とある教室にて…
「なぁ…恋ってなんだと思う?」
ベキャッ!!
俺の何気ない一言を発言した瞬間、今俺の目の前で勉強をしている、長く黒髪の平成の大和撫子といっても遜色ない幼馴染の握るシャープペンシルが折れた…
…手は大丈夫だろうか?とりあえず俺の机の中に、絆創膏がないか確かめてみる。確か前にこいつに貰った可愛らしい絵がプリントされたやつを貰ってた記憶がある。
「……あらっ?軟弱なペンだわ。買ったところに文句言わなくちゃ返品出来るかしら?それでなんだったかしら?恋?貴方が?誰か気になる人とか出来た?とりあえずその子の名前と住所聞いてもいいかしら?」
「とりあえず返品はしてやるなお店の人が可哀想だし。気になる人とかはいないぞ?というかいたとしても住所とか聞いてどうするのさ?」
絆創膏は見つからなかったけど、とりあえず怪我してないかだけは見ておこうかと、彼女が握ったペンを回収しながら掌を見つめる…どうやら怪我はしていないようだから一安心…ついでに、こいつの手をふにふにと人差し指で突いてみる。毎回思うけど女の子の手の感触は不思議だよね。きめ細かいというか吸い付くような、なんなんだろね?
ふと彼女の表情をみる。たまに彼女が見せる笑っているのに目が笑っていないというなんとも器用な表情が、だんだんと普段の表情へと戻っていった。大体異性の話をすると、彼女はこの器用な表情をしたりする。俺としては見てて飽きないし、むしろすごい特技だと感心する所もあるから面白いのだが、前に一度隣の席の山田くんから「なんとかしてください」となぜか涙まじりに言われたので、それからはこの表情をみたらすぐに元に戻してあげることにしている。
まぁ彼女、頭を撫でてあげたりすればすぐに治るので対処は楽だ。
「…こほんっ…どうにもしないわよ。ただ貴方の言葉からありえない…いえ…信じられない…いえ…天変地異…じゃなかった摩訶不思議な単語が聞こえたから質問しただけよ。さぁ続きをどうぞ。」
「なんかお前から小馬鹿にされたこと言われてる気がするけど…まぁいいか。いやさこの間、隣の席の山田くんにこれ読んでみてと勧められた小説があったんだけどさ。ざっくり言えば恋愛小説だったわけよ。女の子が幼馴染の男の子をどうにか振り向いて貰おうと頑張る話で最後にはハッピーエンドになるで終わるって内容。」
「へぇ…とりあえず今度山田くんには何か御礼をしないといけないわね…ジュースとお菓子の詰め合わせでもいいかしら?それで?」
「今のどこに御礼するところが?ジュースとかもいいと思うけどあいつ最近甘いもの苦手になってきてるから濃いめのブラック缶コーヒー詰め合わせでもいんじゃないか?…あぁそれでふと思うのがこの本の中にちょこちょこ『恋の駆け引き』って出るんだけどさ…正直まどろっこしくない?『好き』なら好きって言えばいいじゃん?小細工するから男の子にも気づいてもらえないし、他の女の子が寄ってきてヤキモキするわけじゃん?読んでくうちにいやいやいやなんでそんな面倒くさい行動とるの?呆れてきてさハッピーエンドにはなったけどなんだかなーって感じで、そこで思ったのがそもそも『恋』ってなんだろ?と思ってさ」
あれっ?なんか話すうちに段々と、俺に向ける幼馴染の目が変わってきてる気がする?
「ふーん…なるほどね……まぁ小説なんだから話を広げていくためにはそういうハプニングとかないと本としては成り立たないからそれも踏まえて読むことを楽しめばいんじゃない?…と言ってしまえば身も蓋も無いからそれは置いといて、その本の文章の中に男の子性格として『超鈍感』とか『頭の中に虫が湧いてる』とか『不感症』とか書かれてないかしら?そう言った相手に気づいてもらうにはよほど努力が必要だと思うけど?」
「『鈍感』とは書いてあったかな。それより頭の中に虫が湧くってひどくないか?…うーん…というか主人公もその性格分かってるなら遠回しなことして気づくはずないじゃん?この男の子自体が恋愛ってよく分かってないみたいだし…俺も恋愛ってよくわかんねーけどそもそも付き合ってから何すんの?」
「そうね…買い物を一緒にしたり、一緒にテレビ見たり朝昼晩と食事とったり…」
「うーん…他は?」
「二人で歩くときは腕を絡めたり…」
「他は?」
「一緒に寝たり、一緒にお風呂はいったり」
「そいえば最近思うけど、お風呂に入るのはいんだけど水着つけるならそろそろ別々に入る方が良くない?水着だと体洗うの面倒くさいんですけど…」
「却下に決まってるじゃない?私は裸でもいんだけど貴方が嫌がるから譲歩してるのよ?」
「うーん…裸は流石に思春期迎えた高校生には不健全じゃない?小説に出てる他の登場人物もいってたよ?……というかさ話戻るけどこれって『幼馴染』なら当たり前にしてる事なんじゃない?付き合う意味あるの?」
「…………多分…おそらく…一般家庭からしたら当たり前じゃない行動な気もするかなー」
どうしたんだろ?俺の質問に急に焦るように目を泳がせながら小声で喋り出す幼馴染……あっ元に戻った…
「ところでこれだけは貴方に言っておきたいんだけど…私、貴方のことが好きよ。」
「うんありがとう。俺もお前の事が好きだよ。」
「それって家族としてよね?」
「???…あぁ幼馴染だから変な感じするけど家族としてだね。」
「「……………」」
ガラガラガラー
「おーい加藤ーーちょっといいかー?」
「あっごめん先生に呼ばれたからいってくるは。はーい!!」
□□□
「……はぁー…あの男…いい加減どうしてくれようか…」
確かに私も、願望の赴くままに『幼馴染だから』という項目にいれて、やりたい放題したのは今でも反省してるけど…ここまで『鈍感』になっていくものなのかしら?…私がさっき言った『頭の中に虫が湧いてる』『不感症』まさに先程まで目の前にいた幼馴染にこそ当てはめたい言葉でなんですけど
「はあー…」
溜息をつけば幸せが逃げるとはいっても、溜息を吐いても仕方ないと思う。
さっき彼の座っている席の左の席に座っている山田くんがゆっくりと立ち上がったかとおもうと、彼は溜息を一つ吐き、何も言わずに首を横に軽く振りながらそっと私の机に飴を一つ置いて教室を出て行った…
私、珈琲ブラックの飴よりも甘い苺味とかの飴の方が好きなんだけど…
でもせっかく頂いた飴だもの無碍には出来ないわね…袋を開け飴玉を口に放り込む……やっぱり苦手わね…
とりあえず山田くんにはブラック珈琲の缶の詰め合わせを二箱くらい送ってあげることを決め、私は苦い飴玉を口の中で転がしながら、次はどうやって彼に『私の好意』を分からせて行こうかと、思いを巡らせながら「ふぅー」と溜息をまた一つこぼした…