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【完結・旧ver】宇宙人が家にやってきた!  作者: 桜月零歌
第二章 宇宙人と企画開発課
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第39話 美ら海水族館 (後編)


 多田はちゅうじんが深海エリアに向かうのを見届けると、近くにあった自販機で缶コーヒを買った。それを持って休憩スペースの椅子に腰掛ける。多田は缶の蓋を開けると、飲み始めた。しばらくすると、頭痛とムカムカとした気持ち悪さが抜けていく。


「はあ……」


 多田がため息をついて、ボーッと手の中にある缶コーヒーを眺めていると、聞き覚えのある声が上から降りかかってくる。ふと、斜め上に視線を上げると多田の目の前に王子がいた。


 なんでこんなところにコイツがいるんだ……。


 多田はそう思いながら王子に声をかけてみる。すると、王子は黒い笑みを浮かべてこう言った。


「いや〜、下条から多田とうーさんが水族館にいるって聞いてね。沖縄の水族館の偵察ついでに、お前の弱ってる姿を拝みに来たわけ」

「お前なあ……。んで、どうして俺が水族館嫌いなこと知ってんだよ」

「普通に考えたら誰だって分かるでしょ」


 自分を嘲笑いに来たと言っている王子の顔面に、缶コーヒーを投げようかと一瞬考えがよぎるが、なんとか抑える。


 コイツ綺麗な顔して、どこまでもクズな性格してるよ。ホント。


 内心そう思いながら王子を睨みつけると、王子があっ! と声を上げた。


「なんだよ。まだなんかあるのか?」

「いや、そういえばうーさん何処かなって」

「うーたんなら今は深海エリアじゃないか? ベンジャミンを引き連れて回っているはずだが……」

「あ、そう。それじゃあまた空港で」


 多田が何を言い出すのかと警戒しながら、王子の返答を待っていると、ちゅうじんは何処かと聞いてきた。多分、一緒に来たのにこの場にいないことが引っかかったのだろう。王子はそれだけ聞くと、去ってしまった。


 マジでアイツ何しに来たんだよ……。


 多田はそう思いながら、王子が去っていくのを見届ける。コーヒーを飲んだおかげか、さっきまでの頭痛やムカムカ感がいつの間にか無くなっていた。多田は昔から水族館に来ると体調を崩すのだ。それは魚が苦手というのもあるだろうが、何よりも暗い場所と明るい場所を何度も行き来しているから、というのもあるのだろう。


 王子が去ってから五分ほど経った頃。ちゅうじんとベンジャミンは深海エリアから戻ってきた。手には土グッズ売り場で買ったのか大きめの紙袋が握られている。


「よっ! もう大丈夫そうか?」

「ああ。何とかな」

「ばふばふ」


 ちゅうじんが多田にそう話しかけると、多田は大丈夫と応える。ベンジャミンは多田のことが心配なのか、多田に擦り寄ってきた。多田はベンジャミンの身体を優しく撫でると、椅子から立ち上がる。


「もう行きたいところはないか?」

「あー、そうだな……」


 多田がそう訊くと、ちゅうじんはパンフレットを取り出して考え始める。ちゅうじんが口を開くのを待っていると、館内アナウンスが流れた。


『この後、十三時からイルカショーを開始いたします。ご観覧のお客様はイルカラグーンにお越しください。繰り返します――』


 すると、アナウンスに耳を傾けていたちゅうじんがこう言った。


「それじゃあ、最後にイルカショー行ってみたいぞ!」

「ん。ならさっそく行ってみるか。ベンジャミンも良いよな?」


 多田は言葉が通じるわけがないと思いながらも、そうベンジャミンに話しかける。すると、ベンジャミンが嬉しそうに吠えた。これは行きたいと解釈して良いだろう。イルカショーを観に行くことになった一行は、さっそく会場であるイルカラグーンへと向かうことに。


 会場に着くと、アナウンスからまだ十五分も経っていないというのに、観覧席は沢山のお客さんでいっぱいになっていた。それだけこの水族館のイルカショーは人気らしい。空いている席がないか確認しながら進んでいく多田。皆、水にかかりたくないからか後ろの方の席に座っているので、前の方の席しか空いていないようだ。仕方なく多田たちは前から四列目の席へと腰を下ろす。


「ここじゃ濡れるかもしれないな」

「そんなに水飛沫が飛んでくるのか?」

「まあな。一応、最前列と二列目に座ってる人にはカッパや傘が配られるようだが……」


 ここで派手に濡れてしまえば、飛行機に乗れないかもしれない。万が一のことがあるため、多田は席を立つと、カッパを配布しているスタッフの方へと向かった。多田がスタッフに声をかけると、快くカッパと傘を貸してくれる。多田はそれを持って席に戻ると、ちゅうじんにカッパを渡した。


「はいよ」

「ありがとな!」


 ちゅうじんは多田からカッパを受け取ると、服の上から羽織り始める。多田も同じくカッパを羽織り始めた。そして、水が顔にかからないようにと、多田は傘もちゅうじんに渡す。これで完全防備の完成だ。

 それからしばらく待っていると、イルカショーが開始された。会場全体に曲が流れ始め、それに合わせてイルカたちがパフォーマンスをする。イルカがジャンプをするごとに、会場全体が歓声に包まれた。


「おお〜! イルカのジャンプ力凄いな! それにちゃんと指示通りに飛んでるぞ!」

「ばふばふ!」

「うおっ! やっぱり四列目でも結構かかるな」


 ちゅうじんとベンジャミンが目の前の光景にテンションを上げている中、水がかからないように傘を構えながらパフォーマンスを見る多田。


 これはカッパと傘借りてきて正解だったな。じゃないと今頃びしょ濡れだぞ……。


 多田がそう思いながら演技を見ていると、一通りの演技が終わったようで、パフォーマーがマイクを手に喋り始めた。話の内容からして、次にやるのはイルカとの触れ合いで、お客さんの中から一人を選んでイルカに指示を出してみようというものだった。


「それじゃあ、実際にやってみたい人は手を挙げてください」


 パフォーマーがそう言うと、チラホラと手が挙がった。そして、案の定ちゅうじんも挙げている。多田は思わず、マジかよと頭を抱えた。一通り手が挙がったところで、パフォーマーが指名をするためにマイクを口元に持ってくる。


「えー、ではそうですね……。四列目に座っている灰色の髪の人行きましょう!」

「え、マジか! やったー!」

「薄々分かってはいたけどこうなるか……。おい、くれぐれも問題は起こすなよ?」

「分かってるぞ!」


 指名されたちゅうじんは大喜び。一方の多田はちゅうじんに問題だけは起こすなと注意する。ちゅうじんは指名されたことが嬉しいのか、多田の言葉に即答するとステージの方へと向かっていった。多田は本当に大丈夫かと緊張しながら見守る。

 ちゅうじんは、パフォーマーから簡単な説明を受けると、イルカの傍に寄った。まずはイルカと触れ合うようで、ちゅうじんはイルカのおでこに手をやる。しばらく触れ合っていると、イルカに指示を出してみるようにパフォーマーに言われた。


「それではお願いします!」

「了解だぞ!」


 さっそく教えてもらった通りにちゅうじんがやってみると、イルカが高くジャンプする。その光景を見た観客がおお〜! と歓声を上げる。そのまま次々と指示を出していくちゅうじん。この子は案外センスが良いのかもしれないと、パフォーマーは遊び心で難しい指示をちゅうじんに教える。しかし、それを難なくこなすちゅうじん。

 その様子を見ていたパフォーマーは驚愕の表情を浮かべている。それもそうだろう。パフォーマーでさえ二年はかかった演技を、ちゅうじんは一発でやり遂げているからだ。


「マジかよ……」

「これで全部か?」


 ちゅうじんの凄さに、パフォーマンス中にあるまじき言葉を思わず発してしまうパフォーマー。教えてもらった指示を全てやり終えたようで、ちゅうじんがパフォーマーに声をかけた。はっと我に返ったパフォーマーは会場の観客たちに拍手を促す。拍手が鳴り止むと、ちゅうじんは多田の元へと戻る。


「お疲れ様」

「おう! 楽しかったぞ」


 ちゅうじんが感想を述べるとすぐにエンディングに突入し、ラストにパフォーマーがお辞儀をし終わると、イルカショーは終演を迎える。ちゅうじんは非常に満足したようで、満面の笑みを浮かべながらイルカラグーンを後にしたのだった。


※現実の美ら海水族館はペットを連れて入ることはできません。作品の都合上ここではペット可の設定にしております。

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