお腹もダメなんでしょ?」
「…まぁ、そうだね」
「ここまで来たら逆にいけるところないでしょ」
「かもしれない…」
「というわけで諦めてもらって」
「んふっ、ちょ、ダメだってばっ」
「ほらほら、声抑えないと周りの人にバレちゃうよ〜?」
「だっ、だったらシルが、止めればっ…ふふっ」
「え〜?何だって〜?」
「あはっ、だめっ、くすぐった、んふふっ」
「ほらマスター、し〜っ」
やむなく両手を使って口を塞ぐことでなんとか声を漏らさないようにする。
「ふっ…んっ、んむっ…」
「な、なんだろう…イケナイことしてる気になってきた…」
するとおもむろにお腹のくすぐりを止めるシル。
「…?」
「ほ、ほら…これ以上やるとマスターも限界でしょ?」
「そ…そうだね…」
息を切らしながらも、なんとか言葉のキャッチボールをする。
「だからこれ以上はあれかな〜って思ってさ」
「そ、そっか…なら最初からやらないでよ…」
「いや〜…ちょっと可愛いマスターが見たかったから…」
「これで、見れたの…?」
「まあ可愛いマスターも見れたけど…アレなマスターも見ちゃったからなんとも…」
「アレ?」
「い、いや!気にしないで良いよ!」
「…?」
要領を得ないシルの回答に首を傾げる私だった。
誤字脱字、文の違和感等ありましたら遠慮なくお教え頂けると幸いです。




