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ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


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勇者アルク3

「あなたは普通に強いでしょう?」


 あなたの仲間の魔術師が魔法使いでないのに強いのと一緒だわ。


 女が笑う。



「じゃあ、何故姫君だと言う」


 幻術らしきものに取り込まれてしまった自分にイライラするし、無力ではないと言われても意味が無いように感じる。



「だから、これからお見せしますわ」


 私たちの始祖とあなた達の過去を。


 そう女は言った。それを見せるための幻術なのか。

 この女が魔術を使っているのか。


「ええ。私ではないですから私を攻撃をしても無駄ですよ」


 会話にならない。

 うちの魔術師ともまるで会話が成立しないが、どいつもこいつも魔術師ってやつはまともに会話もできないものなのか。


 まるで少女の様に女が笑い声をあげる。


「あなたは勇者である限り、いくつかの例外を除いて不運には見舞われないのですから。わざわざ最悪の事態を予想しながら行動するのは、止めた方がよろしいですよ?」


 そういうと椅子と机も視界から消える。


 一瞬明るくなった視界は一瞬でどこかの上空の様な場所になった。


 高い塔がいくつも並んで、鐘がなっている。


 リン、ゴーンという音がお互いに反響しあっている様に耳にはいる。


 美しい音色が聞こえるけれど、体の芯が冷える。

 高い塔はあの白い街の物にどれもよく似ている。



 今の王侯貴族が住んでいる城とも、遺跡の類とも全く違う。


「これは、いつのどこだ?」


 俺が聞くと、女は面白そうに笑う。

 腹が立つ。


「まだ、世界が二つに分かれる前の東の国ですわ」


 演技がかった口調で女は言う。


「二つ?」


 意味の分からない事を 高い塔がいくつも並んで、鐘がなっている。


 リン、ゴーンという音がお互いに反響しあっている様に耳にはいる。


 美しい音色が聞こえるけれど、体の芯が冷える。

 高い塔はあの白い街の物にどれもよく似ている。


「あなたはきちんと、世界の事実を知るべきです」


 女は言った。何を言っているのかはよく分からなかった。

 けれど、女があの白い街の事を知っているという事実だけは何となくわかった。


「あなたは、あの方と協調できるはずですから」


 あの方が誰だかは知らない。

 

 新しい宗教団体からの勧誘はよくある。

 勇者は広く信者を集めるための顔としてとても便利なのだろう。


 この女もそれの類なのか?

 神託の類の能力で人を集めたいという事なのだろうか。


「魔術師が何かを召喚するとき、あの生き物はどこからやって来るか知っていますか?」

「異界からだろ」


 また、女が唐突に話す。

 常識的な質問だ。あの魔術師なら異様な早口でどこから召喚するのをペラペラと説明してくれそうだが、そこまでの無駄知識も無い。


「じゃあ異界ってどこでしょう?」


 それに世界はここと異界の二つだとして、あなたはどこに生贄として送られようとしてたんでしょうね。


 思わずもう一度舌打ちが出た。


「お前は、あれを知っているのか?」


 思わず腰につけていた短剣を抜いていた。


 知的探求心等無い。ただあるのは、あれをやろうとしていた者とその関係者をどうにかしたいという欲求だけだ。


「だから、勇者と呼ばれるものの中でもあなたの元に参りました」


 あなたはご自身が誰なのかを今のうちに知るべきですわ。少なくともあの方に直接お会いする前に。


 だから、包み隠さず真実を。と女は言った。


「あちらを――」


 女が指をさす。


 真っ赤な円が何重にも描かれていた。

 多分あれは魔法陣と呼ばれるものだ。


 何をするための物かは俺には理解できない。


 その真ん中に、一人の男が引きずられてくる。

 小柄な、どこか小汚く見える男だ。


「あれが最初の勇者ですわ。」


 憐れむ様な声だった。


 その男は、自分の持っている勇者のイメージから酷くかけはなれていた。


 碌でもない事を言ってもしても相手が魅了されてしまうというのは勿論あるが、それでも勇者という存在に過去何人か出会ってきた。それらそあれはあまりにも違う。


 自分について考えるのは糞だが、それでも勇者というものはカリスマ性というものを兼ね備えているものとされている。


「あなた方のそれは、アレから身を守るために積み重ねてきたものですわ」


 女の言うアレの意味はすぐに分かった。

 魔法陣の真ん中で男が首を切られる。


 断末魔の声が聞こえた気がして気分が悪くなる。


「最初の世界において、あなた方は生贄役でした」


 一瞬嫌そうな顔をしたものの女はすぐに気を取り直したらしくこちらをみてそういう。


 正直、それを聞いても何も思わなかった。

 はあ、そうですか。以外の感情がわかない。


 そもそも勇者というものが一子相伝の様なものでは無いのだ。


 自分の親が生贄でしたと言われればさすがに驚くかもしれないが、別にそういう訳でも無い。


「で、生贄だとしてそれが?」


 クスクスと面白そうに女が笑う。


「生贄の血を持ったものを古来人々は勇者と呼んでいました。

勇者は死ぬために生まれ、世界のためにああして命を落とし続けました。」


 ある時勇者は一人の魔法使いと出会います。


 突然話が変わったことでようやく少しだけ話に興味を持てた。

 貴方は生贄の血族ですから生贄になってくださいと言われるのだろうと思っていたのだ。


「勇者は魔法使いにお願いをしました」


――どうか、我々が迫害されない様見目麗しくしてください。


「魔法使いは勇者の願いを叶えました」

「だから、俺の見た目は人から羨ましがられるって話か?」


 それともその魔法使いに感謝しろっていう説教なのだろうか。


「人々は誰も勇者を蔑まなくなりました」


 女は俺を無視して話続ける。


「けれど、それでも世界は生贄を必要としていました」


 世界はという主語はおかしいだろう。

 人々が、か特定の宗教がという話が普通だ。


「世界、で正しいですわ」


 女は微笑む。


「魔法使いは勇者を愛していました」


 だから、勇者が生贄にならない方法を必死に探しました。


 探して、探して、探して、探して。

 魔法使いはようやく方法を見つけました。


 女の笑顔が気持ち悪いと感じる。


「あの魔術師は、偶然正解にたどりついたにすぎません」


 当たり前の様に言う。


 足手まといであれば切り捨てるつもりだった。

 特にあの魔術師に対しては興味もない。


 けれど、さすがに腹が立った。


 この女の言っている正解は、魔術師が足を切り捨てた事実だ。

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