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1・猟師ギルドのお仕事

「キアラ、今日は西のダンジョン前で赤大鳥を仕留めてきてくれない?」

「構いませんよ、何羽いきます?」

「三十羽くらいいたら助かるぅ」

「では、運んでくれる人を何人か」

「既に用意してございまあす!」

「さっすが、やり手の窓口さん!」



 エルドラド王国の首都の中央にある猟師ギルドには様々な依頼が舞い込む。それをこなすのは手練れのギルドメンバーたちだ。首都中央のギルドは猟師の他に、商人と傭兵のギルドがあるが、そのどれもがエルドラド王国で最上位クラスの力を持っていなければ所属することが許されない。



「キアラさん! 今日こそその妙技を盗んでやりますからね!」

「どうぞ」

「おい煩い。黙れ」

「じゃあさくさく行くので、ちゃんと付いてきて下さいね」

「うっす!」



 キアラは自身の上半身より大きな弓を軽々と背負って馬に跨った。猟師ギルド用によく調教された馬は目的地の近くまで行くと自然と足音を控えたり、戦闘になってしまった際は逃げて戦闘が終わったら戻って来たりととても賢い。


 しかも可愛い、目がくりくりしている。三年前までは近寄ってはいけませんと叱られたものであったが、今では馬の世話までしているのだ。人生何があるか分かったものではないと、キアラは今日も満足そうに頷いて仕事へ向かった。


―――


 何の苦もなく、仕事はすぐに終わった。西のダンジョン前にいる赤大鳥は戦闘になってしまえば火を吐いてきたり鋭いかぎ爪で攻撃してきたりして厄介だが、ようは戦闘にならなければいいのだ。赤大鳥が油断している間にさくさく三十羽仕留めてしまい、その後はモンスター除けの閃光弾を投げ込めば依頼内容は完遂である。



「今日もとっても簡単でした」

「それキアラさんだけなんで」

「普通こんな簡単にいかないんで」

「それをやっちゃうのが、中央ギルドの腕の見せ所でしょう?」

「中央ギルド全体のハードル上げるの止めて貰っていいですか」

「俺もそんな腕が悪い方じゃないんだけどなあ…」

「皆違って皆いいってやつですよ、私はユーゴくんやシーナくんたちみたいに【複数射撃】とかできないですし。あれ、すごく便利ですごく羨ましい」

「スキルっすからねえ」

「私の【鷹の目】もスキルですからねえ」

「弓士憧れのスキルじゃないですか」

「えへへへ」



 猟師ギルドには様々なジョブのメンバーが在籍しているが、弓士はその中でも多い。この依頼に付いてきた二人も弓士である。狩猟を主に行い、依頼を受ける為のギルドであるので当然と言えば当然である。


 スキルというのは、多少語弊があれど基本的には生まれ持ってくるものである。教会でジョブを選ぶ際に付与される能力で、それはその人によって違う。単体の人もいれば複数のスキルを持つ人もいる。また、教会でジョブの選択をしなければ永遠に持てないものでもある。キアラは弓士であれば“鷹の目”というスキルを持っているが、別のジョブを選んでいればまた違うスキルを付与されるのだ。しかしキアラは弓士以外になるつもりは毛頭なかった。


 キアラは昔から何故か弓に強い興味を示していた。絵本に出てくるお姫様のドレスより狩人の持つ弓をおもちゃに欲しがるので、家族はさぞ心配したことだろう。子どものキアラには分からなかったが、そんなことをしたがるなんて奇行と呼ばれても仕方がない。


 そんな中、面白いもの好きな祖父が試しに弓を与えると、何せ百発百中なのだ。祖父はとても喜んで、キアラの為に弓場を作って両親に散々に怒られていた。それが今の職に繋がっているのだから、祖父には感謝してもしきれないのである。



「【鷹の目】なあ…。必中の上に防御も掻いくぐるんだから、もうある種の最強スキルですよねえ…」

「そんなこともないですよ。私は攻撃強化のスキルが無いから当たったって全然削れない時も多いです。それに物理攻撃を無効化されたら元も子もないですしね」

「それは弓士全員に言えること!」

「鷹の目の弱点じゃなくて弓士自体の弱点ですね、しかもどっちにも対処法はある」

「まあ、それはね。そうですよね」

「っかあー! 絶対いつか追い越す!」

「煩い」

「待ってまーす」



 戦利品を馬に積み込んでキアラは先頭を走りだした。その後ろをギルド仲間たちが付いてくる。彼らも首都の中央にある猟師ギルドに籍を置いている優秀な弓士である。良い職場と仲間に恵まれ、キアラはひたすらに自由を楽しんでした。


 ここではもう、いちいち膝を折ってお辞儀をする必要もなく扇で口元を隠さなくてもいい。ズボンを穿いていたって馬に乗ったって誰にも何も言われない。好きなだけ弓を引いてもいいし、自分で身を立ててもいい。むしろそれが喜ばれる。


 キアラは元婚約者殿と婚約後は奇行を隠してはいたものの、社交を活発にしてはいなかったので生国でも彼女の顔を知る者もそういない。ここは生国の隣国である上に首都ではあるが、王侯貴族が立ち入るような場所ではない。ギルドに依頼がある時には使用人が来るのが普通だ。その為、身分がバレる一切の心配もない。キアラは楽しくて楽しくて仕方がなかった、何せ。



「あー! レオナルド様いらっしゃってたんですかー!」

「ああ、キアラ。戻ったんだね」

「きゃああ! 戻りましたあ!」

「キアラ」

「相変わらずお美しいお顔で!」

「キアラ、静かに」

「はい」

「俺、毎回この温度差で風邪ひきそう」

「毎回なんだからそろそろ慣れたらどうだ」

「ええ…。俺が異常みたいに言うなよ…」



 キアラは恋をしていた。

読んで頂きありがとうございました!

大変恐縮ですが、評価、ブックマークなどして頂けましたらとても嬉しく思います。よろしくお願い致します!

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