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ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


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世界との楔1

 予想した通り、この発見によって魔王討伐が中止になることは無かった。

 けれど、王冠の件は不問になったし、早く魔族領に侵入して首をとってこいと急かされることも無かった。


 結局、国から人を出したという事が大切なのだろう。

 端からそれほどの期待はしていなかったがそういうことなのだろう。


 調査団に挨拶をして遺跡を後にする。ナタリアは何か言いたげだったが視線を彷徨わせただけだった。


* * *


「さてこれからどうする?」


 何も無ければ魔族領のある北東方向に進んで海を見に行こうと思っていた。

 水属性の妖精たちを呼んでやりたかったし、それに……。


「ねえ、ルミエーレ王国っていうのはここから近い?」


 唐突にユナが言った。


「そんなに近くは無いが、魔族領に接している国の筈だ」


 アルクが淡々と答える。


「へえ。じゃあ次の目的地はそこにしましょう」


 ユナが言う。


「あの国になんか用事でもあるのか?」


 俺が聞くとユナは「別にいいでしょ。まるでアタシをがめつい妖精扱いしたんだから。お詫びとして十二分にアタシのいうことを聞くべきよ」と言った。


「目的地に反対している訳じゃなくて、理由が知りたいんだろ」


 面倒そうにアルクが言う。


「……アタシと同じ一族がいる筈なのよ」


 少し悩んだそぶりを見せた後ユナはそれだけ言った。


「ユナさんの同族ってことは精霊がいるって事だ」


 美しい精霊の姿を思い浮かべて少しワクワクとした気持ちになる。


「国の守護者をしてるって話だけど、よくそんな馬鹿みたいな仕事引き受けてると思ってたのよ」


 その精霊の事は見たことがあった。

 真っ白な男性に見えた。長い白髪がまるで雪の様な印象の精霊だ。

 ユナとは見た目的には真逆に見えた。


「行っても会えるかは分からないけど、とりあえず向かってみますか」


 海はまた今度行けばいい。

 それにユナと同族の精霊を間近で見られるのであればとても興味がある。


 俺がそう言うと、アルクとナタリアも頷いた。


* * *


「竜でも買うか?」


 ぼんやりと街道を歩いているとアルクに聞かれる。

 目的地がはっきりしているなら歩いているよりそれこそ飛行魔術なり翼竜なりで進んだ方が楽だ。

 けれど、それで目的地に早くついてどうするという問題もある。悩ましいところだ。


「とりあえず、飛行魔術俺とお前だけためす事はできるか?」

「藪から棒になんだよ」


 アルクに言われて思わず聞き返す。


「まあ、できるけど……」


 アルクと自分に術式をかける。

 二人の体がふわりと浮く。


 そのまま空高く舞い上がる。

 アルクは初めてではないのだろうか。バランスを崩すことなく高く高く昇っていく。

 慌てて追いかけるとかなりの高度まで昇ってしまった。


「あれ、相当疲れてるぞ」


 ナタリアの方に視線をよこしてアルクが言う。

 言っている意味がよく分からず思わずアルクの顔をマジマジと見つめてしまう。


「本気で分かって無いのか……。

碌に旅をしたことも無い人間がパーティ放りだされて必死についてきていてその上魔術の練習だ。疲労困憊にならない方がおかしいだろ。」


 溜息交じりに言われてようやくアルクの言わんとするところが分かった。


 それから、そんな事すら気が付けない事に気が付く。


「あー。……なんかあった方がいいな」


 俺が言うとアルクはもう一度「竜でも買うか?」と繰り返した。


「ユナさんと相性悪そうだし。そうだな、なんか呼び出すから」


 俺がそれだけ言うと、アルクは「できれば振動の無いやつがいいな」とだけ答えた。

「なに?飛んでいくつもりなの?」


 二人で地上に降りるとユナに聞かれる。


「いや、これバランスとるの面倒だから」


 実際俺一人ならそれで充分なのだが、それを直接伝えるのがまずい事位さすがの俺でもわかる。

 魔法陣が展開されて、ユナが溜息をつく。


「せめて声をかけてからはじめなさいよ」

「あ、ああ。詠唱しろってことか?」

「……そうじゃないわよ。ホント気持ち悪いわねアンタ」


 ユナは相変わらずだ。気持ち悪いのは多分事実でしかないので諦めている。

 仕方が無いのでそのまま魔法陣を展開して契約済みの妖精を呼び出した。


 現れた妖精を見てナタリアが言う。


「……これはヒツジってやつですか?」

「だろうな」


 アルクが返した通り、綿毛がヒツジに似ているが、全く別の生き物だ。

 それに一般的なヒツジよりかなり大きい。

 沢山契約をしていて良かった。これなら多分全員が楽に移動できるだろう。


「これに乗るのか?」

「いや……直接じゃない」


 ヒツジに見えるがこれは植物に近い性質を持つ妖精ちゃんだ。もこもことしているのは体毛では無く綿毛の一種だ。


 荷物として持っていたロープを妖精ちゃんに達くくり付ける。


 そこに自分達が乗る用のかごをつければ完成だ。


 さすがにそんなかごは持って歩いていないので魔術で作るしかない。


「ナタリア。蔓をのばしてくれないか?」

「へ?魔法で育てればいいってことですか?」

「ああ。使うから」


 疲れているナタリアに頼むべきでは無いのかもしれない。だけど、何もしないでというのもきっとナタリアは嫌がるだろう。それは遺跡でのナタリアの様子からも分かっている。


 使ってしまった魔力は後で俺が補給してやることもできる。


「わかりました!」


 ナタリアははっきりと返事をして歌い始めた。


* * *


 蔓は直ぐに育った。「ありがとう」と伝えて魔術で蔓を編む。


 直ぐにかごは出来上がったのでロープで縛る。

 空を飛ぶにはこれでは弱いので魔術で全体に強化呪文をかければ完成だ。


 ふわり。妖精ちゃんが浮かび上がる。総勢5匹がふわふわと浮かび上がるので「じゃあ、乗り込んで出発しようか」と言った。


 荷物を放り込んでその後乗り込む。


「アタシは自分で飛ぶからいいわ」


 そんな狭いところに押し込まれるのはゴメンよ。とユナに言われ頷く。


「疲れたら妖精ちゃんの上に乗ってもいいだろうし、精霊は飛行に大した魔力使わないみたいだから別にいいかな」


「なによその言い方。大地に縛られている生き物と一緒にしないでよ」


 そう言うとユナは空に舞い上がった。

 慌てて自分も妖精ちゃんに魔力を食べさせて浮かび上がらせる。


 契約の為、俺の魔力器官と妖精ちゃんは繋がっている。そこから魔力を供給してやると妖精ちゃんはふわふわと浮かび上がるのだ。


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