第65話 送別会 (前編)
「ただいま~」
「わあ、もう五時じゃん」
ちゅうじんとベンジャミンが家に着くころには、もう十七時を回っていたようで、多田は帰ってきたちゅうじんを見ると、声をかけてきた。
「遅かったな。どこに行ってたんだ?」
「えっと、UFOを修理しに裏山まで……」
ちゅうじんがそう応えると、多田は一番最初に出会ったころに、UFOの置き場所に裏山を指定したことを思い出す。UFOについては全く知らないことに気づいた多田は、ちゅうじんに進捗度合いを聞いてみる。
すると、何故かしどろもどろになりながら応え始めた。
「えっと……修理はほぼ終わってるんだ。それで何だけど、実は一週間後にここを発たないといけなくなった」
「え、随分と急だな」
「だろ? でも、上司の命令だから伸ばすわけにもいかなくて……」
ちゅうじんは言い終わると、しゅんとした表情のまま俯く。
でも、最初からこうなることは分かってたし、仕方ないよな。
随分とらしくないちゅうじんの様子を見た多田は、そう思いながらも、取り敢えず先にやらなければいけないことを整理しよう、とちゅうじんに話す。
「一週間後だろ。なら、早いとこ片づけとかしといた方が良いんじゃないか?」
「そうなんだよな。それで、みんなにはどう伝えるんだ?」
「えっと、確かちゅうじんは留学生だったから、普通に期限が来たから帰らないといけなくなったって説明すれば問題ないだろ」
「了解だぞ」
多田とちゅうじんはその後も、深夜まで部屋の整理やベンジャミンの今後について話し合った。結果としては、ひとまず大家には伝えること、ベンジャミンに関しては一旦実家の方に預けようということに決まった。
「取り敢えず今日はここまでにして、明日、大家さんに伝えに行こう」
「分かったぞ」
「それじゃあおやすみ」
「おう」
多田はそう言うと、睡眠をとるために自室へと戻るのだった。
そして、翌朝。正月休みの間に連絡しておいた方が良いだろうと、多田とちゅうじんはさっそく大家の元へと向かった。大家の部屋は確か一〇一号室なので、階段で降りて呼び鈴を鳴らす。
「はーい。どうしたの? 多田君の方から来るなんて珍しい」
「朝早くにすいません。ちょっとお話したいことがありまして」
「ほうほう。取り敢えず立ち話も何だし、上って上がって!」
「では、失礼します」
大家にそう言われた多田とちゅうじんは、さっそく中へと上がらせてもらう。中を進んでいくと、どこで買ったのか分からない変な置物や絵画が飾られていた。
大家さんってやっぱり不思議な人だな。引っ越し祝いにもらった木彫りの熊もそうだけど……。
そう思いながら歩いていると、リビングのある部屋へと着いたようで、お茶の準備をしている大家に適当に座ってと言われた。多田とちゅうじんは適当な椅子に腰を下ろすと、大家が来るのを待つ。五分もしないうちに大家が湯呑みを持ってやってきた。
「はい、どうぞ」
「わざわざありがとうございます」
「ありがとうな」
出された湯呑みを見ると、普通のお茶とは違って何だか変な色をしているのに気付いた多田。
これ本当に飲んでも大丈夫なやつ?
多田が内心疑っていると、ちゅうじんがお茶を飲み始めた。その様子を横目で見ながら、多田はさっそく本題に入ろうとちゅうじんのことについて話し出す。
数分して多田が話し終わると、黙って聞いていた大家が口を開いた。
「なるほどね。それじゃあ後、六日後にはもう帰っちゃうのか~」
「そうなりますね」
「うーさんが来てからというものの、更に楽しくなってきたと思ってたんだけどな。でも、決まっちゃったものは仕方ない。こうなったら、送別会でもしてうーさんをみんなで送り出そうじゃないか!」
大家がそう言った瞬間、多田はまた面倒なことになったと感じる一方、ちゅうじんは意味も分からずやりたいと言い出してきた。
なんでそうなるかね……。まあ、予想はついてた。ついてたけど!
大家がちゅうじんに送別会の意味を説明している間、多田は内心で溜息を吐く。ちゅうじんと大家の話を聞く限り、まずはキテレツ荘のみんなに声をかけることとなった。
「それで何だけど、他に呼びたい人とかいる? どうせなら大勢でパーッとやりたいしね」
「それなら、企画課のみんなと多田の家族はどうだ?」
「お、良いね。多田君はそれで問題ないかな?」
問題大ありだけど、断れる雰囲気じゃないというか、大家さんが許してくれないだろうな。
多田はそう考えると、素直に頷いた。
「それじゃあ、諸々の細かいところはまた今度決めるとしようか」
「だな!」
「そうですね」
こうして半ば強引に開催することになった送別会。多田は正月休みなのに、各所に連絡しないといけないので忙しくなりそうだなと、遠い目で明後日の方向を見るのだった。
◇◆◇◆
そうして迎えた送別会当日兼帰国という名の帰還の日。この送別会が終わり次第、裏山へと向かいちゅうじんはルプネスへと帰ることになる。事前に部屋の片づけは終わっており、向こうに持っていくものをUFOに詰め込む作業も完了していた。後は送別会を思う存分楽しむのみだ。
「料理の準備完了しました~」
「こっちもおっけーやで!」
「はーい! それではこれよりうーさんの送別会を開始いたします!」
「おおー!」
主催者である大家の掛け声で始まったちゅうじんの送別会。参加者は全員で十一名と一匹。
キテレツ荘からは本日の主役であるちゅうじん、そしてちゅうじんの同室の多田とペットであるベンジャミン、大家である高田、恵美、みやび、甘野が。武尊は今日から学校のため不参加だ。
ちゅうじんとは冬休み最終日に、徹夜でガ〇ダムシリーズを見まくっていたため、武尊は今頃寝不足の状態で授業に臨んでいることだろう。
続いて、企画課からは夜宵、王子、ジュリア、下条の四名が参加だ。みんな特別に上司から有休を貰ったそうで、多田もそのうちの一人だ。
そして、実家勢からは亜莉朱のみが参加となった。多田の両親は仕事やら用事やらで忙しいため、今回は不参加。亜莉朱はそんな両親に代わってベンジャミンを引き取るついでに参加している。ちなみに学校は明日からだそうで、帰ったら大量の宿題が待っているのだそう。
「はい、うーさんと多田さんの分です」
「ありがとうございます」
「おお! 美味そうだな」
さっそく甘野からおかずの乗ったお皿を渡される。
バーベキューなんて何年ぶりだろうな。
多田はそう思いながら、渡されたお箸で肉を食べていく。今回は大家がわざわざ倉庫のほうから持ってきたバーベキューセットを使っているようで、十一人と一匹でも対応できるように二台フル活用されている。甘野はひたすらに焼いてはみんなに配って、食べてを繰り返していた。
「甘野さんにはいっぱい世話になったな~」
「本当にそうだよ。こいつの料理が上手くなったのは全て甘野さんのおかげです」
「いえいえ~。私も何だか弟子ができたようで楽しかったですし、教えがいがありました! また機会があったら一緒に料理しましょうね!」
甘野が笑顔でそう言うと、ちゅうじんも元気よく、またやろうと返事をした。多田はそんな二人を見て本当に仲良くなったよな、と感じるのだった。




