世界との楔3
◆
空が暗くなる。
きちんと空の状態を確認してから方法を選んだつもりだ。
こんなに急激に天候が悪くなるはずが無かったのだ。
飛空士としての知識も、航海士としても知識も専門家にはかなわないものの自然を知るという部分に関しては魔術学校で学んだのだ。
さすがに今の状況がおかしいこと位分かる。
ポツリポツリと雨が降り出す。目の前に見える雲は黒く厚い。このままだと雨足はもっと強まるだろう。
雨の全てをはじく様魔術をかけることは可能だが、このままだと暴風に巻き込まれることは明らかに見える。
かなり先に稲光が見えている。
全てを魔術ではじくよりも、一旦休憩するべきだろう。別に先を急いでいる訳では無い。
「アルク」
声をかけるとアルクは「……なんだ?」と返事をする。多分アルクは常に眠りが浅い。
理由はなんとなく想像が付くが、あまりそれについて掘り下げたいとは思わなかった。
アルクは立ち上がると目を細める。
「さっきまでは晴れてたよな」
「ああ」
「魔術の痕跡は?」
「少なくとも誰かの魔力は感じられない」
アルクは溜息をつく。
「偶然だと思うか?魔族の襲撃か?」
「うーん。魔族は無いだろ」
「根拠は?」
「痕跡が無い」
「じゃあこの“世界”とやらの仕業か?」
「神官ってことか?」
「そいつらもそうだし、そいつらが奉ってるものも含めてだ」
「そっちの知識は大してないんだよな。調べようとしても部外者厳禁の世界だから」
で、お前の判断は?アルクが忌々しそうに聞く。
「この状態は異常なのは確かだ。
俺は神様ってやつは信じて無いからこの状況を神様がやってるとは思わないんだけど、もしこれだけの事を作為的にやっているのなら突っ切ろうとしても妨害されるかもなあ」
だらだらとしているだけの冒険者パーティにするしうちとは思えない。
世界にしろ、それ以外のものにしろ、もっとやる気のあるやつらと相対してほしい。
「降りたとしても碌なことにはならないだろうな」
アルクがぽつりとそれだけ言ったのが印象的だった。
「ところでユナの姿が見えない様だけど?」
アルクが言う。
「ちゃんといるわよ。濡れるの嫌いなのよね」
籠の中からユナの声がする。俺は契約で繋がっているのでどこにいるかは知覚できるが姿は見えない。
「姿が消せる妖精もいるって聞くがこの状態の事か?」
「多分アルクが知ってるやつの一種だな」
「なら、しばらくユナはそのままの方が良いだろうな」
眼前に丁度いい街が見えて来た。地図を確認するがそんな街は地図には存在しない。
街の中央にある神殿が真っ白で印象的な街はまるで突然現れた様に見えた。
「罠だろうな」
「まあ、それ以外ないだろう」
チラリと俺の持つ地図を見たアルクが溜息交じりで言う。
どうしようも無いのであれば行くしかない。
「止めた方がいい。って言いたいところだけどこれ逃げる方法なさそうよ」
ヤバくなったらアタシは契約切って逃げるからね。ユナは姿を消したままそう宣言した。




