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【完結・旧ver】宇宙人が家にやってきた!  作者: 桜月零歌
第三章 宇宙人と多田家
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第47話 疑われる宇宙人 (前編)


「いやいや、どういうことだよ⁉︎ お前、なんつー格好してんの⁉︎」

「そ、それはだな……」


 ちゅうじんが女性の姿になっていることに驚愕の表情を浮かべた多田は、ちゅうじんをリビングの隅の方に誘導させる。そして、ちゅうじんから何故そんな格好をしているのか、聞き出そうと声をかける多田。すると、ちゅうじんがやらかしたような表情をしながらこう応えた。


「ほ、ほら料理する時の雰囲気作りというか、形から入ろうかと思って。つい出来心で……」


 ちゅうじんの言い分を聞いた多田はため息を吐くと、続けてこう言った。


「だとしても、なんでこのタイミングなんだよ⁉︎ 絶対両親と妹に誤解されてるって!」

「そんなの知るかよ! 何の前触れもなく家に上げる方が悪いんだろーが!」


 多田がツッコむと、ちゅうじんは怒ったように言い返してきた。リビングの隅でコソコソ言い合っている二人を、両親と妹は困惑気味に眺めている。だんだん多田とちゅうじんの言い争いがヒートアップしてくると、傍でその様子を見守っていた一郎が口を開いた。


「と、取り敢えず一度落ち着いたらどうだ?」

「誰のせいだと思ってんだよ‼︎」

「す、すまん……」


 一郎が仲裁に入ろうとするが、この事態を引き起こした家族に言われる筋合いはないとして、多田とちゅうじんは揃って言い返す。二人揃って言い返された一郎は、止めるどころかすっかり萎縮してしまっている。


「おい、ちゅうじん。一旦、とやかく言うのは止めだ」

「そ、そうだな。取り敢えず多田の家族にこの状況を説明するのが先だ」


 多田とちゅうじんは言い合っているうちに、そんなことをしている場合ではないと気付いたのか、冷静さを取り戻す。ひとまず、立ったままの状態で話をするのも疲れるので、家族をリビングのソファに座らせる多田。

 ソファ一つだけでは自分たちの座る椅子が足りないので、ちゅうじんがダイニングテーブルから椅子を持ってきた。その場にいる全員が着席すると、しばしの沈黙が流れる。


「あの……それでこれは一体どういうことなのかしら?」

「あー、えっとですね……」


 祥子にそう言われて、どう返事をすれば良いのか分からない多田。


 どういう事と言われても、俺もいまいちよく分かんないんだって……。取り敢えず、ちゅうじんから女の姿になった理由を聞いたは良いが、それをどう説明すれば良いんだよ。


 多田は開いた口を一旦閉じると、気まずそうにリビングのテーブルを見つめた。ぐるぐると頭の中で文章を組み立てるが、上手くいかない。これは一度ちゅうじんと話し合ったほうが良いのでは、と考えた多田は隣に座るちゅうじんを横目で見る。

 すると、多田の視線に気付いたのかちゅうじんが助け舟を出した。


「そういえば、お昼まだ食べてなかったや……。説明は先に食べてからでも良いですかね……?」

「あら、そうだったのね。全然構わないわよ」

「あ、はい! 全然大丈夫ですよ」


 ちゅうじんが祥子に恐る恐る聞いてみると、快く承諾してくれた。ちゅうじんは安心したように息を吐くと、台所に向かう。

 一方、ちゅうじんのおかげで時間稼ぎに成功した多田は、この待ち時間で何を話したら良いんだと頭を悩ませていた。多田が黙っていると、一郎が口を開く。


「そういや、仕事の方はどんな感じだ?」

「んー、忙しいのは忙しいけど、何だかんだでやりがいはあるな」

「そうか」


 一郎にそう言われると、多田は頷いた。やりがいがあるのは本当で、入社三年目のでもまだまだ学べることは山ほどある。ただ、今の会社で働き続けるとなると、もう少し人手が欲しいところだ。


 ここいらで、自分のこれからについて考える必要がありそうだな。


 多田は一郎と話をしていて、思わずそう感じてしまう。


「何かあるんだったら話ぐらいは聞いてやるから、いつでも連絡して来いよ」


 一郎はそんな多田の内心を見透かしたように、多田に対して言葉をかける。それを聞いた多田は、父には敵わないなと内心思いながら、分かったと返事をした。一方、多田と一郎の会話を聞いていた妹は、じっと多田の方を睨みつけるようにして見ている。


 多分、暇だから多田の家(ここ)の中を見学したいんだよな。分かったからちょっと待て。


 多田は亜莉朱の視線に気づくと席を立ってこう言った。


「ちょっと席外すけど気にしないでくれ。すぐに戻ってくるから」

「ええ、分かったわ」


 多田は目の前の家族にそう告げると、各部屋の鍵束を持って、自身の部屋とちゅうじんの部屋へ向かう。この家には家族には見られてはまずいものが結構あるので、事前に入られないように鍵をかけていく多田。

 多田の家族は自由奔放なところがあるので、こういう場合は事前に対策しておかないといけないのだ。多田の部屋には仕事上見せられないものがあったり、それこそちゅうじんの部屋には、地球にはない光線銃や道具がそこかしこにあるので、尚更見せるわけにはいかない。

 多田は自身の部屋とちゅうじんの部屋に鍵をかけ終わると、鍵束をズボンのポケットに仕舞って、そのままリビングに向かった。


「はい、お待たせ。それじゃあ自由に見て回って良いぞ」

「やったー!」

「それじゃあ、その間にお昼食べてくるわ」

「りょーかい」


 亜莉朱は多田から許可をもらうと、家中を散策し始めた。せっかくの機会だからと両親も見て回ろうと席を立つ。


◇◆◇◆



 暇つぶしに家の中を歩いていた亜莉朱は、多田の部屋の前を通りすぎると、何かを発見した。


「ん? 何やこれ……」


 亜莉朱は不思議に思いながらそれに近づいてみる。なんだかもふもふしているので、ぬいぐるみかと思う亜莉朱。しかし、自分の兄はそんな可愛いもの買ったりするはずないしな……と亜莉朱は頭の中で自分の考えを否定する。

 そう亜莉朱がもふもふの方をじっと見つめていると、一郎と祥子がやってきた。


「亜莉朱どうした?」

「そこに何かいるんやけど……」

「んー、何かしらね」

「えっ⁉︎ なんか今、動いたんやけど……」


 亜莉朱が両親と目の前の物体について話していると、物体がもそっと動き出した。さっきまで動かなかったモノが急に動き出したことにびっくりして、亜莉朱の肩が跳ねる。すると、祥子が指先で触ってみようともふもふに近付いた。


「……ばふ⁉︎」

「え、ばふ?」


 祥子が近付いた瞬間、目の前のもふもふが突然立ったと同時にびっくりしたように鳴き声を上げる。それを聞いた祥子と亜莉朱は、ばふとは何ぞや……と頭の中にはてなが浮かんだ。二人が目の前の物体に混乱していると、一連の出来事を見ていた一郎が口を開いた。



「もしかして、これ犬じゃないか?」

「え、犬?」

「確かに言われてみればそうね。鳴き声はちょっと変だけど」


 一郎の指摘に、驚く亜莉朱と納得する祥子。一方、もふもふもといベンジャミンは、突然目の前に現れた三人に、誰だよこいつら……と言いたげな表情を浮かべている。亜莉朱は目の前のもふもふが犬だと分かった瞬間、可愛い〜! と表情を緩めながら、ベンジャミンに触れた。祥子と一郎も恐る恐るベンジャミンを触ってみる。


「めっちゃもふもふやん!」

「ちゃんと手入れされてるみたいね」

「にしても、太郎から犬飼ってるなんて聞いてないんだが……」


 亜莉朱と祥子はベンジャミンの毛並みを堪能している。そんな中、一郎は何故犬を飼ってることを言ってくれなかったんだと、我が息子に対して思うのだった。

 


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