宝物庫って便利だなぁ
最後までぜひ呼んでください。
魔術書は読めば誰でも能力を得ることが出来る。それ故に高価だ。いや、高価過ぎるのだ。どんなに安くても150ゴールド。高いものは上限はない。
この世界の命は羽のように軽い。たった10ゴールドの為に殺人が起こるくらいだ。ゲームの頃は規制がかかっており、主要人物の殺害と子供の殺害は出来なかったがここは現実である。
俺はこの幸せな生活に満足して緩みきっていた。
ドアがドカン!と勢いよく開く。両腕を切断された母さんを抱えた父さんがいた。致死量の出血だ。父さんは腸を撒き散らしながらフラフラと家に入ってきた。
「どうしたの! 父さん。母さん!」
「村人が盗賊に俺たちを売りやがった」
???意味がわからない。村人と盗賊は敵対モブだ。手を組むことなんか有り得ない。
理解が追いつかないが、2人に回復魔法をかける。
「ヒール」
虫の息だった母さんは様態が安定してきた。ポーションだって持ってるはずなのにどうしてこんなに......。
「マロ。お前そんな魔法が使えたのか」
俺は魔法が使えることを黙っていた。変に関われると練習する時間が減ると思ったからだ。
「マロ。よく聞け、もう時期追っ手がこの家に来る。お前だけでも逃げろ 」
「逃がそうとするならなんで俺のとこに来たんだよ!」
気がたっていて、反射的に言葉使いが悪くなってしまった。
もう使うしかないか。
俺は指にはめているリング【宝物庫】と念じた。次の瞬間、家族と俺は20畳程の空間に来た。父親はびっくりした顔だ。
「ここはどこだ」
「俺の秘密基地だよ。後で説明するから母さん連れてこっちに来てくれ」
俺が使用した宝物庫は、旅を快適にする為に導入したMODのひとつだ。アイテムを作成するのに必要な鍛冶場や錬金術に必要なアルケミスト工房など全て揃っている。更に、アイテムを無限に収容できる宝箱が置いてあるため、キツい重量制限を無視することが出来る。
この宝物庫は、別空間に存在しているため、元の世界の時間は止まったままになっている。ゲームの頃にはなかったベッドルームに母親と父親を案内して横に寝かせる。
このMODの欠点があるとすれば、戦闘中や敵意を持った相手に監視されている時は宝物庫に入ることが出来ない。それ以外の状況下では無条件に出入り出来る正しくチートだ。
母さんの様態が安定したため。高価な回復薬は使わず、魔法で治癒を行った。やはり他人に魔法を使うと得られる経験値が多いい様だ。
父さんは腸がヤッホーイしている為、回復薬を渡してベッドに横になってもらっている。
ゲームでは欠損することはなかった為どんなに重症でも回復魔法で元通りになったが、やはり現実はそう簡単には行かない。大きな傷口は塞げても失った腕は生えてこない。
「父さん。なんでこんなことになってるの?」
「実はな......」
話を聞いたところ父さん達は元冒険者で、同じパーティーだった。そこで、2人は結婚して辺境の地に、住み俺を産んだ。
母さんは顔が良かった為、村人から言い寄られる事が多発していたが父さんが全て撃退。
更に元冒険者でお金に余裕があった為、妬んだ村人が盗賊に情報を流し、襲撃に合った。
もちろん冒険者をしていた為、その辺の相手に遅れは取らない。しかし、仲間だと思っていた村人のバカルに裏切られ毒を盛られた。
症状から見てポイズンスパイダーの毒だ。即効性があり、体の麻痺に継続ダメージだ。解毒剤や解毒魔法を使えば決して恐怖の対象ではない。所持していればの話だが。
「父さんはこれからどうするの?」
「......。」
「そう。こんな時にも無口なんだね。俺は許せないよ? 母さんをこんな目に合わせたヤツらを」
俺がそう言うと、父親はものすごい険しい顔になった。
「そうか。 けど、お前はまだ幼すぎる。 俺一人で片をつける」
「何言ってるのさ。ここから出る方法も知らない癖に、俺も父さんと同じくらい戦える」
傍から見たら5歳児の虚言だ。この宝物庫の存在がなかったらだがな。
「......わかった」
とりあえずスキルポイント振っとくかな。片手武器と回復魔法に少しずつ振る。
回復魔法→効果30%up
片手武器→ 効果30%up
後は、父さんに誕生日プレゼントで貰った鉄のナイフに付与をする。宝物庫に備え付けられてる宝石を使用した。
効果:体力吸収+5
この効果は攻撃した相手に追加固定ダメージを与えて、与えた分回復するものだ。
狙っていたものが出て良かった。序盤はこれが活躍するからな。
付与はランダムで効果を得られる。付与技術が上がるほど良い効果になる。また、付与された武器を破壊することで全く同じ効果を他の武器に付与することが出来る。まぁ、付与するためには宝石が必要で高価だからポンポンとできるものじゃないけどね。(コマンドで出した1万ゴールドは所持したまま)
「準備よし! 父さん行ける?」
「あぁ、すまん。何か武器になるものはあるか?」
「しょうがないなぁ。はいこれ」
そう言って俺は宝物庫に備え付けられている鉄の斧を渡す。付与されていないただの鉄の斧だ。木こりの父さんにはピッタリだね!
「じゃあ行くよ! 」
俺は宝物庫のリングに強く念じて元いた部屋に戻る。
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