三夜:トンネルに潜むもの
激遅投稿です。
皆さんゴールデンウィークは如何でしたか?
私は友人と遊戯王しながら泊まり込みでコードギアス観てました。(尚ちょくちょく記憶の欠落アリ)
訓練を開始して3日目の放課後。俺と銀鏡は今日も屋上で訓練をしていた。
体の中心から右肩に、右肩から腕へ、腕から掌へと妖力の流れを作っていくイメージを思い浮かべる。
すると霊視鏡越しに見る妖力はイメージよりはゆっくりとしたものであるが掌へと流れていく。
「そうそうそんな感じ。3日目にしては中々感覚掴めてきたんじゃない?今度はそのまま掌に集めるんじゃなくて全身に循環させるように均等に流してみて」
指示通り全身に循環させるようイメージする。掌に集まっていた妖力はゆっくりと血液が循環するように体の中心へと戻っていく。そうして妖力が全身を循環し始める。
…が、妖力の一部が制御しきれず体から漏れ出ていき空中に霧散していく。そしてそれは徐々に増えていき最終的にほとんどが循環させきれずいつもの垂れ流した状態になった。
「…ダメだ。掌に集中させるくらいならできるようにはなったけど全身に均等にってなると難しいな」
「でも惜しい所まではいってると思うよ?むしろ初めて妖力を扱うにしては結構早いと思う」
「そ、そう?」
「何回も全身に循環させる練習をしていけばわりとすぐにできるようにはなると私は踏んでるよ」
そう言われるとなんだかいけそうな気がしてくるなと我ながら単純だと思う。
若干照れながらも再び妖力を全身に循環させ始める。
「そういえばだけどこれってできるようになったら妖力隠す以外なんかできるようになるの?」
「ん?そうだね…四十川くんは火で色んな形を作れたり出来ると思うよ。炎の剣とか。あとは身体強化とかかな?」
何それめちゃくちゃかっこいいじゃん。炎剣とか男なら誰だって憧れるでしょ。
そんな事を聞けばやる気も更に湧いてくる。
「あ、そういえば四十川くん。土日は予定空けといてね」
「え?なんで?」
今日は金曜日。予定を空けとけと言うにはいささか急過ぎないか?あ、制御失敗した。
「あ、もしかしてもう予定入ってる?」
「いやまぁ、予定はないけどさぁ。…おいそんな可哀想な物を見る目で見るな。ちゃんと友達だっているから」
今週は祐介は試合だったり他もたまたま予定が合わなかっただけだっての。
「んで土日予定空けとけってなんで?」
「勿論特訓よ」
「デスヨネー」
さらば俺の休日…
休みが潰れた事に軽く絶望して項垂れるが、銀鏡はそんな事は気にとめず特訓を再開させる。
結局今日はあまり上達はしなかった。
***
そして迎えた土曜日。集合場所の公園のベンチでネットニュースを見ながら銀鏡を待っていた。
「あれ?四十川くんもう来てたの?」
集合時間5分前ごろになったタイミングでちょうど銀鏡が来た。
動きやすさを重視したのかショートパンツに薄手の白いパーカーを羽織り、髪をポニーテールにしていた。
体育の時も似たような格好ではあるが私物のスポーツウェアともなると普段のイメージと打って変わって活発そうな姿に見え、なんとなく気恥ずかしくなる。…ギャップっていうやつだろうか?
「…うっす。まぁ、教えて貰ってる立場だから早めに来ておこうかなって」
「なるほど。やる気があって何よりだよ」
休日返上で教える甲斐もあるよと銀鏡は笑いながら言ってくる。
…まぁ大変ではあるが実際銀鏡には感謝しかないので今日は気合いを入れて頑張りたいところだ。
「じゃあ移動しようか」
「あ、公園でやるわけじゃないのね」
「当たり前でしょ、周りに人目があるんだから。ほら行くよ」
「へいへい」
二人で雑談しつ公園から歩くこと約10分で目的地に着いた。
そこは1年ほど前までは会社だった廃ビルだった。
「着いたよ」
「えぇ…ここ…?」
「うん。ここ」
確かにここなら人目を気にせず特訓できるだろう。それもその筈…
「いやここ出るってめっちゃ噂のビルじゃん…」
ここは曰く付きの建物だったからだ。祐介に聞いた程度でしか知らないがなんでも墓地を埋め立てて建てたらしく潰れる前からそういった物が出てたらしい。
怪我をする社員が多発し挙句の果てに社長が急死した事で倒産したのだ。ニュースでも特集された事もあり、この街に住んでる人はまず近付かない場所だ。
「いやいや、ここは流石にやめとこうぜ。なんかここ出るらしいし」
「あぁそれなら大丈夫。昨日私が追い払っといたから」
自分も半分は妖とはいえ曰く付きの建物に顔を引き攣らせていると横にいた銀鏡が爆弾発言をした。なんて?
「元々いつか追い払おうとは思ってたのよ。ただ誰も寄り付かなくなって逆に被害が出なくなってたから後回しにしてたんだけど特訓場所にちょうど良かったからね」
「えぇ…ちなみにこの建物ってどのくらい妖がいたんだ?」
「うーんただの悪霊とかも含めてざっと50はいたんじゃないかな?」
「50!?」
それを1人で追っ払ったって。見た目によらず武闘派なのだろうか…
「まぁ、ほとんどはわりと聞き分けが良いのばかりだったから説得したらすぐに退いてくれたんだけどね」
「いや、にしてもだろ」
まぁそんな事は別にどうでもいいでしょと言いつつ銀鏡はつかつかと廃ビルに入っていく。
よくよく考えたらこれって不法侵入じゃ…?
妖とは別の不安が頭を過ぎるがそんな事はお構いなく銀鏡は先を進んでいくので仕方なく追いかけて廃ビルに入っていく。
建物の中には撤去されずに残ったままのロッカーやデスクが散乱しており薄暗さも相まって不気味だと感想を抱いた。
階段を上がっていくこと最上階の6階に着いた。そこは広々とした空間があり、元々はパーテーションで仕切られていたオフィスだったのか隅の方にデスクやパーテーションが乱雑に寄せられている。
「今日はここで特訓していくよ。はい、ちゃっちゃと準備しよっか」
「うっす。んじゃ今日もよろしく」
***
「……」
「……」
廃ビルに入ってからしばらく、昨日と同じように妖力を循環させる練習を行っていた。
霊視鏡越しに妖力の流れを掴みながら妖力を循環させるイメージに集中する。
昨日は1分程度だったが3分近くこれを維持する所までは出来ていたが…
「漏れてる。集中切れてるよ」
「…っ」
中々その3分の壁が越えれずにいた。
途端に妖力が制御を外れ体から漏れていく。なんとか立て直そうとするが、努力虚しくコントロールを失った。
「くっそー、中々上手くできねぇ…」
「昨日よりは2分も長くできるようにはなったんだけどねぇ。多分10分を超えるくらいになったら無意識にコントロールできるようになると思うんだけど」
「うへぇ10分…?できる気がしないんだけど…」
「まぁあくまでそれは無意識下でのコントロールって話だけどね。もうお昼だし一旦休憩しよっか」
やっと休憩か…正直集中力が完全に切れていた所だから助かる。
「じゃあちょっと買い物に行こっか。確か近くにコンビニがあったはずだよ」
「あ、別にわざわざコンビニまで行かなくていいよ。一応銀鏡の分も弁当持ってきてるから」
「え、お弁当?私の分も?」
俺が弁当を用意している事に驚いたのか銀鏡はきょとんとしてこちらを見てくる。そんなに意外だろうか?
「一応教えて貰ってるからその礼って訳じゃないけど作ってきた。好みとかは知らないから嫌いなもの入ってるかもしんないけど…迷惑だった?」
「…ううん、そんなことないよ。じゃあ頂こうかな」
リュックに入れてた保冷バッグから2人分の弁当と水筒を取り出し片方を銀鏡に手渡す。心無しかウキウキした様子でそれを受け取り2人でデスクを一つ挟んで座る。
「うわぁ、意外と普通に美味しそうな弁当だね」
弁当箱を開けた銀鏡はその中身に驚きつつ素直に褒めてきた。
弁当の中には半分がシャケのふりかけのかかった白米が敷き詰められ、おかずにミニハンバーグと卵焼き、アスパラのベーコン巻き、そしてポテサラとトマトがもう半分に敷き詰められた普通の弁当だ。
「まぁ、俺ん家は基本的に俺が料理してるからな。とりあえずよく弁当に入れてるメニューって感じなんだけど、俺ん家男しかいないからついいつもの感覚で作っちゃった。多かったら全然残しても構わないよ」
「ううん、このぐらいなら全然食べれるよ。…それじゃあ、いただきます」
銀鏡はまず最初にミニハンバーグに箸をのばし一口かぶりつく。
「…!美味しい!」
言うやパクパクと他のおかずにも手をつけていく。そのどれもを美味しそうに食べているのを見ると作り手としては嬉しくなってくる。
「口に合って何よりだよ」
「…けどなんか女子としては負けた気がするから複雑ね」
「銀鏡は普段料理しない感じ?」
「そうね。基本的にはうちに居る家政婦が作るし精々バレンタインとかで簡単なお菓子を作る程度ね」
うわ、ナチュラルに家政婦って単語が出てきたぞ。やっぱり銀鏡はお嬢様なのだろうか。
「あ、家政婦って言ってもそんなにたくさんいるわけじゃないよ?」
「そうなのか?てか顔に出てた?」
「うん。バッチリ顔に出てたよ」
「…ちなみに何人くらい?」
「10人くらい」
「いや、めっちゃいるじゃん!」
やっぱりマジのお嬢様じゃないか!普通は家政婦はいないし、それも10人くらいいるとかガチじゃないか。
驚く俺が面白かったのか銀鏡はケラケラ笑ってる。いや、普通驚くじゃん。
「アハハハ、まぁいわゆるお嬢様っていうことなのは否定しないよ。あんまりこういうの言うと嫌味になりそうだから仲の良い子にしか話してないんだけどね」
「まぁ噂にはなってるって事は知ってるけどね」と銀鏡は続けた。
まぁ確かに人によってはトラブルの種になるかもしれないしそれは仕方ないか。
「ん?じゃあなんで俺には言ったんだ?」
ふと疑問に思い尋ねてみる。
一応銀鏡との間にはお互いに妖だという秘密を共有しているしこうやって訓練してもらっている仲ではある。
しかし仲が良いかと聞かれると返答に困るくらいお互い話すようになってまだ時間は経っていない。
銀鏡は自分の事をどう思ってるのだろうか?もしかしてそれなり好感を持たれ──
「それはもちろん──反応が面白そうだったから♪」
──てる訳ではなかった。
「─って俺は玩具か!」
「アハハハ、ゴメンゴメン。そういう反応が面白いからついからかっちゃうんだ」
「あんまり人をからかって遊ぶんじゃありません!俺が恥ずかしくなるんだから!」
「じゃあ早く妖力をコントロールできるようになろっか。そしたらからかうのを少し控えるのも考えなくはないよ」
「や、やってやらぁ!こんなモンすぐできるようになってやる!」
「頑張れ頑張れ〜」
急いで残りの弁当をかき込みちゃっちゃと訓練に戻る。絶対すぐにできるようになってギャフンといわせてやろうじゃないか。
***
「なぁなぁ、おねーさん♪俺たちが良い店しょーかいするからさー。ほんのちょっとだけお茶しよーよー」
「そうそう。俺たちおねーさんとお茶したいだけでやましい気持ちなんてないからさ〜」
国見岳市にあるオフィス街。そこで見るからに女遊びが好きそうなチャラい男3人が1人の女に必死に声をかけていた。
女はスラリとした美女でチャラ男達以外の周囲の男達の目も引く程だ。
男達はしつこく話しかけているが女は大した反応を示さず無視していた。
「なぁなぁ、ずっと無視すんのはひでぇんじねぇのぉ〜?そろそろオンコーな俺らもキレちゃうかもよォー!」
尚も無視され続ける男達は徐々に苛立ちを隠さなくなっていた。
しかしそれでも女は何も答えない。
「おいゴラァ。無視してんじゃねぇつってんだろ?アァ?」
遂に男達の内1人が背後から女に掴みかかり無理やり振り向かせる。
しかし、女はそれでも無言だった。
「ハン!ダンマリかよ?なめやがって…あん?なんだよケースケ?」
「いやアニキ、今気付いたんだけどさ。なんかさっきから周り誰もいなくね?」
「あん?…そういうやいつの間に人通りから離れてたな」
リーダー格のチャラ男が周りを見渡すといつの間に人通りから外れたトンネルに入っており周りには人気がなかった。
「なぁアニキ…ヤるならここがちょうどいいんじゃねぇッスか?こういう場所でってのオレコーフンするんだけど!」
「…いいねぇ、ここなら誰も来なさそうだしなぁ!…おいアンタこっち来い」
男達は下品な笑みを浮かべ女を無理やりトンネルの奥に引きずり込んでいく。
「な、なぁアニキ…や、やっぱもう帰らねぇか?」
リーダー格がこれから4人でするお楽しみに胸を踊らせていると仲間の1人が恐る恐る言った。
「んだよおめぇノリ悪ぃな」
「いやだってなんかこの女変じゃないっすか…!逃げもしないしさっきからちっとも反応しないし…。それになんか嫌な予感するんスよ」
「なんだお前ビビってんのか?チキンかよ!」
手下の言うことを片割れが笑い茶化すがリーダー格も確かに違和感を感じてはいる。
正直この女からはある種の地雷を感じてはいる。
「はん!ンなもん気の所為だよ。とっととヤっちまうぞ」
だがそんな事はどうでもいい。
こんな上玉をヤれる機会を逃すものか。
「オラ、こっち来い!」
リーダー格は乱暴に女の腕を引っ張ってトンネルの奥へと進んでいく。
それに手下の1人は着いていき、一瞬躊躇するももう1人も2人を追いかけて奥へと進む。
数秒後トンネルに悲鳴が響いた。
特訓編って短過ぎるとその子の努力が見えなくて安っぽくなりそうだけど長過ぎても話進まな過ぎるからどのくらいの長さにしようかが最近の悩みです。
これどないしよ…?(ソシャゲに現実逃避)