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ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


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番外編:アスナ

少し百合味があります

 魔術師というものは、大体において魔術の適正のあるものが専門の学校に通いそのまま学校の紹介で各種職業につく。

 適正のある人間を見つけるのは大体子供の頃に適正検査を受けるのだ。


 逆に言うと、幼い頃にその魔術師が歩める一生というのは大まかには決まってしまうのだ。

 適正の無いものが宮廷魔術師になりたいと思っても不可能なのだ。

 それ位、適正というものが大きな意味を持つのが魔術師だ。


「何なのよこれは」


 前触れも無く襲ってきた魔族が作ったであろう人形に今滞在していた街は火の海だ。

 偶然居合わせた他の冒険者パーティーとすんでのところで住民たちは避難させられた。


 けれどこちらの火力が圧倒的に足りないのだ。


 あの方は、さすが勇者だ。魔術人形に切りかかるが正直押され気味で疲労も募っている。


 救援を呼ぶためポーチから取り出した魔石の中にそれはあった。


「ナタリア……」


 ナタリアとの連絡用にとギイと名乗る魔術師に渡された魔石を見る。

 所謂広く流通している通信用の魔石では無く、汎用のものに通信用のマーキングを付けたものだ。

 汎用、要するに攻撃にも使用できる。


 ナタリアとの連絡が一時付かなくなるかもしれない。あの子が心配するかもしれない。

 一瞬悩むが、魔術で攻撃を受けてよろけたあの方を目の当たりにして覚悟が決まる。


「勇者様!

物陰に一時待避を!」


 こちらをチラリと見たあの方は魔術人形の攻撃から身をひらりと躱してガレキの影に隠れる。

 魔術師の杖を掲げ、石と自分と杖を同調させる。

 体が熱くなる位の魔力が体に流れ込む。


 魔石位使ったことがあるのに、こんなことは宮廷魔術師の持っている特殊な物を使ったとき以来だ。


「我と汝の世界に祝福を。炎の神の加護を。精霊に祝福を。赤き炎を纏いて、邪悪なるものをうち払わん」


 魔術師は世界と自分を繋ぐ技術だ。

 だから、魔術を発動するときに唱える言葉は世界と自分たちを繋ぎ祝福するものが多い。

 その言葉達が私は好きだ。


 杖を構えた先に炎が集まり火球となって魔術人形に飛んでいく。

 爆発音がしたと思った瞬間人形から火の手が上がり、それは動かなくなった。


「まさか、一撃で!?」


 自分が放ったものなのに驚きが隠せない。

 体がいう事を聞かずへたり込んでしまった。

 駆け寄ってきたあの方を見て何とか笑顔を浮かべようとして失敗した。


 手に握り込んだ魔石を確認すると、ひび割れて色が変わってしまっている。

 もうまともに使う事は出来ないだろう。


「大丈夫ですか!?」


 こんな時でもあの方はいつも私の事を心配している。


「はい、何とかとどめをさせたようですが……」


 ナタリアとの通信手段を失ってしまった。見上げたあの方も悲しそうな顔をしている。

 どこかで魔術師同士の繋がりを使ってという方法が無い訳では無いがどこを旅して今後の予定がどうなってるのかさえも分からないのだ。

 しかも、ナタリアは私達が見捨てたも同然なのだ。


 あの魔術師、彼の業績を考えれば任せて正解だったのかもしれない。けれど、何故あんなにも簡単にナタリアを引き取ってしまったのか、私達にも分からないのだ。


「兎に角今は復旧の手伝いをしましょう」


 あの方は毅然とした態度で言った。

 そうだ。私は勇者と共に旅をするものなのだ。責任と義務がある。


「はい。そうですね」


 勇者であるあの方は私よりずっと重い責任を背負っている筈なのだ。ここで足を引っ張る訳にはいかない。

 何とか立ち上がると、他の冒険者たちが駆け寄ってきて、次々と称賛の声をかけてくれた。

 あれは私の力では無いと説明したかったのだがそんな余裕は無くそのままあの方と二人消火活動をする事になった。


* * *


 翌朝、銀色に光る妖精が私の元へ降りたってナタリアの無事を知らせてくれた。

 ホッとして思わず涙が出る。


 横を見るとあの方も涙ぐんでいて、それでどうしようも無くなってあの人の手にそっと自分の手を重ねた。

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