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【完結・旧ver】宇宙人が家にやってきた!  作者: 桜月零歌
第二章 宇宙人と企画開発課
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第28話 企画開発課へようこそ! (後編)



 ちゅうじんが企画課の面々と談笑している一方で、多田は会議の準備のために資料をテーブルに並べていた。


「ハクション! ……なんか寒気するんだが、気のせいだよな」


 真夏だというのに、くしゃみをする多田。エアコンの温度は適温に設定されてるので、冷房のせいではないだろう。


 また王子とかが良からぬことを考えてるんじゃないだろうな……。にしても、とっくに開始時間を過ぎているのに、一向に動こうとしないのだろうかこの輩は。


 多田は会議の準備をほったらかしにしている企画課のみんなを見る。ちなみにこの会議では、明日のツアーの最終確認が行われる予定なのだが、この場にいる社員含め、上司の課長までいないのは流石におかしい。多田は、取り敢えずこの場にいる皆に声をかけることにした。


「会議はどうするんだー?」

「おい、この状況が見て分からないのか? 後、先輩には敬語つけろよ」

「ア、スイマセン」

「全く多田は真面目すぎるんだよ。たまには息抜きさせろ」


 夜宵は、普段は絶対に見せないような優しそうな目でベンジャミンを見ていたが、多田から声をかけられると、その目は一瞬にして人を殺せそうなぐらいに変貌した。 その目を見た多田は思わず萎縮してしまう。傍に居たベンジャミンも驚いているようだ。


 いつも仕事押し付けてくるくせによく言うな……。


 多田はそう思いながら、呆れた表情を浮かべる。


「ばふ……」

「あ、怖がらせてすまん。ほら、よーしよし!」

「ばふ〜」


 ベンジャミンが夜宵の圧に怯えていると、夜宵はごめんの意味を込めてベンジャミンを撫で回す。

 すると、仕事の準備を終えた下条がやってきた。


「先輩、良ければ手伝いましょうか?」

「おお〜、助かるわ。流石、企画課の良心だな。俺は良い後輩を持ったよ」 


 多田が下条にお礼を言っていると、多田の背後に大きな躯体の中年男性が現れた。


「おーい。お前らそこで何してる?」

「あ、課長」


 課長と呼ばれた男性が企画課に来た瞬間、さっきまでのカオスな空気はどこへやら、ちゅうじんを除く全員が姿勢を正した。それと同時に、さっきまで騒がしかった室内に沈黙が降りる。


 ヤバい、これは怒ってる……。絶対怒ってる!


 課長の声色がいつもより低いのを察した多田は、背筋をピンッと伸ばした。イマイチ何なのか分かっていないちゅうじんはポカーンとしている。重苦しい雰囲気の中、沈黙を破ったのは下条だった。


「あの、実はですね……」


 下条が今の状況を説明し始めた。室内には彼の声だけが響いており、課長は腕を組みながら聞いている。下条が事情を説明し終わると、課長がうーんと唸りながら考え込む。この場にいる一同、固唾を呑んで課長の言葉を待っていると、課長が口を開いた。


「なるほど。ということは、そちらのうーさんが見学者と言うわけか。俺は和住柳二(わずみりゅうじ)。この企画課の課長をしている。今、うちの課は繁忙期なわけだが、それでも良ければゆっくりしていってくれ」

「は、はい!」


 課長にそう言われて、勢いよく返事をしたちゅうじん。どうやら重苦しい空気から脱することができたようで、多田を含む社員はホッと息を吐いた。

 ちゅうじんは、多田の上司は思っていたよりも良い人そうだと分かって安心する。ちゅうじんの滞在が認められたことで、社内が軽快な雰囲気に包まれた。

 しかし、課長が微妙な表情をしているのが多田の視界に入る。何かあったのかと思い、聞いてみる多田。すると、課長が非常に言いづらそうに言葉を発した。


「あー、明日から始まるツアーだが、東京に台風が接近する影響で中止になった。だから空いている期間に勉強と休暇を兼ねて、明後日から一泊二日で社員旅行に行く」

「おお! やったー!」

「やりましたね!」

「……マジかよ」


 それを聞いた下条とジュリアは思いっきりハイタッチをする。夜宵と王子も喜びの表情を浮かべているが、多田は突然のことに目を見開いて驚愕していた。何故なら、中止になったツアー企画を担当していたのは多田だったからだ。多田は課長に延期は無理なのかと問うが、決定事項だと跳ね返される。


「今まで頑張ってきた東京ツアー企画が……」

「まあ、良いじゃないか。現地で仕事をしなくても済むんだから」


 そう多田の肩を持って慰めるのは王子。しかし、その言葉とは裏腹に目はニヤけていた。対する多田は、いつもサボってばかりいるこいつにだけは言われたくないと、怒りを滲ませる。ちゅうじんは、王子のことをえげつない奴だと再認識したようで、苦笑いしている。


「あー、皆。喜んでるところ悪いが、明日までに今回のツアーの片つけておけよ。帰ってからやるようじゃ遅いからな」

「はい!」


 威勢よく返事をした多田たちはすぐさま作業に取り掛かろうとしたが、それはちゅうじんの声によって遮られた。


「えっと……社員旅行ってなんだ?」

「え?」


 ちゅうじんの問いかけに、その場にいた全員が度肝を抜かれる。一斉にちゅうじんの方へ視線が集まる中、多田がちゅうじんに向かってその言葉の意味を説明し始めた。


「あー、社員旅行ってのはな、俺らみたいな社員を労うための旅行だ。条件にもよるが、会社のお金で旅行に行けるんで、俺たちにとってはご褒美みたいなもんなんだよ」

「うーん……?」


 多田がそう説明すると、微かに首を傾げるちゅうじん。説明してもイマイチ伝わっていないようで、困った表情を浮かべる多田。そこで課長が助け舟を出した。


「口頭で説明されても分からんだろう。ここはいっその事、俺たちと一緒に社員旅行に行くってのはどうだ?」

「え、良いのか⁉︎」

「ああ。皆もそれで良いよな?」


 まさかの提案にちゅうじんが驚きの声をあげる。課長が皆に了承をとると、満場一致で縦に首を振った。それを確認した課長が続けて言う。


「だそうだ。どうする?」

「勿論行くに決まってるぞ!」


 ちゅうじんが元気よくそう言うと、一同からやったー! と喜びの声が上がる。だが、課長がすぐさまゴホンッと咳払いをすると、その場が静かになった。課長は怒らせたらとても怖いのだ。全員が課長の方を見ると、課長が口を開く。


「ちなみに行き先だが、沖縄だ。明後日には台風が去る頃だろうからな。ちょうど良いだろう」

「沖縄! ってことは海に行けるんですか⁉︎」

「行こうと思えばな」

「やったー!」


 ジュリアの問いかけで、海に行ける可能性が出てくると、企画課の面々は大喜び。しかし、多田の表情は何故か硬くなっていた。それに気づいたちゅうじんが声をかける。


「どうしたんだ?」

「いや、何でもない。ちゅうじんは沖縄がどんなところか知らないだろうから、下条辺りに聞いてきたらどうだ?」

「分かったぞ!」


 多田はそう言うが、その表情は硬い。何かあるのだろうかとちゅうじんは眉を顰めるが、今は社員旅行に行けることが嬉しいようで、沖縄がどんな場所なのか下条たちに聞きに回っている。

 こうして、ちゅうじんを含めた企画課の皆は沖縄に行くことになった。

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