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【完結・旧ver】宇宙人が家にやってきた!  作者: 桜月零歌
第三章 宇宙人と多田家
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第54話 ついに正体がバレる!? (中編)


 バスと電車を使って移動すること二十分。ちゅうじんたちは祇園四条へと訪れていた。ここからしばらくは電車やバスには乗らないので、キャリーケースからベンジャミンを出してやる。駅から地上へと続く階段を上ると、四条大橋という橋が目に入る。下手したら橋の下を流れる鴨川に落ちるのではないかと思うほど、多くの人で溢れかえっていた。


「さっきよりも人多くないか?」

「まあ、祇園だからな……」

「ばふ?」


 人の多さに思わず遠い目になりながら返事をする一郎。今いる場所がどういう場所なのかよく分かっている一郎は、肺に溜まっていた息を全て吐き出すかのように、深く息を吐いた。ちゅうじんたちが今いる場所というのは、観光客や学生たちで連日賑わう、市内でも人気のスポットなのだ。橋の近くにはス○ーバックスや映画館などの繁華街が立ち並んでいるため、若者にとっては格好の遊び場になっている。


「よし。取り敢えず、お腹減っただろうし飯食いに行くか」

「そうだな!」

「ちょっと歩くけど良いか?」

「勿論だぞ」


 一郎に訊かれたちゅうじんは快く返事をする。一郎が行くつもりのお店は橋を渡った先にあるので、人混みの中を進んでいくちゅうじんたち。

 チラリと左の方を見てみると、橋の下を流れる鴨川が目に入った。綺麗だなと思いながら、橋を進んでいくちゅうじん。すると、ちゅうじんの傍を歩いていた人とボディバックが接触したのか、若干バックの位置がズレる。ぶつかった本人は急いでいるのか謝りもせずにさっさと行ってしまった。


「何なんだ?」

「まあ、よくあることだからな。って、鞄ん中空いてるぞ?」

「え? あ、ホントだ」


 一郎にそう指摘されたちゅうじんは中身が無事か確認する。すると、財布が無いことに気づいて、慌てるちゅうじん。


「ど、どうしよ」

「さっきの奴に取られたか」

「追いかけた方が良いよな?」

「いや、確か橋を渡った先に交番があるからそこに――」

「ばふ!」


 ちゅうじんと一郎がどうするか話していると、ベンジャミンのリードがちゅうじんの手をすり抜けた。何事かと思っていると、ベンジャミンがぶつかった人の歩いていった方向に走っていく。


「え? おい! ベンジャミン⁉︎」

「おい、うーさん無闇に動くな。って、もう行っちゃったか……」


 すぐさまベンジャミンの後を追いかけるちゅうじん。一郎がストップをかけようとしても遅かったようで、あっという間に居なくなってしまう。一郎はひとまずこのことを伝えに、交番へと走るのだった。



◇◆◇◆



「ベンジャミンが行ったのってこっちか?」


 ベンジャミンの後を追いかけるも、流石に犬の速さには追いつけなかったようで、辺りをキョロキョロ見回すちゅうじん。すると、裏通りに続く道の方からベンジャミンの鳴き声が聞こえてきた。それを聞いたちゅうじんは鳴き声のした方向へと走っていく。


「あ、いた」

「ばふばふ!」


 少し走ったところで、ベンジャミンに踏みつけられて横たわっている男性の姿が見えた。転けたのか、ベンジャミンに飛びつかれたのか、男性は呻き声をあげている。そんな男性の元にちゅうじんが近づくと、男性がお手上げだというように声を上げた。


「も、もうしませんから!」

「もし、次があったら容赦しないぞ」

「は、はいぃぃ!」


 ちゅうじんが男性に詰め寄ると、男性は怯えたような声を上げながら、スッた財布をちゅうじんに返した。ちゅうじんの金眼が光っていたので、怖かったのだろう。後はこの男性をどうするかなのだが、考える暇もなく一郎と警官がやってきた。


「あ、もう終わってたのか」

「おう! これもベンジャミンのおかげだぞ!」

「ばふ!」


 一郎がそう話すと、ちゅうじんがベンジャミンの頭を撫でながら返した。起き上がった男性はやってきた警官に捕まったようで、これから交番の方で事情聴取が行われるらしい。ちゅうじんからも軽く当時のことを聴くらしいので、一行は交番へと向かうのだった。




◇◆◇◆



 ちゅうじんと一郎は事情聴取の後、裏通りの方にある人気のお店で昼食を摂ると、先ほどの四条大橋まで戻ってきた。


「美味しかったな」

「他にも市内には美味いもんが沢山あるからな。機会があれば行ってみるといい」


 一郎が自慢げに話していると、ふとちゅうじんが川沿いへと降りる階段を見つめる。

 

「せっかくだし下りてみるか」


 機転を利かせた一郎がそう言うと、ちゅうじんはそれで良いのか、と確認をとる。

 

「橋の上を歩くよりもそっちの方が気持ちいいだろ」

「確かにそうかもな」


 ちゅうじんたちはさっそく階段を下りて、川沿いの道を歩き始めた。やけにカップルが多い気がするが、一郎の言う通り、川が近い影響なのか、橋の上とは違って涼しい風が吹いている。

 

「気持ちいいな」

「そうだろ」

「あ、ちなみにこの先には何があるんだ?」

「このままずっと歩いたら三条通りに着く。新選組で有名な池田屋があるな」


 ちゅうじんは新選組という単語を耳にすると、目を爛々とさせる。某新選組のアニメや時代劇を見ているので、ちゅうじんはまさか聖地巡礼ができるとは思っていなかったようだ。

 

「その様子じゃ知ってるみたいだな」

「勿論だぞ! よくアニメとかで登場したりしてるからな」


 一郎がそう話すと、ちゅうじんは当然のことのように新選組について語りだす。一郎たちの前を歩くベンジャミンも、時折一緒に見ているので、コクコクと頷いた。

 新選組愛を語っていると、あっという間に三条大橋に到着した。階段を上り、三条通りに出ると、しばらくしたところに池田屋が見える。


「おお! ここだぞ!」

「ばふばふ!」

「今は居酒屋になってるんだな。これは知らなかった」


 店の前には看板が立っており、当時の騒動や池田屋の間取りなどが書かれている。中に入ってみたい気もするが、多田からお酒だけは絶対に飲むなと言われているので、入店することはできない。せっかく来たというのに、中に入れないので肩を落とすちゅうじん。残念そうにしていると、看板を見ていた一郎が声をかけてきた。


「入れない代わりと言っては何だが、この通りに美味しいスイーツが提供されるカフェがあるんだ。良かったら行ってみるか?」

「行ってみたいぞ!」

「よし。そうと決まればさっそく出発だな」


 一郎の提案に乗ったちゅうじんは池田屋を後にすると、一郎の勧めるカフェへと足を運ぶのだった。



◇◆◇◆



「ただいまー」

「帰ったぞ~」

「お、やっと帰ってきたか。ご飯もうすぐできるぞ~」


 ちゅうじんたちが帰宅すると、多田が出迎えてくれた。多田がエプロンをつけているので、今日の夕飯は多田が担当しているのだろう。昨日みたいな激しい攻防はなかったようなので、一安心する。

 リビングに入ると、文化祭の準備で疲れたのか亜莉朱がソファでぐったりしていた。


「だいぶお疲れみたいだな」

「今帰ってきたところだしな。仕方ないだろ」


 多田がそう言いながら時計の方を向くので、ちゅうじんもそれに釣られて見てみると、時計の針は十九時を指していた。この家を出たのが十時頃なので、随分と市内観光をしていたのだとちゅうじんは思う。

 ちゅうじんが手を洗ったり、ベンジャミンのご飯を準備していると、夕飯の準備ができていた。今日のメニューはカレーのようだ。ちゅうじんたちはさっそく席について食べ始めた。


 そして、夕食を終えたちゅうじんは二階の客室に籠って、市内観光のついでに買った充電器を差しながらゲームを楽しんでいる。ちゅうじんの周囲にはいつもやっているように、スナック菓子の袋や紙パックのジュース、漫画が浮いていた。


「やっと最高ランクのモンスター倒せたぞ……」

「おめでとう!」


 ちゅうじんはクリアできたことに達成感を感じているのか、備え付けのベッドに寝転んだ。ベンジャミンはちゅうじんのお腹目掛けて飛び込むと、かまってほしいのか舌を出す。そんなベンジャミンを他所に、ちゅうじんはジュースを飲もうと、宙に浮いている飲みかけの紙パックに手を伸ばす。すると、亜莉朱がノックもなしに扉を開いた。


「おーい、次うーさんの番って……。えっ……?」

「あ……」


 亜莉朱は扉を開けた瞬間、目の前の光景に目を見開いた。


 あ、まずい……。


 まさか入ってくるとは思っていなかったちゅうじんは、思わず紙パックを握りつぶしてしまい、中身がプシューと零してしまう。この状況をどう言い訳しようかと考え始めようとするが、顔面にベンジャミンの前足が飛んできた。


 

「馬鹿、何やってんの」

「それはお前もだろ、ベンジャミン」


 ベンジャミンに言われて、正気に戻ったのかベンジャミンが人語を喋っていることを指摘するちゅうじん。そんなやり取りをしている間にも、我に返った亜莉朱は驚きの声を上げた。

 

「い、犬が喋った⁉︎ てか、物が宙に浮いてる⁉︎ ヤバいヤバいヤバい! おとーさん! おかーさん! ついでにお兄ー!」


 亜莉朱はテンパりながらも、下の階にいる両親と多田のところへ走っていった。その様子を止める間もなく、見ていたちゅうじんとベンジャミンはやってしまったとばかりに、ダラダラと汗を掻いている。

 

「どどどどうしよ……」

「こうなったら腹くくるしかないでしょ。ボクも君も」

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