始まる学校生活
「ねえねえ妖家ちゃん!何か分からない事があればいつでも聞いてね!」
「!!ありがとう!みと!私色々初めてでさ・・・困ってたんだ」
目線を不意に逸らして、困った表情を見せた。
別にわざととかじゃない、本心だ。
「そっか!ならどんどん頼ってくれても良いからね。あっ、そろそろ授業の時間だ!またね妖家ちゃん」
スタスタと優しい彼女は、自分の席に戻っていった。
(優しい・・・感動!)
触れたことのない感覚を覚える。
彼女の言葉を何度も脳内再生しながら、自分の席につく。
さっさっと授業で使う道具を、鞄から取り出し机に広げる。
この日の為に買いそろえた新品の道具が、キラキラと輝いている・・・様に見えた。
「可愛いねその筆箱!」
隣の男子生徒が、笑顔で褒める。
「ああそうかな。ありがとう!」
と笑顔で普通に返したつもりだったのだが、
彼はむすーと不機嫌そうな表情をし
また私何かやったのか!?と不安になる。
「あんたさー男慣れしてるだろ?」
「あーしてるね。 (剣世帝は男しかいないし)」
「つまんねー」
何がつまんねーだとは言えず、次の言葉が出るまで温かい目を送るだけだ。
「大体の女子はさ、僕に話しかけて貰えるだけで、キャーと悲鳴を上げるんだけどー」
ここでユーモアが分からない人だったら、その悲鳴は変な意味に捉えるだろう
しかし私は違う。ちゃんと理解している。彼はモテてると言いたいんだろう?
(それにしても、ほんとかよ)
疑いの眼差しを向けるのを感じたのか、私の後ろでさっきから彼に甘い目線を
投げてるポニーテールの元気系な女性
の方を彼が爽やかな笑顔で振り向くと本当に良い意味でキャーと悲鳴をあげた。
ね?と言いたげのどや顔に、心底苛ついたが、私は剣世帝のトップかつ
色々と経験豊富な大人なので
「へぇ、凄いじゃん」
と褒めてやると、何かを察したのか
彼はふいっと向こうを向いて
「本当につまんねー」
とだけ呟いた。
何だお前は。
「授業を始めるぞー!」
号令が始まり、人生初の授業が始まる。
私は学校には通ったことはなかったが、一応表社会の勉強は独学してたから
多少の事は出来るだろう。
・・・・あとさっきからの隣の男がチラッチラッと視線を送ってくるのだが。
こっちも視線を送り返すと、目が合う。
彼は一瞬驚いた顔をした後何も言わずに、むすーと頬を膨らませ、また廊下の方を向いた。
(????)
頭の中は疑問符だらけである。
(え、本当に何かしたかな?)
初々しい私の不安を煽るやり取りが、授業の終わりまで続いた。
終了の合図が先生から発され、今日の授業が終わる。
せっかくの初めてだった体験を
隣の男の謎の行動のせいで、集中できなかったのが現実である。
はぁと色々交えたため息を吐く。
(終わったけどさぁ、何だこの気持ち)
隣の男は席を立ち言った。
「邸形 豹路って言うから」
それだけ残して、この教室を去った。
「??、ほんと何なんだ?」
「お疲れ様!妖家ちゃん!」
後ろから声がし振り返るとそこには、優しい彼女の姿。
「お疲れ様!みと」
「ねぇ妖家ちゃんは、この後暇?」
「?暇だけど何で?」
「じゃあさこの後、どっか遊びに行かない?」
初めてのお誘いに、目を見開き
嬉しくて、口も緩む。
「もちろん!それとっても嬉しいよ!」
「よかった!じゃあ早速行こう!」
「うん!」
私は机の上の道具を片づけて、彼女と大学を出て
大きなスーパーに行く途中だった。
とある男二人組に話しかけられる、
「お姉さん達、この店行ってみない?」
と綺麗な若い女性をターゲットにしてそうな店のチラシを渡される。
「此処、客引き禁止だと思うんだけど」
「固いこといわないでさぁー。ほらどうせ暇なんでしょう?」
一人の男が、拳銃を他の人に見えない様に銃を
チラつかせる。
「こいつ」
(何処でそんな物手にいれたんだ?こっちの世界は持つことさえも禁止だと聞いてるんだけど)
隣の彼女はというと、震えながら、小さく両手を挙げている。
やれやれとため息を吐いて、無理矢理その店に連れて行かれた。
(詐欺じゃん)
さっきのチラシはどうした?と感じる。
カランカランと鈴が鳴る。
きっと、みとにとってこの音は安らぎの音じゃない。むしろ恐怖の始まりの合図化としているだろう。
私にとってはある意味始まりの合図だけど。
「ほらメニューだ。一人5品は頼めよ?」
出されたメニューには全て値段が記載されていない。
見るからにヤバい店。というか明らかにぼったくる気まんまんなんだけど。
「無理です!私はそんなお金持って」
銃口を向けられ
「ひっ、なんでもないです」
と目をそらし弱々しく呟いた。
彼女のメニューをめくる手は震えている、可哀想に。
「一応警告しといてあげる、私達を解放するなら今のうちだよ?じゃないと大変な事になる」
銃口を私に突きつけ嘲笑った。
「これが見えないの?」
「っ!すみません」
すぐに謝った。
「で・・・では私はそろそろ注文します」
「わ・・・・私も」
二人は言われた通りに5品注文した。
それで無理矢理食事もした。少し美味しいと感じた事に
苛ついたが
まあ、食べた感じ変なものは入ってなかったから、良かった。
それで戻ってくる問題の会計。
「合計20万になります」
案の定である。
隣の彼女が涙目になりながら、払えませんと零す。
「払えないんだぁ・・・じゃあ君のご両親に頼むしかないね。それとも・・・君自身で払って貰おうか?」
「や・・・やめてください!!!」
強気に抵抗しているが、もう泣きだしそうな彼女。
私は彼女を庇うように
「払う必要はない。私が全額払う」
と高らかに宣言した。
「じゃあ貴方が20万のお会計をお願いしますね」
「ああ良いよ。でも、そんな大金は今持ち合わせていない」
「なら、貴方はどうやって払いますか?」
「ああ分かっている。だから此処に私の知り合いを呼び、払いに来させようと思う」
もちろんウチの知り合いにね。
連絡しようと携帯電話取り出すが、一人の無知な男に取られる。
勝手に開けて、電話帳探っていく。
「このまま沢山の金をぶんどってやろう♪さあ弱そうな奴は誰だぁ?」
とうとう本音を零した
男は電話帳に書かれた、[ウチ]と書かれた所にカーソル
を合わせ通話ボタンを押す。
(あーあ押した。これは大変な事になる予感がする)
2コールでガチャッと男の声がする。
「はい、ウチらは剣世帝です。なんや?総帥。やっと帰ってきてくれるんか?」
それにしても本当にこいつらは剣世帝を知らないのか?
じゃあそのまま知らないままでいてくれ。
こっちもその方が都合が良い。
電話に出た男は、第四幹部の力背射。
いつも嫌な顔せずに汚れ仕事をこなしてくれる関西弁らしきの男。
「総帥?あのおたくの所のお嬢さんが、食べた物の代金が払えないと言ってます。
なので50万の食事代金を払って貰いたくご連絡しました」
(増えてるじゃないか)
「ああそうですか・・・なるほど。じゃあ今からそっち向かいますわ。
住所教えて貰えます?」
彼らは住所を教えると、
「じゃあ逃げずに待っててくださいね。大丈夫や、総帥が無事ならええ。
ウチは少しも乱暴する気は無いから安心しぃや」
と言ってる事は、そこまで怖くはないが、声だけは棘のある声が携帯電話から漏れる。
「こっちは・・・人質がいるんだぞ!?」
「それがどうしたんや?そんな事今は関係無いやろ。ウチの総帥はお前達が思うほど弱ない」
「お前何者だよ!?さっきからなんだこの電話越しからでも伝わる恐ろしい気持ちは!?」
「それは殺気って言うねんで。覚えときぃ。あとワイらの事は剣世帝つっとるやろうが!知らない奴おったんかーじゃあ後でじっくり教えてあげんとなぁ」
さすがに何かやばいと感じた男は、携帯電話を落とす。
それを滑り込みでキャッチし、急いでみとの手を引き、私は窓ガラスを二階からパリーンと突き破り、
受け身を取りながら、みとを庇い、無傷で逃げ出す。
「しまった!!!!!」
「何してんだよ!!お前銃持ってるのによぉ!!」
不意をつかれた男共は、逃げた女二人を追いかけようと
店から出ようとしたその時、ドンッと筋肉質な体にぶつかる。
「ちょい待ち。せっかく代金を払いに来たのに
逃げるってどうゆうことやねん。さてはお前ら嘘つきかぁ?」
脅すために殺意を込めた表情で見下すヤンキー。
ご丁寧にわざわざスーツを着てきたこの男こそが、第四幹部、力背射。
彼の後ろに10人位のヤンキーもスタンバってる。
ニヤリと狼が獲物を狩る時の笑みを浮かべ叫んだ。
「さあ始めるでー!!大掃除の始まりやぁ」
深い笑みを浮かべ
戦いの合図をし、店の奥に歩み寄るとスタンバっていたヤンキーも一斉に店内に押し入り
5分もかからずに、ぼったくりバーを占拠した。
「雑魚すぎやわ~、まあ剣世帝知らんならその程度かもしれへんな」
ボロボロになった男共は、倒れながら彼らに許しを求める。
でもそれを拒むように、リーダーらしき男の頭を踏み嗤う。
「雑魚は大人しく寝てるとええ。さあワイらは金になるもんの回収や~。ワイらの総帥に金のプレゼントやぁ~!」
持ってきたトランクを黒い車から、下にいる部下に持ってこさせて、
上にいる奴らが詰めていく。
その作業が終わり撤収しようとした時に、下から警察のサイレンが近づいてくる。
「勘の鋭い奴らやなぁ。お前ら急ぐで~」
「はい!」
トランクを2台の黒い車に詰め込み、エンジン全力でこの場を立ち去る。
帰る途中で女を連れた総帥とすれ違い時に目が合い、
彼女はよくやったと笑顔でウィンクをした。
「総帥~!♪」
一人の第四幹部がキラキラと目を輝かせる。
車の中で皆俺の事かと思う。
口には出さない。何故なら出した時点で周りから殴り殺されるから。
皆に言った事を知ってても、俺だけに言ったと思いたい時もある。
「あのーお取り込み中すみません。後ろの警撒きたいので速度あげるんで。気をつけてくださいね」
急に加速する。
「まあまあ一応ワイらの車には拳銃があるんや。最終的に発砲やな」
「妖家様に怒られますね」
荒々しい上司に一人の部下が静止をかけると
「そ・・・そんな事本当にやるわけないやろ!?総帥を悲しませる事は・・・ワイはしいひん男や!!」
何故か真に受けている男を
「はいはいそうですね。」
といつものように軽く流すと
本当におもとんのか?
と言われ、幹部の心情 (主に妖家の事)を満足するまで聞かされる
俺達がいた。
黒い車二台は、二手に分かれ
30分の逃走劇によりなんとか、警察の手から逃れられた。
――――
「ねえ、腕の怪我大丈夫?」
「何のこと?」
「とぼけないで。さっきガラス破った時の怪我の事だよ」
「優しいんだね、これぐらい舐めたら治るよ」
「ダメ、見せて!」
腕を掴まれる。
「ちょっと怪我してるね、少しガラスの破片も刺さってる。一度あそこのベンチに座ろう」
連れられて、言われたままに座らさせる。
「痛かったらごめんね」
彼女は優しくガラスを取ってくれた。
「私ね友達いなかった。人付き合いが苦手でね。私弱いからずっと守ってくれる人も
いなければ守りたい人もいなかった」
「・・・・・・・・そうなんだ」
「だからね。私、見る目だけはあるんだ。妖家ちゃんは優しい。だから・・・
もしかしたら友達になれるんじゃないかって!あっもしダメだったら
私を振ってくれてもいいからね」
「それは運命しだいかな」
「そっか・・・運命か。」
「じゃあ賭けるかい?この関係が続くか続かないか」
「良いよ」
「みとが勝ったら、私は一日言う事を聞こう。私が勝ったらみとが私の言う事を聞く。どう?」
彼女はコクリ頷く。
「私は続くに賭ける」
「じゃあ私は続かないに賭ける」
みとは悲しそうな顔をする。
「これはお互い卒業しても関係が続いていたら勝敗を決めよう」
「うん!私が勝つからね!妖家ちゃん!」
彼女は何も知らない顔で、期待に溺れている。
その顔を見て私は泣きそうになる。
私の見える運命はもう決まっている。
ごめんねみと。この勝敗はすでに決まってるんだ。
私の勝ちで終わる。
分かっててもさ、賭けたくなるじゃないか。
叶わない理想も抱きたくなるじゃないか。
こうやって、勝つかもしれないと希望を持たせて、少しでも私の事を思って欲しい。
そんな我が儘を含めた狡い賭け。
だって私は普通の女じゃない。
一度今思う考え全てを伏せ、目を閉じ偽りの楽しみだねを小さく言葉にした。
「今日は帰ろっか妖家ちゃん。私疲れちゃった」
「そうだね。今日は私も疲れたよ」
二人は寮に帰る。
「今日はありがとう」
「別に何もしてないつもりだけど、どういたしまして!!」
(妖家ちゃんは優しいなぁ。ありがとう。ずっとこのまま続いたら良いのに・・・ああダメダメ。暗いことを考えたら賭けに負けちゃう。勝たないと・・・・今を楽しんで勝つ!それが私の勝利の方程式なんだから!)
――――
みとと別れて、自分の部屋に戻る。
日が暮れて部屋が真っ暗闇。
「ただいまー」
電気を点けて誰もいない部屋の、床に座り込む。
スーツケースを開け、自分の荷物を取り出していき
最後に奥に収納してあったスーツケースからタブレットを取り出し、電源を点ける。
この学校の書類や構造資料などをもう一度さらっと目に通す。
不自然な所も怪しい所も無い。
私の勘違いか?とさえ思ってしまう。
ため息を吐いて、タブレットの電源を落とす。
ピッピッピと自分の携帯電話の電話帳から、[力ちゃん]
にカーソルを当て通話ボタンを押す。
相変わらず応答が早い。
2コールで声が聞こえる。
「はい♪力背射です。総帥!今度こそ総帥ですよね!?」
「ああ、そうだよ。今日の報告してほしい。一番聞きたい事を率直に聞くけど、殺してないだろうね?」
「もちろんや。ウチが命令無しで殺す訳ないですよ。そうだ今日警察に追いかけられましたが、ちゃんと撒きましたよ♪。お金は100万程得て、メンバーの小遣いと剣世帝
の運営資金を確保しました。残るは総帥のお小遣いです」
「わざわざどうもね。あとさっきからびゅんびゅん風の音がするんだけど・・・」
「ああ、それはですね」
「今力背射と訓練しています。お嬢」
電話の主が変わる。
「トウレン。二人ともお疲れ様。そうだトウレンこれから毎日一日の終わり頃
報告が欲しい。一応今は学生でも剣世帝のトップだ。組織の情報は知っとかないといけない」
「分かりました。お嬢。あっ、今度いつ帰って来れますか?」
顔は見えないのだが、凄く向こうでキラキラしている
気がする。
ノイズがはいる。
「ほんとそれなんですけど~!ウチ早く総帥に会いたくて会いたくて!もうそっちに
会いに行ってもええですか~?」
持ち主に戻ったと思ったらノイズと共にまた変わる。
(何をしてるんだ?訓練と言いつつ殴りあってんのか?)
まあ、いいけどさ。
「僕、いい加減寂しいんですけど」
突然の寂しいコール。今日の朝会ったよね?
「待って!、今日出て行ったばかりじゃん!!勘弁してくれよー。ああもう明後日会いに行けたら行くからさ」
「確定じゃないんですね・・・・寂しい」
「言の葉、そろそろ変わってや。総帥待ってますんで」
「あはは、あんまり期待しないでくれよ。私の都合もあるから・・・・」
「待ってますんで」
電話の向こうから圧を感じ、真顔になる。
「・・・・・・ウン。待っててイクカラ。じゃあおやすみ」
「「「おやすみなさい」」」
電話を切る。
ベッドに倒れる。
また明日も普通の日常だと思うと、楽しみだ。
慣れない授業で疲れた。
瞼が重くなり、徐々に視界が暗くなる。
――剣世帝アジト――
パタンとガラケーを閉じる。
「アンタらやるやんか。ワイ驚いてるで。戦闘員から遠そうな奴らやと思って舐めてたわ。特に言の葉。アンタ非戦闘員やろ?」
涼しい顔をしている、トウレンと、言の葉。
「俺はお嬢守るために強くならないといけないからな。それと勝手に舐めないでくれるか?」
「・・・・二人には負けたくないから・・・仕方が無い。僕は自分の身は自分で守るから。あと剣世帝にいたら自然と強くなる」
電話の声の主が変わっていたのは、訓練中なのに電話をする力背射の姿苛つき、戦いの中で彼らが上手いこと隙をつきながら通話中の携帯を
奪いあっていたから。
力背射は勿論、避けたりはしていたが、電話に意識持ってかれたのが原因で
総帥との通話を何回も奪われる事になった。
それが彼女の電話の向こうでの話。
(完全失態やな・・・・ワイだけでよかったのになぁ)
なんて子共染みた独占欲を持つ男は付け加えた。
「まあええわ。ならば次こそは完全独占や」
「もう1戦するか?俺は彼女の独占を許さない男だからな、残念だけど妨害してやるよ力背射」
「それ面白い。僕もやる」
「ああでも、次こそはワイの独占的勝利を納めてみせるからな。ワイはアンタらには負けられへんよ」
彼が浮かべた笑みの裏では、彼なりの勝利の道を計算している。
そして三人はまた鍛練を再開する。
鍛練の理由は人それぞれ・・・に見せかけてるだけで
結局は・・・・・同じだろう。




