表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/76

番外編:???

 何代か前に魔族の血が混ざったかもしれない。そうではない突然変異だったのかもしれない。

 でも、危険性があるのなら仕方が無いことです。


 教会で神官に言われた時、その当時はショックで何も考えられなかった。

 危険かもしれないということで一生幽閉されることも、体のいい魔術師のおもちゃにされることも、仕方が無い。


 今だったら怒り狂っていたかもしれない。でも、そちらの方が正しいと思う。


 みんなの為にと言っていいのは犠牲になる本人だけだ。

 少なくとも自分はそう思う。


 最低限の衣服と食事、地下に幽閉されていたため情報は何も入ってこなかった。

 それでも、何人もの魔術師が出入りしていてとてもじゃないが一人で逃げ出せる状況ではないし、そんな事考えもしなかった。


 その魔術師たちも魔族との内通者扱いされたくない為か必要最低限の会話しかできない。


 そんな時に現れたのがあの方の使いだった。


「なんで、いつまでもあんな屑たちのいう事きいているのー?」


 元々たれ目であろう目を笑顔でもっと垂れさせてその男は言った。

 頭から生える角と翼から目の前の男が人ではないことが分かる。


「だって、他に方法はないだろう」


 魔族と話ているところを見られたらお終いだ。冷静な部分では分かっている。

 けれど、目の前に魔族がいるというだけで疑われてお終いだろう。


 だから、意味はない。


「だって、キミ親兄弟がいる訳でも無し、それなりの魔法使いでしょうに。

逃げ出したきゃ逃げ出せるでしょ?」


 男はニヤニヤと笑いながら言った。


「逃げて、どうする。

どこで暮らしていけるっていうんだ」


 久々に誰かと話をしているのにきちんと言葉がかわせていることに自分自身驚いた。


「どこでって……。

じゃあ、キミたちのいう魔族領は?

こっちはキミみたいな人間沢山いるよ」


 それが事実かどうかは知らない。けれど、もしかしたらと思わせるには充分だった。


「そもそも、俺は人間なのか?」


 ぽつりと呟いた言葉を聞いて魔族の男はケタケタを声を上げて笑った。

 その声で人が来てしまうと思ったが相変わらず地下牢はシンとしている。


「やだなあ、君と俺達が同じ訳がないだろう」

「じゃあ、俺はアンタについて行っても一人ってことじゃないのか?」


 場所が変わるだけであるのならリスクを冒す必要はない。


「そうじゃないかもしれないからわざわざ俺と会話してるんでしょ?

キミみたいな人間は俺が知っているだけで複数いるし、それに俺たちは仲間じゃないと言っても協力者にこんな無体なことはしないよ」


 何なら魔法で契約書でも作ろうか?君たち魔術師はそういうの好きだし。


「いや、いらない」

「へえ、そう」


 そんなもの作ったところで抜け道なんていくらでもありそうだし、無駄な作業だ。


「ちなみに、なんで俺なんだ?他の魔術師を恨んでいるからか?」

「んー。魔術の才能を見込んでって事らしいよ」


 自分は並みに毛の生えた程度の魔術師だった。だからこの男の言っていることがイマイチ理解できなかった。


「俺が勧誘を引き受けたのは、アンタ世界を恨んではいるけど嫌いじゃないだろう」


 男に言われて思わず目をじいっと見つめてしまった。

 言われてみればそうだ。俺をこんな目に合わせた事はにくいけれど世界を嫌いになってはいない気がした。

 多分これからも美しい花を見れば感動するし、美味いものを食べれば機嫌が良くなる。その美味い食事を作った人には感謝位するだろう。


「それってさあ、世界を愛しているって事じゃんか」


 やっぱそういうやつと仕事ってしたいよねえ。魔族はふわりと笑った。


 何故、恨んでいることが愛している事になるのかは俺には分からなかった。だけどその訳の分からなさが逆に俺に何かをさせるための嘘には思えなかった。


「俺は、お前と一緒に行くことにする」

「そう。それは良かった」


 断られたら殺してしまう予定だったから。そこでようやく男は魔族らしい笑顔を浮かべた。



* * *


「ねえ、今度は何を作ってるの?」


 久々に工房を訪れた魔族の男、シオンが肩越しにこちらの手元を覗き込みながら聞く。


「ドールの改良版です。こちらかの命令とオート制御の両立性を高めています」


 態々、振り向いて説明する必要性も感じられず、作業をしながらの返答となった。


「えー、偵察にしろ蹂躙にしろ部下なら貸すよー」


 相変わらず軽い口調のまま聞いてくるが、多分断られることを分かっているのだろう。質の悪いタイプの社交辞令だ。


「あり得ないだろう」


 仕事の為に取り繕っていた敬語が思わず外れる。


「俺は魔族じゃない。さすがに仲間だと思っていない相手に情報も、ましてや命を預ける事なんてできないだろう」

「で、一生懸命お人形制作に勤しんでるんだ」


 この男は相変わらず嫌な顔で笑う。

 別に人形が好きな訳では無い。手足が足りないから致し方なくだ。


 けれど、それを説明しても意味の無い事は今までの事でよく分かっていると言える程度にはこの魔族との付き合いも長くなった。


「そういえば、破壊された人形から面白い痕跡が見つかったんだって?」


 シオンもこちらの返答を期待していなかったらしく、恐らく今日の本題を持ちだした。


「ええ。魔術師だと思うんですが、魔力の波形がちょっと……。

面白いかどうかは分からないですが」

「それは、こちらにとって使えそうなネタってこと?」


 この男は技術的な話は一切聞いてはこない。理解できる頭が無い訳では無く、人の専門分野に踏み込まない主義なのだろう。


「さあ。いまのところは分かりませんとしか」


 だからこその改良型なのだ。


「まあ、期待してるよ」


 大して期待していないクセにシオンにそう言われ「善処します」とだけ返した。不思議な反応を返した魔力波形を持つ魔術師には興味がある。この波形を持って魔術師協会にいられるとは思わない。俺と同じ様に異端者扱いをされるだろう。

 宗教ではない集まりらしいがその実情は宗教そのものだった。


 魔術師協会にも属して居ないその人間が何故魔族が差し向けたと明確なドールと戦ったのかは知らないし、それほどの興味も無い。


 ただ、送られてきた戦闘データには興味深いものがあった。


「次のドールを見たら、君はどんな反応をするんだろうな」


 シオンが帰った室内で独り言を言う。

 知りもしない相手なのにも関わらず、その時が楽しみで仕方が無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ