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【完結・旧ver】宇宙人が家にやってきた!  作者: 桜月零歌
第三章 宇宙人と多田家
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第56話 ハロウィン文化祭 (前編)


 ちゅうじんの正体がバレてから一夜明け、今日は文化祭当日。亜莉朱は生徒会の打ち合わせがあるからと、朝早くに家を出てしまった。文化祭に参加できるのは午後かららしいので、暇なちゅうじんと多田はリビングで時間を潰している。


 ボーッとするのもなんか癪だな。


 多田は根っからの仕事人間なので、罪悪感を感じていた。


「文化祭は基本、午前中は生徒たちだけだからな。それまで時間あるからどっか行くか?」

「んー、そうだな」

「昨日はどこ行ったんだ?」

「えっと、清水寺と祇園と三条の辺りをぶらぶらしたぞ」


 ほーん、ということは東山近辺を歩いた感じか……。となると……。


 多田はちゅうじんから聞いた内容を元に、どの辺りまで観光したのか整理する。


「京都駅周辺はまだ回ってないんだな?」

「そうだな。京都駅って?」

「市内の駅の中でもデカいところだよ。近くにはショッピングモールとか水族館とか色々ある」

「おお! それは行ってみたいぞ」

「但し、水族館は却下な」

「お、おう」


 多田は沖縄での苦い思い出があるので、予めちゅうじんに伝えておく。そういうわけで、昨日の市内観光の続きと称して、多田たちは京都駅へと向かうことになった。

 今回は京都駅周辺をぶらぶらした後、そのまま亜莉朱の高校へと向かうので、ベンジャミンはお留守番だ。京都駅に行くまでには当然、電車を使用するのでちゅうじんにICカードを持っていくのを忘れないように忠告する。

 そうして準備を整えた二人は最寄り駅へと向かうのだった。


 

◇◆◇◆


「めちゃくちゃデカいぞ!」

「その分人も多いから、はぐれないように気をつけろよ」

 

 電車を乗り継いで、京都駅へとやってきたちゅうじんは駅の広さに驚愕する。興奮しているちゅうじんに向かって迷子にならないように注意する多田。


 目ぇ離すとすぐどっか行くからなこいつは。


 ちゅうじんの今までの行動を振り返りながら、隣ではしゃいでいるちゅうじんを見つめる多田。気分はすっかり子供の面倒を見る保護者だ。

 入場時刻まで、後三時間なので、回れるだけ回ろうとちゅうじんにどこに行きたいか訊いてみる。


「んー、そうだな。あ! ここに来るまでにあった塔みたいなところに行きたいぞ」

「塔……。ああ、京都タワーか。良いぞ」

「やったー!」

「あ、そうそう。あそこ入場料いるはずだからお金の準備しとけよ」

「分かったぞ」


 直前になって伝えてもあれなので、今のうちに言っておく多田。京都タワーへは、駅構内から直接行けるようになっているはずなので、まずはそこに向かう多田とちゅうじん。

 構内を歩いていると、お土産屋やスイーツを売っているお店があるのか、いい匂いが漂ってくる。ちゅうじんが事あるごとに、あれ食べたい! これ食べたい! と言い出すので、多田は内心で子供かと思ってしまう。

 ちゅうじんが隣で買ったものを食べながら歩く中、多田は構内に設置されている掲示板を見ながら、京都タワーの入り口を目指す。


 何回来ても掲示板見ながらじゃないと分からんな。こりゃ渋谷駅とか行ったら迷子になりそうだ。


 構内を歩くこと十五分。隣を歩いていたちゅうじんが、ふと指を差した。

 

「あ、あれじゃないか?」

「はあ……やっと見つけた」


 多田は疲れたように溜息を吐きながら、「この先京都タワー」と書かれた文字を見つめた。多田はスマホで入場料がいくらになっているのかを検索する。


 げっ! 前来たよりも上がってるじゃないか。


 多田がそうしている間に、ちゅうじんは食べた残骸を近くのごみ箱に捨てに行き、すぐに戻ってくる。ちゅうじんは多田が顔を歪めているのを疑問に思いながらも、早く入ろうと促す。

 

 ちゅうじんに促されるがまま、中へと入っていく多田。自動ドアを通ると、スタッフの人に上に行くためのエレベーターに案内された。多田とちゅうじんは案内に従ってエレベーターの中へと入る。

 一階に到着すると、お土産ショップが見えた。京都タワーや京都関連のお土産が置いてあるらしい。


「お土産は後でな」

「まずは展望台まで行くんだよな?」

「そうそう」


 多田とちゅうじんは券売機で展望台のチケットを買いに来たのだ。辺りを少し見回すと、券売機らしき機械を発見する。土曜日なのかかなりの人が並んでおり、スタッフがお客さんを華麗に捌いていた。


 ご苦労様です……。


 内心でそう思いながら、多田も列に並んだ。どうやらまとめて人数分を購入できるらしいので、多田は財布の準備をする。


 ちゅうじんには後で徴収しよう。


 そう考えていると、多田たちの順番が来た。表示されたボタンをタップしていく多田。無事に大人二枚分のチケットを購入し終えたので、隣で様子を見ていたちゅうじんにチケットを一枚渡した。

 

「はいこれ。無くすなよ」

「ありがとうな!」

「後でお金徴収するからな」

「も、勿論だぞ」


 多田からチケットを受け取って嬉しそうに返事をするが、次の多田の言葉で緊張した声色に変わった。


 コロコロ声の調子が変わるの面白いな~。


 多田はちゅうじんが素直で単純なやつだと再認識する。あまり券売機の前で長居するものでもないので、さっさと展望台フロアへと向かうために、再度エレベーターに乗る二人。

 展望室への専用エレベーターは十一階にあるので、十一と書かれたボタンを押す多田。一緒に乗り合わせた修学旅行生をチラ見しながら、十一階へ到着するのを待っていると、チンッ! という音と共に十一階に着いたアナウンスが流れる。


「降りるのちょっと待てよ」

「あ、うん」


 修学旅行生の団体が先だと、ちゅうじんに声をかける。多田は学生たちが下りるのを待ってから、ちゅうじんと一緒に降りた。そのまま専用エレベーターの方へ行き、チケットをスタッフの人に見せると、「この先が展望室行きエレベーターになります」と言われた。


 多分あの旅行生も展望室に行くんだろうな。まあ、京都に来たらまずはここに来るよな。


 多田は仕事の際、ここに観光客を案内したことを思い出しながら、専用エレベーターへと乗車した。


「これどこまで上がるんだ?」

「確か地上百メートルまで行くな」

「へえ~、機械一つでそこまで行けるのって凄いな」


 いや、UFOで宇宙を移動できる方が凄くないか?


 多田が内心で突っ込んでいると、展望室に着いたようだ。

 エレベーターを降りると、目の前には京都市内全体の景色が広がっていた。この展望室にもかなりのお客さんが来ているようで、みんな望遠鏡を覗いたり、室内に設置されている椅子に座りながらタワーからの景色を堪能している。


「おお~! 市内全体の風景が見下ろせるぞ。なんか神様になった気分だな」

「確かに優越感があるのは分かる。にしても、有料とはいえやっぱりここも人が多いな」

「結構学生とかが多いな」


 辺りをキョロキョロ見回していたちゅうじんが呟く。

 

「さっきも言ったが、修学旅行で京都に来たらまずここへ来るからな」

「そうなのか。ちなみに多田は修学旅行どこに行ったんだ?」

「えーっと、中高ともに名古屋あたりだな。俺の班の人が水族館に行こうって言いだしたときはヒヤヒヤしたけど」

「名古屋か。機会があればこの周辺以外にも行ってみたいな」


 多田とちゅうじんが話しながら、展望室をぐるっと歩いていると、望遠鏡に空きがあるのを発見する。多田がちゅうじんに行ってきて良いぞと言うと、ちゅうじんは、真っ先に望遠鏡へと向かっていった。すると、昨日行った清水寺を見つけたのか、ちゅうじんがやけにはしゃいでいる。

 ちゅうじんが望遠鏡でしばらく景色を見ている間、多田は腕時計で時間を確認する。


「もう十一時半か。おーい、そろそろ降りて土産物見ないと時間なくなるぞ」

「えー……早くないか?」

「だって軽くご飯食べないとお腹すくだろ?」

「あ、そっか。なら早く降りよう」


 ちゅうじんは望遠鏡から目を離すと、多田と一緒に一階にある土産物ブースへと向かった。

 一階に着いた多田とちゅうじんはさっそくグッズを見始める。順番に見ていくちゅうじんの後ろをついていくと、ちゅうじんが足を止めた。


「なあ、このたわわちゃんってなんだ?」

「あー、それな。京都タワーのマスコットキャラクターだよ。望遠室でも何度か見かけただろ?」

「確かに。このぬいぐるみ可愛いから買ってもいいか?」


 ちゅうじんがそう言いながら、多田にぬいぐるみを見せてくる。


 そういや、昔にたわわちゃんの着ぐるみに遭遇したことあるけど、目に光がなくて怖かった覚えがあるんだよな。


 多田は、幼少期に家族と一緒にここを訪れたときのことを思い出す。

 

「ああ。後、三十分ほどしたらここ出るからな」

「分かったぞ」


 多田はちゅうじんに伝えてから他のグッズを見に回る。特に何かを買うわけでもなく、店の中をぐるぐる回っていると、あることに気づいた。


 この店でもハロウィンコラボやってるのか。どこもかしこもハロウィンだらけだな。今度の会議で、季節に合わせたグッズの販売でも提案してみるか。


 多田は目の前にあるたわわちゃんとハロウィンがコラボしたキーホルダーを見ながら、そう考える。多田は休みの日にもかかわらず、己が仕事のことを考えていることに気づくと、思わず頭を抱えた。

 そうしていると、会計を済ませたのかちゅうじんがこちらにやってくる。

 

「おーい、買ってきたぞ」

「よし、それじゃあ飯行くか」

「そうだな。何にしようかな~、麺類でも良いし、ご飯系も良いな」

「文化祭があること忘れんなよ?」

「忘れてないぞ」


 多田は、どんだけ食べる気だよ、と苦笑いをしながら京都タワーを出るのだった。

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