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【完結・旧ver】宇宙人が家にやってきた!  作者: 桜月零歌
第二章 宇宙人と企画開発課
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第35話 温泉の後の牛乳は美味い (前編)


 ビーチバレーが終わって旅館に戻った一行は、一度自室に戻って夕食までの時間を自由に過ごすことに。多田は久々に動いて疲れたのか、ベッドに身を預けて寝転んでいる。対するちゅうじんはベンジャミンのおもちゃを持ってきたリュックの中から出している最中だ。

 ビーチバレー中は大人しく観戦していたベンジャミン。だが、皆が白熱した試合をしているのを見て、自分も体を動かしたくなったようで、今はボールのおもちゃで遊んでいる。その様子を微笑ましい表情で見ていたちゅうじんはスーツケースに入れてあったしおりを出して、これからの予定を確認し始めた。


「えっと……夕食が終わった後は温泉に入るのか。お風呂と似たようなものって下条が言ってたけど、実際どうなんだ?」


 ちゅうじんはスマホを取り出すと、この旅館のホームページを検索する。指でフリックしながらページの中を見ていく。すると、温泉と書かれた項目を見つけた。見出しには沖縄の天然温泉、入ると肩こりが治ったり、美容効果もあるなどと書かれている。本当か? と疑っていると、温泉の中の画像が映し出された。どうやら、温泉に入りながら外の沖縄の風景が楽しめる作りとなっているようだ。

 その後も、ついでだからとこのホテルの情報を調べたり、明日の自由散策で行きたいところをピックアップしていくちゅうじん。いつの間にか多田は眠りについているようで、スヤスヤとわずかに寝息が聞こえてくる。

 

 時間を潰すこと一時間。部屋に備え付けてあるチャイムの音が鳴った。誰だろうかとちゅうじんは思うも、一旦出てみることに。扉を開けるとそこにいたのは下条だった。


「どうしたんだ?」

「もうすぐ広間に集まる時間なので、ご一緒しようかと」

「あー、なるほどな。ちょっと待っててくれ」


 ちゅうじんは下条にそう言って一旦扉を閉めると、ベッドで寝ている多田を起こしに向かう。


「おーい、もうそろそろ広間に集まるから起きろー」

「っ⁉︎ ……俺、いつの間に寝てたんだ」

「疲れてたんだろ。早く準備しろよ。下条が待ってる」

「マジかよ。一瞬、待ってくれ」


 多田は必要なものをポケットに入れたり、寝癖を手早く直し始める。その間にちゅうじんは、ベンジャミンのご飯を持ってきていた餌入れに入れた。それを黙々と食べ進めるベンジャミン。

 ちゅうじんはその様子を見ていると、準備が終わった多田に声をかけられる。ちゅうじんはすぐに立ち上がると、多田と共に下条のいる廊下へと向かう。


「ごめん。待たせたな」

「いえ、大丈夫ですよ。先輩がなかなか起きなかったら、強制的に起こしに行くところでしたけど」

「お、おう」


 多田が下条に向かって謝罪をすると、下条は大丈夫だと応える。しかし、後半部分の言葉が物騒なだけに、多田は顔を引き攣らせながら返事をした。


「それでは行きましょうか」

「何が出るのか楽しみだぞ!」


 多田たちは二階にある広間へと歩き出した。



◇◆◇◆


 

 広間に到着すると、旅館のスタッフが料理の準備をしていた。課長や夜宵たちは先に席についており、料理を並べ終わるのを待っている。ジュリアが多田たちに気づいたのか、こっちに向かって手招きしていた。多田はそれに気づくと、空いている席に座る。


「皆、来るの早くないか? いつもこんぐらい早めに行動してくれ」

「普段は無理でしょ。多田を揶揄うことに生を見出してるんだからさ。遅れてくるのは当然だよ」

「おい、コノヤロウ」


 王子の言葉に多田はイラつきを見せる中、ちゅうじんは次々と置かれていく料理に目を輝かせている。一同が談笑にしゃれ込んでいると、料理の準備が終わったようで火鉢に火がついていた。料理の中には生の肉があるので、それを焼くためだろう。

 スタッフは一通りの準備を終わらせると、広間を出ていった。完全に出ていったのを確認すると、課長がいただきますの挨拶をする。皆もそれに倣うと、各自料理を食べ始めていく。

 料理の中には沖縄名物のゴーヤチャンプルも含まれており、ちゅうじんはさっそくそれに手をつけてみる。ゴーヤを口に運んで噛んでみると、ゴーヤ特有の苦い味が口の中に広がった。


「おお……なんか苦いぞ」

「そりゃあ、ゴーヤだからな」

「うーさんはゴーヤ食べるのは初めてか?」

「んー、そうだな」


 そう話ながら、出された料理を食べていく一同。途中、多田は海鮮料理が苦手ということが判明し、王子がちょっかいを出してきた。だが全員なんやかんやで完食する。お腹いっぱいになった後は温泉だ。

 広間にて一旦解散すると、それぞれ荷物を取りに部屋へと戻り始めた。



◇◆◇◆



 多田が部屋の扉を開錠して扉を開けると、ご飯を食べ終わったベンジャミンが寝ていた。初めて飛行機に乗って、見知らぬ地にで過ごしていたせいで疲れてしまったのだろう。犬は耳がよく、尚且つベンジャミンは人の気配に鋭い。

 ちゅうじんはベンジャミンを起こさないように温泉に入る準備を始めた。多田も同様に、なるべく音を立てないようにスーツケースの蓋を開ける。

 

 十五分後、多田とちゅうじんは準備が終わったようで、静かに部屋を出る。手さげカバンを手に持って、温泉のある一回へと向かった。

 青の暖簾をくぐると、結構な人が利用しているのが分かる。多田とちゅうじんは空いているロッカーに荷物を置くと、テキパキと服を脱いでいく。温泉に入る準備が完了すると、浴室へと続く扉を開けた。

 中はかなりの広さがあり、温泉の種類も複数ある。そして、何より最近話題のサウナも完備されていた。初めて見る光景にちゅうじんの口角が上がる。


「おーい、早く身体洗えよ〜」

「おう!」


 普段家で入っているお風呂よりもデカい浴槽を見ていると、多田に早くしろと声をかけられてしまった。ちゅうじんは急いで洗い場に行き、身体を洗う。それが終わると、ちゅうじんは比較的空いている浴槽に浸かり始めた。多田もその隣に浸かると、背もたれにもたれながら息を吐く。

 ちゅうじんは浴槽のお湯を両手ですくうと、色がいつも入っているお風呂とは違うことに気づいた。


「なんかこのお湯、茶色くないか?」

「あー、それは天然温泉だからだろ」

「天然温泉……そういえば、旅館のホームページそんなことが書いてあったぞ」


 これが天然温泉ってやつなのか。お風呂一つとっても色んなやつがあって面白いな。


 そう思いながらお湯に浸かっていると、多田がせっかくだから他のやつにも浸かってみるかと提案された。ちゅうじんが了承すると、一旦お風呂から出て他の場所へと移動する。


 そんなこんなで浴場内の温泉を全部制覇する勢いで浸かっていると、さっきまで元気にしていたちゅうじんが急に大人しくなった。不自然に思い、隣にいるちゅうじんの方を見る多田。


「おーい、どうした……ってお前、顔真っ赤じゃねえか!」

「なんだか視界がボヤけてきたぞ……」


 どうやらちゅうじんは、お湯に長時間浸かりすぎてのぼせてしまったらしい。取り敢えず浴槽からちゅうじんを出して、近くにあった桶に冷水を貯める多田。すると、それを思いっきりちゅうじんの頭から被せてやった。それから数秒すると、意識がはっきりしてきたのか、急いで脱衣所へ向かって浴衣に着替える。ちゅうじんが近くにあったソファに座って休んでいると、多田が何やら片手に持っていた。


「それなんだ?」 

「取り敢えずこれ飲んでみろ。スッキリするから」


 そうやって手渡されたのは、番台近くに売っていたフルーツ牛乳だった。のぼせて喉が渇いていたちゅうじんは、瓶の蓋を開けると一気に飲み干す。すると、感嘆の声を上げながらちゅうじんが質問してきた。


「これ美味いな! なんて言うんだ?」

「フルーツ牛乳だよ。よく温泉施設とかに売られてて、風呂上がりに飲むと美味いんだよな〜」

「なるほどな! なんかさっぱりしてて飲みやすいぞ」

「普通の牛乳だと飲みにくいかと思ってそれにしてみたが、気に入ったようで何よりだ」


 多田は嬉しそうに牛乳について語る。ちゅうじんは初めて飲むフルーツ牛乳に目を輝かせている。そうしていると、何やら暖簾の外の方から音が聞こえてきた。何だろうと思い、ちゅうじんは暖簾をくぐって様子を見に行く。すると、そこには何故か人だかりができていた。遅れて出てきた多田も疑問符を浮かべている。


「何だ何だ?」

「あ、人だかりの中心にいるのって夜宵と下条じゃないか?」

「え?」


 よく見てみると、ちゅうじんの言う通り夜宵と下条の頭が見えた。二人ともお風呂上がりで浴衣を着ている。近くに寄ってみると何やらピンポン玉の弾ける音がしていた。

 そう、二人がやっていたのは卓球。しかも課長が審判をしていることから、またかと察した多田は頭を抱えるのだった。


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