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区別人  作者: 辻堂
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♪~

いつもの目覚ましが耳を突いて、霞む意識でスマホに手を伸ばす。

9月7日 7時15分。この目覚ましは第一弾に過ぎない。

次は10分後、その次も10分後

夏の日差しが馬鹿に暑いこの朝、重く体にのしかかった掛布団を足で精一杯に払いのける。


毎朝いつも、下半身あたりにふくらみがあることは、私を欲情させる。

例にもれず、今日もこれだ。

理性が動物を人間たらしめるとは真逆に、私が動物に成り下がるかの如く、自らを慰むる。


10分もすれば事は収まる。次の目覚ましが鳴る前である。

ティッシュに飛び散った精液を綺麗に拭く。意識もはっきりしていない中で。


適当にゴミ箱に投げ入れ、少々の頭痛を含んでベッドから立ち上がる。


私は起きて第一に珈琲を飲む。

マセたいのか、それとも純粋に珈琲が好きであるのか、私はわからない。

自分でも自分が本当はどう思っているかなんて、わからない。


氷を4,5個入れ、冷えた珈琲をもうろうとした意識の中で流し込む。

頭がさえてくる気がする。


朝食というのは、私が中学生から高校生に上がる過程で頻度は下がっていった。今や、「1週間はたべていないだろうな。」と思う。


水でうがいをし、丹念に歯磨きをする。

ミントの爽快な歯磨き粉、これじゃないとダメなんだとこだわりを強要する間磨き粉である。


歯磨きをするとさらに頭はさえてくる。


学校への準備はすぐに終わらせることができる。

読み返しもしないノートを適当にリュックへと放り、中学生のころ無駄に集めた高そうな筆記具が入った筆箱をまた放る。


そんなリュックよりも、私の気の方がもっと重いのは常である。


制服は少し”よれ”ていた。「まあ、いいか。」


 「暑い。」9月の外は暑い。暑いくせに、しんしんと雨が降っている。


こういうとき、私の家の前のバス停留所はいつも混む。

気休めに設置された屋根は長い人の列でまるで機能しない。


音を立ててやってくるバスに乗り込む。

すこし外の雰囲気とは異なる、通勤通学用途のバスは、いつも私の気分を阻害することになる。


少々気持ちが悪い。それは朝、ろくに腹に飯を入れないで珈琲のみで済ませていたのだから当然と思われるかもしれないが、私はそんな自責をする余裕などない。ひたすら、余裕がないのだ。


 砂利道を走行する音が下から聞こえると、高校には間もなく到着をする。


私がこの音を好まないのは明白だろう。バスの戸が開いた瞬間、一斉に人々が下りていく。そのなかの1人に私がいる。


なんの意味があるのだろう?たくさんの学生の中で、私が病欠したら、事故にあったら、自殺したら、殺されたとしたら。


いや、何の意味もない。私1人がどうなろうと、毎日のこの風景になんの影響を及ぼし得ない。


そんなことすら考えている意味は、ない。


始業まで、あと5分もない。

次に続きます。

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