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ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


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世界との楔2

 方向は眼前に魔力の球を放出すればそれを食べようとそちらに向かう。

 単純だけれど、扱いやすい。


 人同士のコミュニケーションというより動物に近い感覚なのでいい。


 対人間のコミュニケーションとは違うという事は分かっている。ユナにしたって根本の価値基準が同じかどうかなんてわかりやしない。

 けれど、人じゃないと思えることが逆に楽に向き合えるのだ。


 魔術師の中には妖精たちを人間扱いする者、しない者様々だ。さすがに物扱いする連中とは関わり合いになりたくないがこの美しい生き物たちを自分達と同じと見るか違うと見るかは自分自身でも答えは出ない。


 ふわふわと漂う様に浮かぶ妖精ちゃんは種族的には植物に近い。

 可愛らしい姿を見ながら目的地に向かって飛ぶのを見ていると幸せな気分になる。


 アルクは籠の端に腰を下ろして既に目をつむって寝る体制になっているし、ユナはつまらなさそうに後から飛んできている。


 ナタリアだけが籠から上を見上げて妖精ちゃんを見たり地上を眺めたり忙しそうだ。


「トラブルがあれば多分ユナさんが教えてくれる筈だから、ナタリアも少し休んだら?」


 俺が言うとナタリアは「あ、あの……。」と言いよどむ。


 それにどんな意味があるかなんてわかる訳も無くぼんやりとナタリアを眺めていると、しばらく間があいてから、小さな声で「空を飛ぶなんて初めてなので、珍しくて。はしゃいでしまって済みません」と謝られてしまった。


「いや、別に嫌な訳じゃなくて……」


 ただ、疲れているのであれば休んで欲しかっただけだ。

 けれどそれが上手く伝えられなかった。


「私もいつか空を飛べたり、妖精を召喚したりできますか?」

「勿論出来ると思う」

「そうですか!」


 ナタリアが話題を変える。逆に気を使わせてしまったみたいでいたたまれない。


 魔術適正があるのに今まで何故かその素養を周りに知られることの無かったナタリアだが、素養はそれなりにあるのだ。

 やり方次第では色々なことができる様になるだろう。


 本当は、魔術学校なりなんなりに行かせてあげるのが正しいのだろう。


 そんな事を望める状況では無いのだけれど、時間稼ぎが成功した暁にはなんとかそちらの道も考えられればいい。勿論その状況でナタリアがそれを希望すればだけれど。



「風が気持ちいいですね」

「そうだな」


 吹き抜ける風が心地よい。ああ、もっと早く空路を選べばよかったと少しだけ後悔した。


 ナタリアは暫くキョロキョロとあちこち見ていたが、やはり疲れていたのだろう。はじっこに腰を下ろすとそのままうつらうつらと寝入ってしまった。


「ねえ。ちょっと……」


 それを見計らったかのように、ユナが籠の高さまで降りてきて声をかけられる。


「どうした?」


 俺が聞くと手でくいくいと上を指差す。

 今日は飛行魔術の出番が多い。


 俺が籠にいるか否かは妖精ちゃんが飛び続けられるかと関係は無い、籠のふちに手をかけるとそのまま足をかけジャンプする。


 飛行魔術が効いているので体はふわりと浮かぶ。

 飛び続けているのも面倒なので妖精ちゃんの上に着地すると胡坐をかく様にしゃがむ。


 ユナも妖精の乗り心地を確認した後、端に腰を下ろした。


「で?」


 わざわざ話しかけてきたのだ。契約にまつわる要求かそれ以外か。ともかく楽しく雑談をしましょうって感じでは無いだろう。


 それなのにユナが面白そうに笑う。


「楽しい話なんてアタシとするつもりが無いって感じよね」

「別に俺と話すって時点で楽しくなんてならないだろ」

「まあ、そうよね」


 やっぱりそうなのだろう。わざわざ自分で再確認したくないので、本題があるのであれば早くしてほしい。


「勇者様のことなんだけど」


 今日はやはり忙しい。アルクがナタリアの事を心配して、ユナがアルクの事を心配している。


「彼、勇者の力が強まってるわよ」


 ユナが深刻そうな顔をして言う。

 力が強くなるという事は一般的に良い事では無いのだろうか。勇者で無くなりたいという話であれば別だが、ユナは勇者様と言っている位だ。勇者であることは良い事なのではないのか。


「ホントアンタ勇者について知らないのね」


 馬鹿にするように、というか馬鹿にしているのだろう。ユナが見下してきているのが分かる。


「仕方が無いだろ。俺は勇者じゃなくて魔術師なんだし、そもそもアルクと知り合うまで勇者の知人なんていなかったんだから」

「まるで勇者以外なら知己がいるみたいな言いぐさね」

「知り合い位いるさ」


へえ、“知り合い”ね。とユナは相変わらず馬鹿にしたように話す。



「力をつけることが問題なのか?」

「力自体の話じゃないわ」


ユナはふわりと浮かぶと俺の目の前まで近づく。


「一つだけ教えておいてあげる。世の中の勇者じゃなきゃいけないことのほどんどが別に勇者じゃなきゃいけない訳じゃないのよ」

「……魔王討伐は勇者じゃなくても出来るって事位誰でも知ってるだろ」


「うーん。少し違うかも」


 妖精らしい笑い方でユナが笑うと「ちゃーんと教えたから、後で文句いわないでよ」と付け加えた。


「勇者じゃなきゃ出来ないことがある訳じゃないってことは、力そのものに意味があるんだな?」

「その位自分で調べなさいよ。曲がりなりにもアタシと契約を結べた魔術師なんでしょ?」


 どこでもいいからまともに調べ物ができるところに行きたかった。

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