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ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


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酒も煙草もやらないって何が楽しみなのかと言われましても3

 何を買ったらいいのか、迷うことなんて今までなかった。

 女性の食事の好みが自分とは違うらしいという事は知識としては知っている。


 ユナがいて目立っていない事はないだろう。それの同行者として自分も断られるかと思ったが「お客さん、旅行の人?」と聞かれたところでローブを着ていない事に思い至る。

 他に見た目の特徴が無いのと、この辺はまだ魔族の侵攻が無いのだろう。旅行者と間違えられている。


 わざわざ訂正してやる必要もないので、曖昧に答えて蒸野菜と肉それから薄焼きのパンを注文した。

 酒は恐らく宿屋にもあるし、ナタリアは飲まないだろうから必要ない。


 魔物も殆ど出ず、生活にそれほどの心配もない。信じている宗教は国教として指定されていて安泰だ。

 それなのに、いやそれでもなのだろうか異物を排除せねばならない意味は自分には理解できなかった。


 その人達が作る飯を食べて批判していること自体おかしいのかもしれないが、対価は支払っているのだからそれはそれ、これはこれなのだろうけど正直あまり気分は良くない。


 緊急用の転移陣の件もあるからどうしたものかと思う。


 極端な話、俺の家には今も転移陣が残っている筈だ。最悪そこまで飛んでしまえばいいのではみたいな気分になる。


 そんな事を考えていると料理が出来上がってきた。お礼を言って、それから急いで宿屋に戻った。


* * *


「遅い!」


 ユナに言われ思わず謝る。オロオロとナタリアが仲裁しようとしているが、つらかった後にわざわざそんな事をする必要はない。


 それに、食事の時も今もユナは魔法を発動させていない。やってしまいたければできた事なのにその選択肢が無いのは俺に配慮してくれたのか、それともアルクに配慮しているか。その辺はよく分からない。単に人間贔屓の妖精だというだけなのかもしれない。

 ユナに聞いても「バッカじゃないの!」と言われそうなので聞きはしないが。


 買ってきたものを並べる。


「明日すぐにこの街を発つのがいいと思うんだけど」


 そう切り出すと、アルクは面倒そうに「それでいいだろう」と言った。

 転移陣は使わない方向かなと言うと、まあそうだろうなと返事をされる。


「それでさ、海は好きですか?」


 はあ?とユナから訝し気な声が出た。また、脈略の無い形になってしまったらしい。


「いや、今設定してある転移陣がいくつかあって、その中の一つが海沿いの街に隣接している無人島にあるんだけど、最悪の場合そこに転移って形になるけどいいか?」

「別にいいんじゃないか?特に次の目的地が決まってる訳じゃない」


 アルクが言う。


「私、海ってみた事ないのでよく分からないです」


 小さな声でナタリアが言う。何も無くても次の目的地は海でもいいなと思った。

 それを悟られたのか、アルクに座っていた椅子の足をガンと蹴られた。

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